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番外編~イートン校の誇りが守られた日~
40.交換留学4
しおりを挟む「私は薬剤師志望だからこの料理は興味深いわ」
別の観点から興味を示しているのが、クラスを取り仕切る委員長だった。大病院の院長の娘で姉と歳の離れた弟がいる。そのためか面倒見が良くてリーダーシップもあるため、学級委員に推薦された。
「え?委員長、薬剤師志望なの?てっきり医者になるとばかり思ってたよ」
「あーそれはね……そうなると色々面倒だし」
「え?」
「う~ん……私の姉が数年前に結婚して義兄が婿養子にきたんだけど、その後に弟ができたのよね。だから色々と面倒な事になりそうなの。だから医者や看護師じゃなくて薬剤師の道に進もうと思ってるの。まぁ、面倒になるのは数十年先の事かもしれないけど、医者や看護師になるなら家の病院に勤務しろって言われてるのよね」
「大変なんだね」
「うん。まぁね。そういう訳で家族の興味がない、けれど医療関係に進みたいから薬学部を選んだの。ちなみに私は実家を継ぐ気はないわ」
委員長の言葉を聞いて、「あ、これもしかして跡取り問題とかそんな感じなのかも」と思ったが、それを口にする者は誰もいなかった。
「それにね、実際、漢方とかに興味もあるし。ほら、漢方って苦いし不味いのに効き目は抜群じゃない?あれって凄いなと思うのよね。もっとも日本の漢方は日本人が魔改造してるらしいけど」
「ああ、そういえば昔、テレビで見た事があるよ。中国の漢方薬を昔の日本人が改良していった結果だって。元々の漢方は『毒』なんだっけ?」
「よく知ってるわね。毒を以て毒を制すっていう意味みたいだけど、日本人の舌には合わなかったらしくて改良したって話もあるわ」
「へぇ……」
「だから、ロイド君のこの料理も改良の余地はあるってわけ。実に興味深いでしょう」
嬉々と話す委員長は医療の観点から参加していた。
この数年後、薬剤師の免許を取得し、漢方の勉強を始めて、更にその知識を深めていく事になるとはこの時はまだ誰も知る由もなかった。
後世に「伝説の博士」と呼ばれる日本人女性。
一口飲むだけで滋養強壮できる薬や疲労回復効果抜群の薬を次々と発明していくのだが、その開発方法の原点がこの料理教室であった事を知る者は少ない。
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