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15.執事side
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俺の家は代々公爵家に仕える執事の家系なんだ。
つまりは俺も執事ということだ。
元は王家に仕えていたらしい。
なんでも王子がポカやらかした時に、生贄よろしく、全ての罪を被せられ処刑されそうになったのだとか。
それを当時の公爵に助けられ、以降公爵に仕えるようになったのだ。
流石の王家も公爵家相手に、そう強くでれなかったらしい。
貴族ではなくなり、平民として生きていくことになったが、公爵家は先祖を執事として雇ってくれた。
公爵家に恩義がある。
だからこの公爵家に仇なすものは、何者であろうと潰す。
あの王家から嫁が来なくなってホッとした者は多い。
当然だ。
あの王家の王女など碌なもんじゃない。
偏見だと言われそうだが、先祖に濡れ衣を着せた一族をどうして好きになれようか。
「旦那様がお戻りになられました!」
執事の一人がそういうと、俺を含め執事たちが急いで玄関に向かう。
そして玄関を開け、主を迎えるのだ。
「おかえりなさいませ、旦那様」
「ただいま」
我が主は執事の言葉に軽く頷くと、奥方の待つ部屋に向かう。
今、奥方は妊娠中だ。
出産予定日は一ヶ月ほど先だが、万が一があってはと、主は出産まで仕事を控えている。
奥方に寄り添い、慈しむ姿は、まさに理想の夫だろう。
「すごいよな。旦那様は」
同僚がそう呟く。
「なにが?」
「だって旦那様は、奥方様に首ったけだ」
「ああ」
それは確かに。
「良いことじゃないか。公爵家は愛妻家だ」
「ああ、そうだけどな。でもちょっと変じゃないか?」
「なにがだ?」
「俺は結婚しているし、子供だっている。だから余計に思うのかもしれないが、旦那様は変だ」
「どこが?」
「だって、奥方様の具合が悪くなる前に医者を呼んだり、看護師を配置したり、奥方様のためのこの季節に採れない果物まで取り寄せたんだぞ」
「それだけ愛しているんだ」
そうだ。
傍で見ていても、主が奥方をどれだけ思っているか分かる。
ちょっとばかり愛が深いが、それも見ていて微笑ましい。
「それに俺、最近になって気付いたことがあるんだ」
「なんだよ?」
「旦那様って元婚約者を本邸に招いたこと一回もなかったな、って……」
「え?そうだったか?」
「ああ。元婚約者の王女殿下は、いつも本邸ではなく別邸にばかり来ていた」
「そういえば……そうだったような……?」
同僚の言葉に、俺も記憶を掘り起こす。
確かに、本邸に元婚約者が来たことは一回もない?気がする。
「それって、旦那様は王女殿下のことが嫌いだったんじゃないか?だから本邸に招かなかったんじゃ……」
「かもしれないが、だからとて、別邸にばかり招いても別におかしくはないだろう。それにどちらかといえば王女殿下は王都の屋敷にばかり来ていたし……。あの王女殿下がわざわざ領地の中央にある本邸に足を運ぶようには思えないだろう?別邸の方が良かったんじゃないのか?」
「ああ……。それは確かに」
元婚約者の王女殿下は、我儘で傲慢な方だった。
本邸は、どちらかといえば質実剛健な造りになっている。
王女殿下のご趣味に合わなかったのかもしれない。
別邸は逆に、煌びやかな造りになっている。
王女殿下は、そういう華やかなものがお好きだったのだろう。
本邸に来たくなかったのかもしれない。
兎にも角にも、主の奥方がソーニャ様であったことは俺達にしても喜ばしいことだ。
「奥方様って、本当に良い人だよな」
「そうだな」
元婚約者は酷かったが、奥方様は良い方だ。
我が公爵家に相応しいと、常々思う。
奥方一筋で浮気もしない。純愛だ。
だからこそ、公爵家は安泰だと思う。
つまりは俺も執事ということだ。
元は王家に仕えていたらしい。
なんでも王子がポカやらかした時に、生贄よろしく、全ての罪を被せられ処刑されそうになったのだとか。
それを当時の公爵に助けられ、以降公爵に仕えるようになったのだ。
流石の王家も公爵家相手に、そう強くでれなかったらしい。
貴族ではなくなり、平民として生きていくことになったが、公爵家は先祖を執事として雇ってくれた。
公爵家に恩義がある。
だからこの公爵家に仇なすものは、何者であろうと潰す。
あの王家から嫁が来なくなってホッとした者は多い。
当然だ。
あの王家の王女など碌なもんじゃない。
偏見だと言われそうだが、先祖に濡れ衣を着せた一族をどうして好きになれようか。
「旦那様がお戻りになられました!」
執事の一人がそういうと、俺を含め執事たちが急いで玄関に向かう。
そして玄関を開け、主を迎えるのだ。
「おかえりなさいませ、旦那様」
「ただいま」
我が主は執事の言葉に軽く頷くと、奥方の待つ部屋に向かう。
今、奥方は妊娠中だ。
出産予定日は一ヶ月ほど先だが、万が一があってはと、主は出産まで仕事を控えている。
奥方に寄り添い、慈しむ姿は、まさに理想の夫だろう。
「すごいよな。旦那様は」
同僚がそう呟く。
「なにが?」
「だって旦那様は、奥方様に首ったけだ」
「ああ」
それは確かに。
「良いことじゃないか。公爵家は愛妻家だ」
「ああ、そうだけどな。でもちょっと変じゃないか?」
「なにがだ?」
「俺は結婚しているし、子供だっている。だから余計に思うのかもしれないが、旦那様は変だ」
「どこが?」
「だって、奥方様の具合が悪くなる前に医者を呼んだり、看護師を配置したり、奥方様のためのこの季節に採れない果物まで取り寄せたんだぞ」
「それだけ愛しているんだ」
そうだ。
傍で見ていても、主が奥方をどれだけ思っているか分かる。
ちょっとばかり愛が深いが、それも見ていて微笑ましい。
「それに俺、最近になって気付いたことがあるんだ」
「なんだよ?」
「旦那様って元婚約者を本邸に招いたこと一回もなかったな、って……」
「え?そうだったか?」
「ああ。元婚約者の王女殿下は、いつも本邸ではなく別邸にばかり来ていた」
「そういえば……そうだったような……?」
同僚の言葉に、俺も記憶を掘り起こす。
確かに、本邸に元婚約者が来たことは一回もない?気がする。
「それって、旦那様は王女殿下のことが嫌いだったんじゃないか?だから本邸に招かなかったんじゃ……」
「かもしれないが、だからとて、別邸にばかり招いても別におかしくはないだろう。それにどちらかといえば王女殿下は王都の屋敷にばかり来ていたし……。あの王女殿下がわざわざ領地の中央にある本邸に足を運ぶようには思えないだろう?別邸の方が良かったんじゃないのか?」
「ああ……。それは確かに」
元婚約者の王女殿下は、我儘で傲慢な方だった。
本邸は、どちらかといえば質実剛健な造りになっている。
王女殿下のご趣味に合わなかったのかもしれない。
別邸は逆に、煌びやかな造りになっている。
王女殿下は、そういう華やかなものがお好きだったのだろう。
本邸に来たくなかったのかもしれない。
兎にも角にも、主の奥方がソーニャ様であったことは俺達にしても喜ばしいことだ。
「奥方様って、本当に良い人だよな」
「そうだな」
元婚約者は酷かったが、奥方様は良い方だ。
我が公爵家に相応しいと、常々思う。
奥方一筋で浮気もしない。純愛だ。
だからこそ、公爵家は安泰だと思う。
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