【完結】婚約破棄される前に私は毒を呷って死にます!当然でしょう?私は王太子妃になるはずだったんですから。どの道、只ではすみません。

つくも茄子

文字の大きさ
上 下
26 / 37
番外編

25.公王陛下1

しおりを挟む

私の生まれは公爵家である。
王国でも並ぶもののない権力を持つ筆頭公爵家。
その嫡男として生を受けた。

アレクサンドル・レオポルド・ヘッセン。

私の名前は、母上から譲り受けたといっても過言ではない。
そして、この名前を受け継いだ意味を知ったのは随分後の事だった。
大陸随一の大国である帝国の初代皇帝と同じ名前であった。一代で国を築き繁栄の礎を築いたとされる英雄。私たち親子は、その名前を受け継いでいた。

母上の名前は、アレクサンドラ・ウジェーヌ・ヘッセン。
王家の血を引く女公爵である。
私が生まれる前までは女性の爵位授与はできなかった。法律で禁止されていたのだ。それを女性でも正式に跡取りに成れるように働きかけたのが母上である。
理由は色々あるようだが“男性が必ずしも優秀とは限らない”という事実を王国が身をもって知ったが故の事らしい。もっとも、男性優位の社会に亀裂を走らせたのは間違いなく母上と叔母上だろう。

『貴婦人の中の貴婦人』と讃えられる母上と、自らが戦場に赴く『女傑』である叔母上。
この二人の女性では相性が悪いと考える者が多いだろう。
なにしろ、育ちも生き方も正反対だ。二人をよく知らない人からすれば表面上の付き合いしかしていないと捉えているが、実際は、とても仲が良い。義理の姉妹とは到底思えないほどだ。寧ろ、実弟である叔父上との方がよそよそしい。昔の事が原因なのだろうと推測している。母上は昔の事など気にしていないのだが、叔父上の方が未だに引きずっている。母上と顔を合わせるたびに物言いたげな表情をなさっていた。
辺境伯爵家に遊びに行くたびに叔父上が不在がちになる事が多くなった。私達親子が滞在するからだろう。叔父上なりに気を遣って屋敷を留守にしていたらしい。

母上はそんな叔父上の言動に、「相変わらず逃げる事しか考えない困った子だこと」と溜息を吐きながら苦言を漏らしていた。
まあ、気まずい思いをするよりはマシなのでは? と当時の私は思っていたが、次第に雲行きが怪しくなっていた事にまでは気付かなかった。




「アレクサンドル、知らなかったの? 辺境伯爵夫妻は何年も前から別居中よ?」
「……別居ですか?」
「そうよ」
「何故ですか? もしや、私達が辺境伯爵領に一時期頻繁に赴いていたせいですか?」

それなら叔母上に申し訳ない。
私や両親、特に母上のせいで御夫君と別々に暮らす状況になってしまったなど。

「私達が辺境伯爵領に行こうが行くまいが結果は変わらなかったと思うわよ?」
「どういうことですか?」
「コリンは別宅で愛人と暮らしているからです」
「はい!?」

考えもしなかった事を言われた。
愛人と暮らしている?
あの叔父上が?
叔母上に決して逆らえない叔父上が愛人を作った上に一緒に生活している。
正気だろうか?
叔母上は知っているのだろうか?
いや、母上が知っているのだから、当然、ご存知のはずだ。
一体、どんな修羅場になったのやら……。

「なにか勘違いしているようだから、一応言っておくけれど、辺境伯爵夫妻は円満別居よ?」

夫婦が離れて暮らす事が円満?
血の雨が降ったの間違いでは?

「叔母上は承知しているのですか?」
「愛人の事かしら?」
「はい」

あの叔母上女傑が自分の夫に愛人を持つのを良しとする訳がない。

「承知するもなにも、コリンの愛人は、アントニアの許可を得ている存在よ?」
「叔母上が叔父上の愛人を認めているのですか?」
「認めているというよりも、元々、アントニアがコリンに紹介した女性なのよ。勿論、コリンの愛人候補としてね」
「……はっ!?」

母上の言葉が理解できない。
自分の夫に愛人をあてがったというのか?
何故!?
御自分の家庭に不和を持ち込む行為を何故するんだ?
しおりを挟む
感想 68

あなたにおすすめの小説

彼女にも愛する人がいた

まるまる⭐️
恋愛
既に冷たくなった王妃を見つけたのは、彼女に食事を運んで来た侍女だった。 「宮廷医の見立てでは、王妃様の死因は餓死。然も彼が言うには、王妃様は亡くなってから既に2、3日は経過しているだろうとの事でした」 そう宰相から報告を受けた俺は、自分の耳を疑った。 餓死だと? この王宮で?  彼女は俺の従兄妹で隣国ジルハイムの王女だ。 俺の背中を嫌な汗が流れた。 では、亡くなってから今日まで、彼女がいない事に誰も気付きもしなかったと言うのか…? そんな馬鹿な…。信じられなかった。 だがそんな俺を他所に宰相は更に告げる。 「亡くなった王妃様は陛下の子を懐妊されておりました」と…。 彼女がこの国へ嫁いで来て2年。漸く子が出来た事をこんな形で知るなんて…。 俺はその報告に愕然とした。

元侯爵令嬢は冷遇を満喫する

cyaru
恋愛
第三王子の不貞による婚約解消で王様に拝み倒され、渋々嫁いだ侯爵令嬢のエレイン。 しかし教会で結婚式を挙げた後、夫の口から開口一番に出た言葉は 「王命だから君を娶っただけだ。愛してもらえるとは思わないでくれ」 夫となったパトリックの側には長年の恋人であるリリシア。 自分もだけど、向こうだってわたくしの事は見たくも無いはず!っと早々の別居宣言。 お互いで交わす契約書にほっとするパトリックとエレイン。ほくそ笑む愛人リリシア。 本宅からは屋根すら見えない別邸に引きこもりお1人様生活を満喫する予定が・・。 ※専門用語は出来るだけ注釈をつけますが、作者が専門用語だと思ってない専門用語がある場合があります ※作者都合のご都合主義です。 ※リアルで似たようなものが出てくると思いますが気のせいです。 ※架空のお話です。現実世界の話ではありません。 ※爵位や言葉使いなど現実世界、他の作者さんの作品とは異なります(似てるモノ、同じものもあります) ※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。

私の愛した婚約者は死にました〜過去は捨てましたので自由に生きます〜

みおな
恋愛
 大好きだった人。 一目惚れだった。だから、あの人が婚約者になって、本当に嬉しかった。  なのに、私の友人と愛を交わしていたなんて。  もう誰も信じられない。

婚約破棄を望むなら〜私の愛した人はあなたじゃありません〜

みおな
恋愛
 王家主催のパーティーにて、私の婚約者がやらかした。 「お前との婚約を破棄する!!」  私はこの馬鹿何言っているんだと思いながらも、婚約破棄を受け入れてやった。  だって、私は何ひとつ困らない。 困るのは目の前でふんぞり返っている元婚約者なのだから。

【完結】婚約破棄され毒杯処分された悪役令嬢は影から王子の愛と後悔を見届ける

堀 和三盆
恋愛
「クアリフィカ・アートルム公爵令嬢! 貴様との婚約は破棄する」  王太子との結婚を半年後に控え、卒業パーティーで婚約を破棄されてしまったクアリフィカ。目の前でクアリフィカの婚約者に寄り添い、歪んだ嗤いを浮かべているのは異母妹のルシクラージュだ。  クアリフィカは既に王妃教育を終えているため、このタイミングでの婚約破棄は未来を奪われるも同然。こうなるとクアリフィカにとれる選択肢は多くない。  せめてこれまで努力してきた王妃教育の成果を見てもらいたくて。  キレイな姿を婚約者の記憶にとどめてほしくて。  クアリフィカは荒れ狂う感情をしっかりと覆い隠し、この場で最後の公務に臨む。  卒業パーティー会場に響き渡る悲鳴。  目にした惨状にバタバタと倒れるパーティー参加者達。  淑女の鑑とまで言われたクアリフィカの最期の姿は、良くも悪くも多くの者の記憶に刻まれることになる。  そうして――王太子とルシクラージュの、後悔と懺悔の日々が始まった。

拝啓、婚約者様。ごきげんよう。そしてさようなら

みおな
恋愛
 子爵令嬢のクロエ・ルーベンスは今日も《おひとり様》で夜会に参加する。 公爵家を継ぐ予定の婚約者がいながら、だ。  クロエの婚約者、クライヴ・コンラッド公爵令息は、婚約が決まった時から一度も婚約者としての義務を果たしていない。  クライヴは、ずっと義妹のファンティーヌを優先するからだ。 「ファンティーヌが熱を出したから、出かけられない」 「ファンティーヌが行きたいと言っているから、エスコートは出来ない」 「ファンティーヌが」 「ファンティーヌが」  だからクロエは、学園卒業式のパーティーで顔を合わせたクライヴに、にっこりと微笑んで伝える。 「私のことはお気になさらず」

やり直すなら、貴方とは結婚しません

わらびもち
恋愛
「君となんて結婚しなければよかったよ」 「は…………?」  夫からの辛辣な言葉に、私は一瞬息をするのも忘れてしまった。

王子は婚約破棄を泣いて詫びる

tartan321
恋愛
最愛の妹を失った王子は婚約者のキャシーに復讐を企てた。非力な王子ではあったが、仲間の協力を取り付けて、キャシーを王宮から追い出すことに成功する。 目的を達成し安堵した王子の前に突然死んだ妹の霊が現れた。 「お兄さま。キャシー様を3日以内に連れ戻して!」 存亡をかけた戦いの前に王子はただただ無力だった。  王子は妹の言葉を信じ、遥か遠くの村にいるキャシーを訪ねることにした……。

処理中です...