16 / 82
本編
16.眠り姫1
しおりを挟む
私が長い眠りから覚めた先には両親と兄がいました。
「「「おはよう、私たちの可愛いお姫様」」」
三人の喜ぶ姿、それはいいのですが顔…近いです。
「うーんー……、体が痛い。お兄様、私が死んで何日くらい経ったの?」
「そうだな。ほぼ一ヶ月くらいだな」
「そんなに……」
「仕方ない。それくらいでなければ怪しむ者も出てくる」
「私の埋葬は終わったのですよね?」
「それでも用心に越したことは無い」
「あらあら。お手間を取らせて申し訳ありませんわ」
「かまわん。元々のそういう予定だったろう?」
「それでは王家とは縁が切れたのですね」
「もちろんだ」
兄の肯定に心の底からホッとしました。
王太子殿下が廃嫡され男爵令嬢と婚姻した話を聞き、少し意外に思いながらも納得する事ができました。
「キュリー男爵領から生涯出る事は叶わない。安心するといい」
「はい」
「生き返ったばかりだ。無理はするな」
そう言ってお兄様は部屋を出て行きました。
仮死状態とはいえ一度死んだのだと言われても実感がわかず、私はベッドの上で窓の外を眺めていました。
外には一面の花畑が広がります。
その景色に見覚えがあるような気がして記憶を探ると、そこはお母様とお父様に連れて来られた事のある場所でした。まだ幼かった頃、お母様に手を引かれてこの花畑を見たことがありました。私達を見て微笑んでいたのは誰だったのか思い出せませんが。
ただこの場所が王国ではなく、母の祖母の国だということが重要でした。
これでやっと、私は本当の意味で自由になれたのです!
苦節十年。
物語は無事に終了したようですし、私はやっと自分の人生を歩み始められるというもの。
そう、実を言うと私には前世の記憶があるのです。
気が付いたのは、父方の祖母が死んだ時のこと。私はこの祖母が大好きでずっと棺に縋り付いて泣いていました。
「あれ?私、悪役令嬢だ」
思わず口にだしてしまいました。
「フランソワーズ様、おばあ様とのお別れがそんなに……」
「あれほど懐いていらっしゃったのだ無理もない」
周囲は私のおかしな言葉をスルーしてました。恐らく、大好きな祖母が亡くなって錯乱状態なのだろうとでも思われていたんでしょうね。気が付けば愛する祖母の葬儀は終わっていました。ただ、いきなり記憶が蘇った事と祖母の死のショックで涙が暫く止まらなかったせいか熱を出して寝込んでしまいましたけど。
そして目が覚めると全てを思い出していました。
私は『乙女ゲーム』という恋愛シミュレーションゲームの世界にいる事に。
しかもヒロインである男爵令嬢エバ・キュリーの邪魔をするライバルキャラとして。
ちなみに攻略対象の一人でもある王太子の婚約者でもありました。
もっとも婚約破棄後に殺される運命のライバルキャラです。
最悪です。
ヒロインがどの攻略対象を選んでも、私は殺される運命みたいです。
何故なら悪役令嬢役だから。
こんな理不尽あります!?
ヒロインが選ぶ相手によって殺されるパターンが違うなんて!!
ある意味親切設計と言えなくもないかもしれませんが、余計なお世話ですよ!! 私は死ぬつもりなど毛頭ございません。
そもそも私が生きる為にはどうすればいいのか考えた結果、結論は一つ。
王太子殿下との婚約を破棄してしまえばよいのです!
「「「おはよう、私たちの可愛いお姫様」」」
三人の喜ぶ姿、それはいいのですが顔…近いです。
「うーんー……、体が痛い。お兄様、私が死んで何日くらい経ったの?」
「そうだな。ほぼ一ヶ月くらいだな」
「そんなに……」
「仕方ない。それくらいでなければ怪しむ者も出てくる」
「私の埋葬は終わったのですよね?」
「それでも用心に越したことは無い」
「あらあら。お手間を取らせて申し訳ありませんわ」
「かまわん。元々のそういう予定だったろう?」
「それでは王家とは縁が切れたのですね」
「もちろんだ」
兄の肯定に心の底からホッとしました。
王太子殿下が廃嫡され男爵令嬢と婚姻した話を聞き、少し意外に思いながらも納得する事ができました。
「キュリー男爵領から生涯出る事は叶わない。安心するといい」
「はい」
「生き返ったばかりだ。無理はするな」
そう言ってお兄様は部屋を出て行きました。
仮死状態とはいえ一度死んだのだと言われても実感がわかず、私はベッドの上で窓の外を眺めていました。
外には一面の花畑が広がります。
その景色に見覚えがあるような気がして記憶を探ると、そこはお母様とお父様に連れて来られた事のある場所でした。まだ幼かった頃、お母様に手を引かれてこの花畑を見たことがありました。私達を見て微笑んでいたのは誰だったのか思い出せませんが。
ただこの場所が王国ではなく、母の祖母の国だということが重要でした。
これでやっと、私は本当の意味で自由になれたのです!
苦節十年。
物語は無事に終了したようですし、私はやっと自分の人生を歩み始められるというもの。
そう、実を言うと私には前世の記憶があるのです。
気が付いたのは、父方の祖母が死んだ時のこと。私はこの祖母が大好きでずっと棺に縋り付いて泣いていました。
「あれ?私、悪役令嬢だ」
思わず口にだしてしまいました。
「フランソワーズ様、おばあ様とのお別れがそんなに……」
「あれほど懐いていらっしゃったのだ無理もない」
周囲は私のおかしな言葉をスルーしてました。恐らく、大好きな祖母が亡くなって錯乱状態なのだろうとでも思われていたんでしょうね。気が付けば愛する祖母の葬儀は終わっていました。ただ、いきなり記憶が蘇った事と祖母の死のショックで涙が暫く止まらなかったせいか熱を出して寝込んでしまいましたけど。
そして目が覚めると全てを思い出していました。
私は『乙女ゲーム』という恋愛シミュレーションゲームの世界にいる事に。
しかもヒロインである男爵令嬢エバ・キュリーの邪魔をするライバルキャラとして。
ちなみに攻略対象の一人でもある王太子の婚約者でもありました。
もっとも婚約破棄後に殺される運命のライバルキャラです。
最悪です。
ヒロインがどの攻略対象を選んでも、私は殺される運命みたいです。
何故なら悪役令嬢役だから。
こんな理不尽あります!?
ヒロインが選ぶ相手によって殺されるパターンが違うなんて!!
ある意味親切設計と言えなくもないかもしれませんが、余計なお世話ですよ!! 私は死ぬつもりなど毛頭ございません。
そもそも私が生きる為にはどうすればいいのか考えた結果、結論は一つ。
王太子殿下との婚約を破棄してしまえばよいのです!
399
お気に入りに追加
4,025
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
【12話完結】私はイジメられた側ですが。国のため、貴方のために王妃修行に努めていたら、婚約破棄を告げられ、友人に裏切られました。
西東友一
恋愛
国のため、貴方のため。
私は厳しい王妃修行に努めてまいりました。
それなのに第一王子である貴方が開いた舞踏会で、「この俺、次期国王である第一王子エドワード・ヴィクトールは伯爵令嬢のメリー・アナラシアと婚約破棄する」
と宣言されるなんて・・・
【完結】残酷な現実はお伽噺ではないのよ
綾雅(要らない悪役令嬢1巻重版)
恋愛
「アンジェリーナ・ナイトレイ。貴様との婚約を破棄し、我が国の聖女ミサキを害した罪で流刑に処す」
物語でよくある婚約破棄は、王族の信頼を揺るがした。婚約は王家と公爵家の契約であり、一方的な破棄はありえない。王子に腰を抱かれた聖女は、物語ではない現実の残酷さを突きつけられるのであった。
★公爵令嬢目線 ★聖女目線、両方を掲載します。
【同時掲載】アルファポリス、カクヨム、エブリスタ、小説家になろう
2023/01/11……カクヨム、恋愛週間 21位
2023/01/10……小説家になろう、日間恋愛異世界転生/転移 1位
2023/01/09……アルファポリス、HOT女性向け 28位
2023/01/09……エブリスタ、恋愛トレンド 28位
2023/01/08……完結
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
実は私が国を守っていたと知ってましたか? 知らない? それなら終わりです
サイコちゃん
恋愛
ノアは平民のため、地位の高い聖女候補達にいじめられていた。しかしノアは自分自身が聖女であることをすでに知っており、この国の運命は彼女の手に握られていた。ある時、ノアは聖女候補達が王子と関係を持っている場面を見てしまい、悲惨な暴行を受けそうになる。しかもその場にいた王子は見て見ぬ振りをした。その瞬間、ノアは国を捨てる決断をする――
【完結】「神様、辞めました〜竜神の愛し子に冤罪を着せ投獄するような人間なんてもう知らない」
まほりろ
恋愛
王太子アビー・シュトースと聖女カーラ・ノルデン公爵令嬢の結婚式当日。二人が教会での誓いの儀式を終え、教会の扉を開け外に一歩踏み出したとき、国中の壁や窓に不吉な文字が浮かび上がった。
【本日付けで神を辞めることにした】
フラワーシャワーを巻き王太子と王太子妃の結婚を祝おうとしていた参列者は、突然現れた文字に驚きを隠せず固まっている。
国境に壁を築きモンスターの侵入を防ぎ、結界を張り国内にいるモンスターは弱体化させ、雨を降らせ大地を潤し、土地を豊かにし豊作をもたらし、人間の体を強化し、生活が便利になるように魔法の力を授けた、竜神ウィルペアトが消えた。
人々は三カ月前に冤罪を着せ、|罵詈雑言《ばりぞうごん》を浴びせ、石を投げつけ投獄した少女が、本物の【竜の愛し子】だと分かり|戦慄《せんりつ》した。
「Copyright(C)2021-九頭竜坂まほろん」
アルファポリスに先行投稿しています。
表紙素材はあぐりりんこ様よりお借りしております。
2021/12/13、HOTランキング3位、12/14総合ランキング4位、恋愛3位に入りました! ありがとうございます!
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
【完結】「俺は2番目に好きな女と結婚するんだ」と言っていた婚約者と婚約破棄したいだけだったのに、なぜか聖女になってしまいました
As-me.com
恋愛
完結しました。
とある日、偶然にも婚約者が「俺は2番目に好きな女と結婚するんだ」とお友達に楽しそうに宣言するのを聞いてしまいました。
例え2番目でもちゃんと愛しているから結婚にはなんの問題も無いとおっしゃっていますが……そんな婚約者様がとんでもない問題児だと発覚します。
なんてことでしょう。愛も無い、信頼も無い、領地にメリットも無い。そんな無い無い尽くしの婚約者様と結婚しても幸せになれる気がしません。
ねぇ、婚約者様。私はあなたと結婚なんてしたくありませんわ。絶対婚約破棄しますから!
あなたはあなたで、1番好きな人と結婚してくださいな。
※この作品は『「俺は2番目に好きな女と結婚するんだ」と婚約者が言っていたので、1番好きな女性と結婚させてあげることにしました。 』を書き直しています。内容はほぼ一緒ですが、細かい設定や登場人物の性格などを書き直す予定です。
【完結】「私は善意に殺された」
まほりろ
恋愛
筆頭公爵家の娘である私が、母親は身分が低い王太子殿下の後ろ盾になるため、彼の婚約者になるのは自然な流れだった。
誰もが私が王太子妃になると信じて疑わなかった。
私も殿下と婚約してから一度も、彼との結婚を疑ったことはない。
だが殿下が病に倒れ、その治療のため異世界から聖女が召喚され二人が愛し合ったことで……全ての運命が狂い出す。
どなたにも悪意はなかった……私が不運な星の下に生まれた……ただそれだけ。
※無断転載を禁止します。
※朗読動画の無断配信も禁止します。
※他サイトにも投稿中。
※表紙素材はあぐりりんこ様よりお借りしております。
「Copyright(C)2022-九頭竜坂まほろん」
※小説家になろうにて2022年11月19日昼、日間異世界恋愛ランキング38位、総合59位まで上がった作品です!
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
愚か者の話をしよう
鈴宮(すずみや)
恋愛
シェイマスは、婚約者であるエーファを心から愛している。けれど、控えめな性格のエーファは、聖女ミランダがシェイマスにちょっかいを掛けても、穏やかに微笑むばかり。
そんな彼女の反応に物足りなさを感じつつも、シェイマスはエーファとの幸せな未来を夢見ていた。
けれどある日、シェイマスは父親である国王から「エーファとの婚約は破棄する」と告げられて――――?
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
結婚するので姉様は出ていってもらえますか?
基本二度寝
恋愛
聖女の誕生に国全体が沸き立った。
気を良くした国王は貴族に前祝いと様々な物を与えた。
そして底辺貴族の我が男爵家にも贈り物を下さった。
家族で仲良く住むようにと賜ったのは古い神殿を改装した石造りの屋敷は小さな城のようでもあった。
そして妹の婚約まで決まった。
特別仲が悪いと思っていなかった妹から向けられた言葉は。
※番外編追加するかもしれません。しないかもしれません。
※えろが追加される場合はr−18に変更します。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる