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本編

18.眠り姫3

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 攻略対象の一人、ウルフ・グールモンが私の護衛に選ばれた時はという言葉が脳裏を横切りました。
 だってそうでしょう?
 公爵家に仕える護衛の家柄は何も彼らだけではありません。
 他にも沢山いるというのに何故か狙ったかのようにだったのです。

 しかも学園入学後の僅か一週間でヒロインに篭絡されているではありませんか!

 この強制力に私が恐れおののいても仕方ありませんでした。

 病を理由に公爵領に戻ったのはそういった強制力に振り回されないためのもの。王都にいれば何らかの理由付けをされかねないと判断したのです。

 そしてそれは正しかった。




 
 
「……虐めですか。どうして公爵領にいる私が直接手を出せるというのでしょう」

 死んでいる間の詳細を聞いて思った事がそれでした。

「まったくだ。フランソワーズの言った通り、王都に残らずにいたのは正解だ。あの愚か者共のことだ。王都に居たままなら屋敷に乗り込んできたことだろう」

 本当です。
 自分達の立場を理解できていない振る舞いに呆れました。

「死を装う計画を聞いた時は反対したが、今となってはそれが一番いい方法だったと分かる。フランソワーズが生きていれば王家に付きまとわれていただろうからな」

「はい」

 後腐れなく王家から逃げるには「フランソワーズ・ド・モンティーヌ公爵令嬢の死」が一番だと最終的に家族は納得してくださいました。あれほど必死に頑張ったプレゼンは後にも先にもあれが最初で最後でしょう。私としては二度とやりたくありません。

 ヒロインと攻略対象者達、そして彼らの味方をした子弟達の末路は悲惨なものでした。もっとも同情はしません。だって、私は自分の身が一番ですから。


「神殿に話を通したお陰だ」

「神殿……ですか?」

 何故、そこに神殿が出てくるのでしょう。
 関係ないのでは?

「ああ、帝国に居る神官に頼んで公爵領に結界を張って貰った」

「け、結界ですか?」

「そうだ。かなり掛かったが王家を始めとする厄介な連中が無断で来ないとも限らないからな」

 怖い!
 幾ら掛かったのかしら?

「お兄様、それは誰も入れないようにしたのですか?」

「いや、私達公爵家の許可を得ていない者に限定されている」

「そうなりますと水源もですか?」

「当然だ。公爵領からの水源は元々公爵領のもの。それを善意で格安で売っていただけの話。いずれ王妃を輩出家だからと貴族供は当然に思っていたようだが、そんな訳がない」

 お兄様、もしかして……いえ、もしかしなくとも怒ってます?
 アルカイックスマイルのままですが、今回の件に物凄い怒りのオーラが見えます。
 ま、まあ、全ては王家の自業自得と諦めて貰いましょう。水不足が起ころうともそれは私のあずからい知らぬ事。流石に大地が干上がる事はないでしょうから、どうにかできるでしょう。


 この時、私は知りませんでした。
 金に物をいわせたところで神殿は個人の頼みを聞くことはないと。
 モンティーヌ公爵家になされた結界は異例中の異例。

『夢見の聖女』を守るための処置であった。

 神官たちの間で、私を『夢見の聖女』だと囁かれていたのを知るのはもう少し先のこと。


 

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