11 / 82
本編
11.伯爵令嬢視点2
しおりを挟む
エバ・キュリー男爵令嬢。
平民として育った男爵家の庶子。
彼女の母親は随分と美しい女性であったらしく、男爵家でハウスメイドとして働いていた時に見初められた。その後、正妻が亡くなると後妻として迎え入れられたというのだから人の運というのは分からないものだと母たちが囁き合っていたのをよく覚えている。
『そのメイドは上手くやったものですわね』
『まったくだ。歴史は浅いが、男爵家の財力は高位貴族並。後妻とはいえ正妻として迎え入れられたのだ。左団扇で暮らせるだろう』
『あちらには先妻の嫡男がいらっしゃいましたわね』
『ああ。中々優秀だ。父親同様に上手く貴族社会を渡っていくだろう』
『後妻には娘がいるそうですわ』
『男爵との子だろう』
『跡取りの嫡男がよく許しましたわね』
『父親と何らかの取引をしたはずだ。そうでなければ騒ぎになっている』
『ならば爵位を息子さんに?』
『恐らくな。男爵が引退するのは時間の問題だろう』
『そういえば、子爵夫人が話していましたが男爵の娘さんが学園に入学されるようですわ』
『なら間違いない。庶子の娘に箔を付けさせて何処かに嫁がせる気だ』
『まあ!』
『なんにしても雑種が紛れ込んでくるんだ。用心しておいた方がいいな』
『…………ええ』
――――――私はこの時、何とも言えない気持ちになったのを覚えている。
母たちの予想は的中し、彼女は学園にきた。
貴族の学園に入るのに多額の寄付金を積んだのは想像に難くない。
そうでなければ、幾ら「男爵令嬢」になったからと言って学園への入学許可は下りなかったはず。付け焼刃の貴族令嬢が本物と渡り合えるはずもなく、育った環境とそれまでの教育に大きな差がでるのは仕方がなかった。
もっとも、それらを差し引いても彼女の行動は目に余るものがあった。
貴族としてのマナーを一切無視。
『そんなのに意味あるの?』
『肩がこるわ』
『ご飯が美味しく感じられない』
『変な習慣ね。馬鹿みたい』
と文句ばかりで結局、最低限のマナーすら身に付ける事はできなかったようです。
彼女は貴族として生きていく気はないのでしょうか?
社交界はどうする気ですか?
茶会は?夜会は?
後から知ったのですが、キュリー男爵は娘を商家と縁づけようとなさっていたようです。
まぁ、それを聞いて少しは納得しました。
それと同時に接待の時どうするのかと疑問にも思いました。あれでは商人の妻失格でしょう。王太子殿下の件がありますのでその話は有耶無耶で終わったようです。
平民として育った男爵家の庶子。
彼女の母親は随分と美しい女性であったらしく、男爵家でハウスメイドとして働いていた時に見初められた。その後、正妻が亡くなると後妻として迎え入れられたというのだから人の運というのは分からないものだと母たちが囁き合っていたのをよく覚えている。
『そのメイドは上手くやったものですわね』
『まったくだ。歴史は浅いが、男爵家の財力は高位貴族並。後妻とはいえ正妻として迎え入れられたのだ。左団扇で暮らせるだろう』
『あちらには先妻の嫡男がいらっしゃいましたわね』
『ああ。中々優秀だ。父親同様に上手く貴族社会を渡っていくだろう』
『後妻には娘がいるそうですわ』
『男爵との子だろう』
『跡取りの嫡男がよく許しましたわね』
『父親と何らかの取引をしたはずだ。そうでなければ騒ぎになっている』
『ならば爵位を息子さんに?』
『恐らくな。男爵が引退するのは時間の問題だろう』
『そういえば、子爵夫人が話していましたが男爵の娘さんが学園に入学されるようですわ』
『なら間違いない。庶子の娘に箔を付けさせて何処かに嫁がせる気だ』
『まあ!』
『なんにしても雑種が紛れ込んでくるんだ。用心しておいた方がいいな』
『…………ええ』
――――――私はこの時、何とも言えない気持ちになったのを覚えている。
母たちの予想は的中し、彼女は学園にきた。
貴族の学園に入るのに多額の寄付金を積んだのは想像に難くない。
そうでなければ、幾ら「男爵令嬢」になったからと言って学園への入学許可は下りなかったはず。付け焼刃の貴族令嬢が本物と渡り合えるはずもなく、育った環境とそれまでの教育に大きな差がでるのは仕方がなかった。
もっとも、それらを差し引いても彼女の行動は目に余るものがあった。
貴族としてのマナーを一切無視。
『そんなのに意味あるの?』
『肩がこるわ』
『ご飯が美味しく感じられない』
『変な習慣ね。馬鹿みたい』
と文句ばかりで結局、最低限のマナーすら身に付ける事はできなかったようです。
彼女は貴族として生きていく気はないのでしょうか?
社交界はどうする気ですか?
茶会は?夜会は?
後から知ったのですが、キュリー男爵は娘を商家と縁づけようとなさっていたようです。
まぁ、それを聞いて少しは納得しました。
それと同時に接待の時どうするのかと疑問にも思いました。あれでは商人の妻失格でしょう。王太子殿下の件がありますのでその話は有耶無耶で終わったようです。
421
お気に入りに追加
4,025
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
【12話完結】私はイジメられた側ですが。国のため、貴方のために王妃修行に努めていたら、婚約破棄を告げられ、友人に裏切られました。
西東友一
恋愛
国のため、貴方のため。
私は厳しい王妃修行に努めてまいりました。
それなのに第一王子である貴方が開いた舞踏会で、「この俺、次期国王である第一王子エドワード・ヴィクトールは伯爵令嬢のメリー・アナラシアと婚約破棄する」
と宣言されるなんて・・・
【完結】残酷な現実はお伽噺ではないのよ
綾雅(要らない悪役令嬢1巻重版)
恋愛
「アンジェリーナ・ナイトレイ。貴様との婚約を破棄し、我が国の聖女ミサキを害した罪で流刑に処す」
物語でよくある婚約破棄は、王族の信頼を揺るがした。婚約は王家と公爵家の契約であり、一方的な破棄はありえない。王子に腰を抱かれた聖女は、物語ではない現実の残酷さを突きつけられるのであった。
★公爵令嬢目線 ★聖女目線、両方を掲載します。
【同時掲載】アルファポリス、カクヨム、エブリスタ、小説家になろう
2023/01/11……カクヨム、恋愛週間 21位
2023/01/10……小説家になろう、日間恋愛異世界転生/転移 1位
2023/01/09……アルファポリス、HOT女性向け 28位
2023/01/09……エブリスタ、恋愛トレンド 28位
2023/01/08……完結
【完結】「私は善意に殺された」
まほりろ
恋愛
筆頭公爵家の娘である私が、母親は身分が低い王太子殿下の後ろ盾になるため、彼の婚約者になるのは自然な流れだった。
誰もが私が王太子妃になると信じて疑わなかった。
私も殿下と婚約してから一度も、彼との結婚を疑ったことはない。
だが殿下が病に倒れ、その治療のため異世界から聖女が召喚され二人が愛し合ったことで……全ての運命が狂い出す。
どなたにも悪意はなかった……私が不運な星の下に生まれた……ただそれだけ。
※無断転載を禁止します。
※朗読動画の無断配信も禁止します。
※他サイトにも投稿中。
※表紙素材はあぐりりんこ様よりお借りしております。
「Copyright(C)2022-九頭竜坂まほろん」
※小説家になろうにて2022年11月19日昼、日間異世界恋愛ランキング38位、総合59位まで上がった作品です!
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
大好きな第一王子様、私の正体を知りたいですか? 本当に知りたいんですか?
サイコちゃん
恋愛
第一王子クライドは聖女アレクサンドラに婚約破棄を言い渡す。すると彼女はお腹にあなたの子がいると訴えた。しかしクライドは彼女と寝た覚えはない。狂言だと断じて、妹のカサンドラとの婚約を告げた。ショックを受けたアレクサンドラは消えてしまい、そのまま行方知れずとなる。その頃、クライドは我が儘なカサンドラを重たく感じていた。やがて新しい聖女レイラと恋に落ちた彼はカサンドラと別れることにする。その時、カサンドラが言った。「私……あなたに隠していたことがあるの……! 実は私の正体は……――」
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
踏み台(王女)にも事情はある
mios
恋愛
戒律の厳しい修道院に王女が送られた。
聖女ビアンカに魔物をけしかけた罪で投獄され、処刑を免れた結果のことだ。
王女が居なくなって平和になった筈、なのだがそれから何故か原因不明の不調が蔓延し始めて……原因究明の為、王女の元婚約者が調査に乗り出した。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
婚約破棄された私は、処刑台へ送られるそうです
秋月乃衣
恋愛
ある日システィーナは婚約者であるイデオンの王子クロードから、王宮敷地内に存在する聖堂へと呼び出される。
そこで聖女への非道な行いを咎められ、婚約破棄を言い渡された挙句投獄されることとなる。
いわれの無い罪を否定する機会すら与えられず、寒く冷たい牢の中で断頭台に登るその時を待つシスティーナだったが──
他サイト様でも掲載しております。
【完結】「神様、辞めました〜竜神の愛し子に冤罪を着せ投獄するような人間なんてもう知らない」
まほりろ
恋愛
王太子アビー・シュトースと聖女カーラ・ノルデン公爵令嬢の結婚式当日。二人が教会での誓いの儀式を終え、教会の扉を開け外に一歩踏み出したとき、国中の壁や窓に不吉な文字が浮かび上がった。
【本日付けで神を辞めることにした】
フラワーシャワーを巻き王太子と王太子妃の結婚を祝おうとしていた参列者は、突然現れた文字に驚きを隠せず固まっている。
国境に壁を築きモンスターの侵入を防ぎ、結界を張り国内にいるモンスターは弱体化させ、雨を降らせ大地を潤し、土地を豊かにし豊作をもたらし、人間の体を強化し、生活が便利になるように魔法の力を授けた、竜神ウィルペアトが消えた。
人々は三カ月前に冤罪を着せ、|罵詈雑言《ばりぞうごん》を浴びせ、石を投げつけ投獄した少女が、本物の【竜の愛し子】だと分かり|戦慄《せんりつ》した。
「Copyright(C)2021-九頭竜坂まほろん」
アルファポリスに先行投稿しています。
表紙素材はあぐりりんこ様よりお借りしております。
2021/12/13、HOTランキング3位、12/14総合ランキング4位、恋愛3位に入りました! ありがとうございます!
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
実は私が国を守っていたと知ってましたか? 知らない? それなら終わりです
サイコちゃん
恋愛
ノアは平民のため、地位の高い聖女候補達にいじめられていた。しかしノアは自分自身が聖女であることをすでに知っており、この国の運命は彼女の手に握られていた。ある時、ノアは聖女候補達が王子と関係を持っている場面を見てしまい、悲惨な暴行を受けそうになる。しかもその場にいた王子は見て見ぬ振りをした。その瞬間、ノアは国を捨てる決断をする――
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる