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本編
11.伯爵令嬢視点2
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エバ・キュリー男爵令嬢。
平民として育った男爵家の庶子。
彼女の母親は随分と美しい女性であったらしく、男爵家でハウスメイドとして働いていた時に見初められた。その後、正妻が亡くなると後妻として迎え入れられたというのだから人の運というのは分からないものだと母たちが囁き合っていたのをよく覚えている。
『そのメイドは上手くやったものですわね』
『まったくだ。歴史は浅いが、男爵家の財力は高位貴族並。後妻とはいえ正妻として迎え入れられたのだ。左団扇で暮らせるだろう』
『あちらには先妻の嫡男がいらっしゃいましたわね』
『ああ。中々優秀だ。父親同様に上手く貴族社会を渡っていくだろう』
『後妻には娘がいるそうですわ』
『男爵との子だろう』
『跡取りの嫡男がよく許しましたわね』
『父親と何らかの取引をしたはずだ。そうでなければ騒ぎになっている』
『ならば爵位を息子さんに?』
『恐らくな。男爵が引退するのは時間の問題だろう』
『そういえば、子爵夫人が話していましたが男爵の娘さんが学園に入学されるようですわ』
『なら間違いない。庶子の娘に箔を付けさせて何処かに嫁がせる気だ』
『まあ!』
『なんにしても雑種が紛れ込んでくるんだ。用心しておいた方がいいな』
『…………ええ』
――――――私はこの時、何とも言えない気持ちになったのを覚えている。
母たちの予想は的中し、彼女は学園にきた。
貴族の学園に入るのに多額の寄付金を積んだのは想像に難くない。
そうでなければ、幾ら「男爵令嬢」になったからと言って学園への入学許可は下りなかったはず。付け焼刃の貴族令嬢が本物と渡り合えるはずもなく、育った環境とそれまでの教育に大きな差がでるのは仕方がなかった。
もっとも、それらを差し引いても彼女の行動は目に余るものがあった。
貴族としてのマナーを一切無視。
『そんなのに意味あるの?』
『肩がこるわ』
『ご飯が美味しく感じられない』
『変な習慣ね。馬鹿みたい』
と文句ばかりで結局、最低限のマナーすら身に付ける事はできなかったようです。
彼女は貴族として生きていく気はないのでしょうか?
社交界はどうする気ですか?
茶会は?夜会は?
後から知ったのですが、キュリー男爵は娘を商家と縁づけようとなさっていたようです。
まぁ、それを聞いて少しは納得しました。
それと同時に接待の時どうするのかと疑問にも思いました。あれでは商人の妻失格でしょう。王太子殿下の件がありますのでその話は有耶無耶で終わったようです。
平民として育った男爵家の庶子。
彼女の母親は随分と美しい女性であったらしく、男爵家でハウスメイドとして働いていた時に見初められた。その後、正妻が亡くなると後妻として迎え入れられたというのだから人の運というのは分からないものだと母たちが囁き合っていたのをよく覚えている。
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『まあ!』
『なんにしても雑種が紛れ込んでくるんだ。用心しておいた方がいいな』
『…………ええ』
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『そんなのに意味あるの?』
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