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本編

30.家政婦ロボットside

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 旦那様の奥方がお戻りになった。

 その知らせをエリック様から聞いたわたくしは教会に駆け込み懺悔いたしました。
 あのような旦那様を野放しにしてしまったせいで、折角逃亡できた奥方様が囚われてしまったのです。神の許しを得なければいたたまれません。

『高性能ロボットが神に祈るな!』

 研究者の一人が怒っておりましたが知りません。
 人、いえ、ロボットの勝手でございましょう。
 そもそも、英国教会は時の国王が若い愛人と結婚するために年老いた王妃と離婚するために作られたもの。それに比べればロボットが懺悔するくらい何とでもないでしょうに。まったく。カトリック教会にいかないだけマシでしょう。


 わたくしは奥方様の心身に異常をきたしませんように――――と、いるかどうか分からない神とやらに祈っておりました。

 ですが、その祈りはどうやら杞憂だったようでございます。


 
「ロイドのお世話を数ヶ月に渡ってしてくださったようで、ありがとうございました。つまらないものですが受け取ってください」

 そう言って奥方様は研究員たちに高級菓子を配っておりました。わたくしにも労いの言葉を掛けてくださって、本当に嬉しい限りです。

 それにしても――と、わたくしは目の前で楽しげに笑う旦那様を見てどうしても考えてしまうのです。このデリカシーのないダメ人間は一体どのような手段を用いて奥方様と結婚に至ったのでしょう。謎だらけです。

 奥方様に聞いてみたところ、結婚前から友人としての付き合いがあったようです。
 学生時代に交換留学生として互いの国を行き来していたと言うではありませんか!誰ですか!!旦那様を交換留学などという恐ろしい企画に参加させたのは!!危険物の輸出はダメでしょう!!!被害を拡大させてはなりません!!!

 どこの学校がそのような企画を練ったのですか!!?
 各国から苦情の嵐ではありませんか!!!

 はっ!
 もしかして……留学と言う名の『棄民計画』だったのでしょうか?
 

 
 いけません。話が逸れてしまいましたね。失礼致しました。
 兎も角、そんなわけで二人は紆余曲折の末に結婚したのだそうです。
 本当に旦那様は良い方と巡り会えたものです。ええ、素直で可愛らしい奥方様です。ただ、奥方様が『男』である事は教えておいていただきたかったです。まぁいいです。ロボットに人間的な倫理を求めること自体が間違いなのでしょう。きっと神様も許してくれますよ。ええ、きっと……。

 こうして、わたくしのロボット生に平和が訪れたのでした。


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