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本編
31.家族
しおりを挟む「そうそう、魚は下処理を疎かにすると大変な事になっちゃうんだ。臭みも取れないしね」
≪そうだったのですね≫
「え?今まで下処理はしてなかったの?」
≪いいえ。一応はしていたのですが、マスミ様のように丁寧にした処理をしていたかと言いますと『違う』と言わざる負えません。わたくしは家政婦ロボット失格でございます≫
「そんなことないよ。これから覚えていけばすむ事だし。そんなに落ち込まないで」
≪マスミ様、これからも御指導よろしくお願いいたします≫
「うん、こちらこそよろしくね。でも本当に良いの?僕、どちらかと言うと素人だよ?プロの指導を受けた方が良いんじゃないかな?」
≪いいえ。わたくしはマスミ様にお願いしたいのです。研究者達もマスミ様なら大丈夫だと仰っておりました≫
「そっか。責任重大だな。本当に一般的な事しか教えられないからね」
≪そのような事はございません!この飾り切りなど見事としか言いようがございません。先日のカレーもそうです。ニンジンが星型やハート形にされるなど……素晴らしいです!!≫
「いや~~。そこまで褒められると照れちゃうな。でもウサギリンゴの切り方なら誰でもできるよ?」
≪そのような事はございません!!≫
厨房でマスミとミス・マープルが和気藹々と話しながら料理をしている。
仲いいな。
雇用契約が終了したミス・マープルはマスミに師事する事になった。
どうしてそうなった?!
驚きだよ。
『なんでもミス・マープルはマスミに感銘を受けたらしい』
エリックは言う。
『これもミス・マープルにとっていい経験だ。授業料は払うから心配するな』
いや、そうじゃない。
マスミがいるのに何で家政婦ロボットが家に入り込んでくるんだ。邪魔だよ。しかも――――
「何で、ここにいるんだい?エリック」
向かいのソファーで寛ぎ白ワインを飲む男。ここは君の家じゃない俺の家なんだけど。なんでそんなに寛いでんの?
「何でと言われてもな。マスミに招待されたからに決まっているだろ?自分が留守の間、おまえが迷惑をかけて申し訳ないって言うんだ、なら、マスミの手料理でチャラにするっていえば喜んでって。そんで今日来たってわけ」
「いや!お前、昨日もいたよね?最近ずっとうちに入り浸りだよね?」
「マスミの手料理は上手いからな。仕方ない」
「いや!帰れ!!」
「それに俺だけじゃないだろ?」
「うっ!」
そうなのだ。
マスミが帰って来て以来、何故か両親と姉さんたちが入り浸る。
「姉御は隣に引っ越してきたからな。『毎日、健康で美味しい手料理が食べられるなんて最高よね』って言ってたぞ」
「ぐぬぬぬぬぬ」
「それと俺も来月から引っ越してくるからよろしくな」
「はあああああああ!?」
「隣人同士助け合おうぜ」
「帰れ!!」
こうして、妻の家出は終わった。
そうして妻を狙うハイエナが増え、別の危機に直面していくのはまた別の話である。
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