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4.紹介された令嬢2

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「図々しい女だよね」

 いつものバルコニーで、ローレンスが吐き捨てるようにいった。
 もう、この場所は私達の指定席になっている気がする。

「幼馴染で妹のような存在なんですって」

「ありえない言い訳だね」

「そうかしら?恋人と公言するよりマシでしょう」

「アレで?」

「ええ、アレで」

 ローレンスの言いたいことはわかる。
 誰が見たってアレは逢引。恋人同士の逢瀬だ。
 それでも、彼は幼馴染で妹のような存在だと否定している。
 今も、バルコニーから見える庭園の東屋で、二人は密会しているのだから。
 月明りのシルエットが二人の逢瀬を私達に知らせてくる。重なり合う影。

「そろそろ、はっきりさせる時期なんじゃないかな?」

「……何をはっきりさせるのかしら?」

「わかってるくせに」

「そう、ね……」

 そろそろ潮時かもしれない。
 ただ、王家が何と言うか。

「今がどういう状況なのか、彼らは理解していない」

 ローレンスは苦虫を噛み潰したような顔をした。
 王家への嫌悪が、滲み出ている。

「王女殿下の駆け落ち騒動で王家の屋台骨はぐらついている。その分、貴族派が勢いづいているっていうのに」

「そうね」

「今の王家に男児がいないことも理由だろうがね」

「ええ」

 問題は、優秀な王女がいないことだろう。
 女王として立つにしても、それに見合う器の王女がいない。
 優秀な王配を付ければ問題ないと思うかもしれないけれど、その第一候補のローレンスを袖にしたような状態では……ね。

 ブラッドフォード公爵家も王家との婚姻は三世代先までお断りだと言っているらしいし。
 王家の未来は暗いわね、と他人事のように思った。

「水面下で貴族共が動き出しているっていうのに暢気なものだ。王家派はクルトを押しているようだしね」

「まあ、そうなの?」

「ああ、そうさ」

「意外だわ」

「ははっ、そうでもないさ。傀儡には丁度いい」

「ヴァルター男爵令嬢はそれを狙ってのことかしら?」

「さあね。アレが演技なら大した役者だ」

 彼女の恋心は本物だと思う。
 なら、考えられることは一つ。
 王家派が内情を知らせずに近づくように促したのか。
 それにしても何故、男爵令嬢なのかしら?
 ここは自分達の派閥の高位貴族の令嬢を宛がうものではないの?

「なにか、裏がありそうね」

「貴族派の仕業か、王家派の暴走か……。まあ、それはどうでもいい」

「……そう?」

「ああ。どの道、男爵令嬢は切り捨てられる」

「そうね」

 どちらの派閥の仕業でも最終的にそうなる。
 彼らの目的は私とクルトの婚約解消なのだから。



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