18 / 82
本編
18.眠り姫3
しおりを挟む攻略対象の一人、ウルフ・グールモンが私の護衛に選ばれた時は強制力という言葉が脳裏を横切りました。
だってそうでしょう?
公爵家に仕える護衛の家柄は何も彼らだけではありません。
他にも沢山いるというのに何故か狙ったかのように私と同年代が彼だけだったのです。
しかも学園入学後の僅か一週間でヒロインに篭絡されているではありませんか!
この強制力に私が恐れおののいても仕方ありませんでした。
病を理由に公爵領に戻ったのはそういった強制力に振り回されないためのもの。王都にいれば何らかの理由付けをされかねないと判断したのです。
そしてそれは正しかった。
「……虐めですか。どうして公爵領にいる私が直接手を出せるというのでしょう」
死んでいる間の詳細を聞いて思った事がそれでした。
「まったくだ。フランソワーズの言った通り、王都に残らずにいたのは正解だ。あの愚か者共のことだ。王都に居たままなら屋敷に乗り込んできたことだろう」
本当です。
自分達の立場を理解できていない振る舞いに呆れました。
「死を装う計画を聞いた時は反対したが、今となってはそれが一番いい方法だったと分かる。フランソワーズが生きていれば王家に付きまとわれていただろうからな」
「はい」
後腐れなく王家から逃げるには「フランソワーズ・ド・モンティーヌ公爵令嬢の死」が一番だと最終的に家族は納得してくださいました。あれほど必死に頑張ったプレゼンは後にも先にもあれが最初で最後でしょう。私としては二度とやりたくありません。
ヒロインと攻略対象者達、そして彼らの味方をした子弟達の末路は悲惨なものでした。もっとも同情はしません。だって、私は自分の身が一番ですから。
「神殿に話を通したお陰だ」
「神殿……ですか?」
何故、そこに神殿が出てくるのでしょう。
関係ないのでは?
「ああ、帝国に居る神官に頼んで公爵領に結界を張って貰った」
「け、結界ですか?」
「そうだ。かなり掛かったが王家を始めとする厄介な連中が無断で来ないとも限らないからな」
怖い!
幾ら掛かったのかしら?
「お兄様、それは誰も入れないようにしたのですか?」
「いや、私達公爵家の許可を得ていない者に限定されている」
「そうなりますと水源もですか?」
「当然だ。公爵領からの水源は元々公爵領のもの。それを善意で格安で売っていただけの話。いずれ王妃を輩出家だからと貴族供は当然に思っていたようだが、そんな訳がない」
お兄様、もしかして……いえ、もしかしなくとも怒ってます?
アルカイックスマイルのままですが、今回の件に物凄い怒りのオーラが見えます。
ま、まあ、全ては王家の自業自得と諦めて貰いましょう。水不足が起ころうともそれは私のあずからい知らぬ事。流石に大地が干上がる事はないでしょうから、どうにかできるでしょう。
この時、私は知りませんでした。
金に物をいわせたところで神殿は個人の頼みを聞くことはないと。
モンティーヌ公爵家になされた結界は異例中の異例。
『夢見の聖女』を守るための処置であった。
神官たちの間で、私を『夢見の聖女』だと囁かれていたのを知るのはもう少し先のこと。
360
お気に入りに追加
4,019
あなたにおすすめの小説
実は私が国を守っていたと知ってましたか? 知らない? それなら終わりです
サイコちゃん
恋愛
ノアは平民のため、地位の高い聖女候補達にいじめられていた。しかしノアは自分自身が聖女であることをすでに知っており、この国の運命は彼女の手に握られていた。ある時、ノアは聖女候補達が王子と関係を持っている場面を見てしまい、悲惨な暴行を受けそうになる。しかもその場にいた王子は見て見ぬ振りをした。その瞬間、ノアは国を捨てる決断をする――
結婚するので姉様は出ていってもらえますか?
基本二度寝
恋愛
聖女の誕生に国全体が沸き立った。
気を良くした国王は貴族に前祝いと様々な物を与えた。
そして底辺貴族の我が男爵家にも贈り物を下さった。
家族で仲良く住むようにと賜ったのは古い神殿を改装した石造りの屋敷は小さな城のようでもあった。
そして妹の婚約まで決まった。
特別仲が悪いと思っていなかった妹から向けられた言葉は。
※番外編追加するかもしれません。しないかもしれません。
※えろが追加される場合はr−18に変更します。
【7話完結】婚約破棄?妹の方が優秀?あぁそうですか・・・。じゃあ、もう教えなくていいですよね?
西東友一
恋愛
昔、昔。氷河期の頃、人々が魔法を使えた時のお話。魔法教師をしていた私はファンゼル王子と婚約していたのだけれど、妹の方が優秀だからそちらと結婚したいということ。妹もそう思っているみたいだし、もう教えなくてもいいよね?
7話完結のショートストーリー。
1日1話。1週間で完結する予定です。
冤罪をかけられた上に婚約破棄されたので、こんな国出て行ってやります
真理亜
恋愛
「そうですか。では出て行きます」
婚約者である王太子のイーサンから謝罪を要求され、従わないなら国外追放だと脅された公爵令嬢のアイリスは、平然とこう言い放った。
そもそもが冤罪を着せられた上、婚約破棄までされた相手に敬意を表す必要など無いし、そんな王太子が治める国に未練などなかったからだ。
脅しが空振りに終わったイーサンは狼狽えるが、最早後の祭りだった。なんと娘可愛さに公爵自身もまた爵位を返上して国を出ると言い出したのだ。
王国のTOPに位置する公爵家が無くなるなどあってはならないことだ。イーサンは慌てて引き止めるがもう遅かった。
【完結】聖女を害した公爵令嬢の私は国外追放をされ宿屋で住み込み女中をしております。え、偽聖女だった? ごめんなさい知りません。
藍生蕗
恋愛
かれこれ五年ほど前、公爵令嬢だった私───オリランダは、王太子の婚約者と実家の娘の立場の両方を聖女であるメイルティン様に奪われた事を許せずに、彼女を害してしまいました。しかしそれが王太子と実家から不興を買い、私は国外追放をされてしまいます。
そうして私は自らの罪と向き合い、平民となり宿屋で住み込み女中として過ごしていたのですが……
偽聖女だった? 更にどうして偽聖女の償いを今更私がしなければならないのでしょうか? とりあえず今幸せなので帰って下さい。
※ 設定は甘めです
※ 他のサイトにも投稿しています
【完結】わたしは大事な人の側に行きます〜この国が不幸になりますように〜
彩華(あやはな)
恋愛
一つの密約を交わし聖女になったわたし。
わたしは婚約者である王太子殿下に婚約破棄された。
王太子はわたしの大事な人をー。
わたしは、大事な人の側にいきます。
そして、この国不幸になる事を祈ります。
*わたし、王太子殿下、ある方の視点になっています。敢えて表記しておりません。
*ダークな内容になっておりますので、ご注意ください。
ハピエンではありません。ですが、救済はいれました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる