悪役令嬢の私は死にました

つくも茄子

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100年後

44.ゴールド枢機卿視点3

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 今日も話し合いは進展しなかったようだ。

「何時になったら決まるの?」

「長期戦になるかもしれません」

 ブロンズの言葉に「げぇ」と洩らした僕は悪くないだろう。
 本当に早く決まって欲しい。
 そうしないと方向性が定まらない。長引けば長引くほど面倒なんだよね。それが解らない筈もないのに。
 まぁ、頭に血が上っている枢機卿団を相手にしてるんだ。妥協すればその末路がより悲惨な結果になる事を王国側は理解しているようだ。


 これ以上は無駄と判断したモンティーヌ聖王国側がロベール王国の一部解体を妥協案として提示したらしいが、それが王国側には受け入れ難い内容だった。
 枢機卿団は聖王国の案に賛成したため、王国側の反対意見は聞き入れられなかった。
 こうして、明日の昼過ぎにロベール王国は解体する事が決定した。解体と言っても国の形を少し変えるだけだ。王族を処刑する訳でもない。ある意味で平和的な解決と言えるかもしれない。


「この提案したの誰だろ?」

「大聖女様では?」

「え~~~っ! フランならもっと過激にやるよ!王族全員処刑とか言い出すんじゃない?」

「まさか……」

「……だよね?」

「はい」

 うん。フランの事を知っていれば彼女が結構過激な性格なのは理解できるはずだ。
 娘を愛する聖王国の王夫妻だってもう少し罰則のきつい物にするだろうしね。フランの怒り具合を見て逆に冷静になった可能性もあるだろうけど……。

「もしかするとイリスが関係しているのかな?」

「イリス王女殿下がですか?」

「そ!フランもイリスには甘いからね。あの娘の『お願い』なら聞く可能性はある!」

「なるほど」

 イリスに頼まれたら大抵の事を聞いてしまうフランの事だ。十分にありえる。
 一番キレているであろう聖王国からの妥協案。だからこそ枢機卿団も折れたのだろう。そうでなければもっと揉めていた筈だ。


「平和的解決だね」

 僕の言葉にブロンズも頷き返した。

 実際のところ、一滴も血が流れない解決法がコレだ。
 枢機卿団の面子もコレでなんとかなるだろうし、王国側だって王族を死刑にせずにすむ。憎んでいる訳じゃないからね。処刑する側だって目覚めが悪い。場合によっては枢機卿団に対する反対勢力が出てくる可能性を考えると穏便にするのが一番だ。

 国王夫妻は兎も角、肝心の王太子が納得しているかは別として――

 あの王太子は絶対に理解してないよ。



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