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~朱雀の章~

第101話閑話 東宮(未来の朱雀帝)side 

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梅の花が咲き誇り、桜の花が蕾をつけ始めている。春も近い。
今日は珍しく庭の散策を一人でしている。普段は異母弟の光と一緒なのだが今日に限って「仕事」が入ってしまっているらしい。
私には内密に事を運んでいるが本来ならこのような裏方は光がすることはないのだ。どうも、光は裏方にまわろうとする傾向にある。本人は無自覚のようだが……。

生れ落ちた瞬間に苦労しているせいだろうか。
どうも自己評価が低い。
女人の年上が好みのようだし……。

父上の業は深い。

今頃、光に物理攻撃を受けているであろう父上、かのお人にもう少し「父親」としての自覚があれば光ももう少し天真爛漫にすごせた筈だ。無邪気な性格だが無意識に策略を巡らせている。頼もしくもあり不憫にも感じていた。光と葵の上を結婚させたのは正解だった。葵の上なら光だけを愛し支えてくれると踏んでいた。お陰で光の精神も安定している。今まではどうも危なっかしい処があったからね。

ピィ……

小さな声が聞こえた。

ピーィ……

弱弱しい声の方角に足を向ける。

「これは……」  

桜の木の下に小鳥がいた。
驚いた。
傷だらけだったからでも、生き残るために必死に声を出しているからでもない。
その小鳥の姿に驚きを隠せなかった。

五色絢爛の小鳥。

まるで神話に出てくる鳥そのものの姿をしていたのだ。

小鳥を自らの手で持ち上げると更に鳴きだした。
先ほどとはまた違った鳴き声。

「神獣……鳳凰……」

私の手から逃れようと暴れだした。傷付いた翅は飛ぼうにも飛べないでいる。その姿が一段と痛々しい。恐らくだが、人間に危害を加えられて落ち延びてきたように見受けられた。世の中、罰当たりな人もいるものだ。
 
「私は鳳凰様に危害を加える者ではございません。先に傷の手当てをさせてください。傷が癒えるまでの辛抱でございますから何卒ご了承ください」

不敬と思いながらもゆっくりと小さな鳳凰様をなでる。
弟の頭を撫でるように。

「大丈夫でございますよ」

傷に触れないように優しく撫でていくと、小さな鳳凰様は段々と落ち着いてきた。

「私の局に移動しますので少し揺れますが御辛抱ください」

小さな鳳凰様は言葉を理解しているのか一鳴きした。
どうやら了承を得れたようだ。

 


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