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本編
4.国王視点2
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「モンティーヌ公爵!!何故ここに!?」
クロードよ、何故も何も私が呼んだからに決まっておるだろう。ついに思考能力まで低下したのか。
「何故、とはおかしなことを仰います。私達は娘と殿下との婚約白紙の手続きのために登城したのです」
「婚約白紙?手続き?」
「そうです」
「だ、だが……彼女は死んだと……」
「ええ、亡くなってまで殿下の婚約者のままでいさせるなど出来かねます。正式な手続きを踏んで、娘を綺麗なままでいさせたいのです。ええ、何処かの誰かの婚約者という汚点を背負わずに済むように」
「モンティーヌ公爵!私は王太子だ!不敬だぞっ!!」
自分が馬鹿にされた事に気付いたクロードは激昂するが、お前が言える立場かと半ば呆れてしまった。ここは己の不貞を恥じて許しを請う場面だ。それが何故わからない!
案の定というべきか、モンティーヌ公爵はギロリと鋭い目をクロードに向けた。眼光鋭い公爵の目はそれだけでクロードを怯えさせるには十分だった。
まるで蛇に睨まれた蛙だ。
それか肉食獣に捕食されかけている小動物。
いずれにせよ、王太子のする対応ではない。
「不敬?己の立場を弁えた者だけが言えるセリフですな。まるで自分は偉いと勘違いなさっているようだ。ははっ。これは失礼。実際、まだ王太子位にいらっしゃいました。確かにこの国では偉い部類に入るのでしょう。もっとも替えきく存在でもある事をお忘れでいらっしゃる。王位継承権を持っているのは殿下だけではありませんよ?」
「ぐっ…………」
「王太子殿下は偶々、王妃殿下から生まれたというだけの存在。そうでなければ第二王子の殿下が王位継承権第一位にはなれません。なにしろ、第一王子殿下がいらっしゃいますからね」
「兄上は臣下に降られた!!」
「ええ、ですが王位継承権はお持ちです。王族にいつでも復活できます。勿論、王姉である私の妻も王位継承権を持っていますし、私の子供達に当然あります。順位は相当低いですが私にもありますしね」
「わ、私は……嫡出だ」
「はい。ただ嫡出の男子だというだけで選ばれた王太子です」
「ぶれい……もの」
「正当性を謳われるのならもっと大きな声で言うと宜しい」
遂に顔を俯かせたクロードに同情はしない。
公爵にソレを言わせたお前が悪い。血筋を誇るのは悪い事では無い。それは時に武器になる。だが自分よりも血筋の良い相手には通用しない手だ。
そして公爵に言っている事は正しい。
クロードに言いながら私にも言っている。
相変わらず辛辣な男だ。
父王の最初の王妃。
それは姉上の母君だ。
大国の王女殿下で、「賢妃」として名高かった。
今の姉上によく似ている。
黒髪の巻き毛にアメジストの瞳。
もしも、姉上が王子ならば私は今この玉座に座っていなかっただろう。
姉上の母君が亡くなり、次の王妃に選ばれたのは私の母だった。母は偶々王子を産んでいたからこそ幸運にも継室に選ばれた。そうでなければ、伯爵家の側妃が王妃にはなれなかった筈だ。
クロードよ、何故も何も私が呼んだからに決まっておるだろう。ついに思考能力まで低下したのか。
「何故、とはおかしなことを仰います。私達は娘と殿下との婚約白紙の手続きのために登城したのです」
「婚約白紙?手続き?」
「そうです」
「だ、だが……彼女は死んだと……」
「ええ、亡くなってまで殿下の婚約者のままでいさせるなど出来かねます。正式な手続きを踏んで、娘を綺麗なままでいさせたいのです。ええ、何処かの誰かの婚約者という汚点を背負わずに済むように」
「モンティーヌ公爵!私は王太子だ!不敬だぞっ!!」
自分が馬鹿にされた事に気付いたクロードは激昂するが、お前が言える立場かと半ば呆れてしまった。ここは己の不貞を恥じて許しを請う場面だ。それが何故わからない!
案の定というべきか、モンティーヌ公爵はギロリと鋭い目をクロードに向けた。眼光鋭い公爵の目はそれだけでクロードを怯えさせるには十分だった。
まるで蛇に睨まれた蛙だ。
それか肉食獣に捕食されかけている小動物。
いずれにせよ、王太子のする対応ではない。
「不敬?己の立場を弁えた者だけが言えるセリフですな。まるで自分は偉いと勘違いなさっているようだ。ははっ。これは失礼。実際、まだ王太子位にいらっしゃいました。確かにこの国では偉い部類に入るのでしょう。もっとも替えきく存在でもある事をお忘れでいらっしゃる。王位継承権を持っているのは殿下だけではありませんよ?」
「ぐっ…………」
「王太子殿下は偶々、王妃殿下から生まれたというだけの存在。そうでなければ第二王子の殿下が王位継承権第一位にはなれません。なにしろ、第一王子殿下がいらっしゃいますからね」
「兄上は臣下に降られた!!」
「ええ、ですが王位継承権はお持ちです。王族にいつでも復活できます。勿論、王姉である私の妻も王位継承権を持っていますし、私の子供達に当然あります。順位は相当低いですが私にもありますしね」
「わ、私は……嫡出だ」
「はい。ただ嫡出の男子だというだけで選ばれた王太子です」
「ぶれい……もの」
「正当性を謳われるのならもっと大きな声で言うと宜しい」
遂に顔を俯かせたクロードに同情はしない。
公爵にソレを言わせたお前が悪い。血筋を誇るのは悪い事では無い。それは時に武器になる。だが自分よりも血筋の良い相手には通用しない手だ。
そして公爵に言っている事は正しい。
クロードに言いながら私にも言っている。
相変わらず辛辣な男だ。
父王の最初の王妃。
それは姉上の母君だ。
大国の王女殿下で、「賢妃」として名高かった。
今の姉上によく似ている。
黒髪の巻き毛にアメジストの瞳。
もしも、姉上が王子ならば私は今この玉座に座っていなかっただろう。
姉上の母君が亡くなり、次の王妃に選ばれたのは私の母だった。母は偶々王子を産んでいたからこそ幸運にも継室に選ばれた。そうでなければ、伯爵家の側妃が王妃にはなれなかった筈だ。
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