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21.公爵令嬢2
しおりを挟む誕生日の祝い品を贈られた事もありませんでした(後日、侍従から慌ててプレゼントが届きましたが)。
病で倒れても見舞いの品を贈られた事もありませんでした(後日、侍従から全快祝いが届きましたが)。
お茶会も度々欠席されました(後日、侍従から不参加の謝り状が届きましたが)。
婚約者同士の定期的な交流会も度々すっぽかされました(その度に、侍従から謝り倒されましたが)。
夜会のエスコートもおざなりでした(入場と最初のワルツを済ませるとさっさと離れていかれます)。
これで“好意を持たれている”と思えるほど無垢な存在にはなれません。嫌われ憎まれていると感じざるを得ないのです。
それは学園に通うようになってからも変わる事はありませんでした。
寧ろ、酷くなった程です。
評判がよろしくない学生とも交流を始めたのです。
素行が悪くなった、と言われるのに時間はかかりませんでした。高位貴族の子弟は眉を顰める中、下位貴族出身者達がフリッツ殿下に群がるようになったのは仕方ない事です。虫が甘い蜜に集まるのは自然の流れですからね。
まあ、学園の間だけと大目に見ていた事は否定出来ません。“今だけのこと”と悠長に考えていたのが悔やまれてなりません。
フリッツ殿下は、学園在籍中に“恋人”を持ったのです。浮気です。私に対しての裏切りです。にも拘らず、本人達は「真実の愛」と言って憚らなかったのです。彼らの周りはそれを応援する者達で溢れかえっておりましたわ。「身分違いの恋」に浮かれていらっしゃった。
側近達と共に男爵家の庶子を相手に、恋だ、愛だと騒ぎ立てているのですから。
常識的な第三者から見ると浮気以外の何物でもありませんのに。
相手は貴族の末端。しかも庶子です。側妃にもなれない女性になぜ私が嫉妬しなければならないのでしょう?
フリッツ王太子殿下がどれほど彼女を寵愛しようとも『愛妾』にしか出来ないといいますのに。
その愛妾になるにしても、様々な審査と適性を考慮しなければなりませんし、不合格の烙印を押されでもしたら『愛人』にしかなれません。ですから、そのことを踏まえて事前にフリッツ殿下と相談したかったのですが、生憎、話しかけるだけで不機嫌になるのですから、どうしようもありません。
交友関係に口出しするつもりはありませんでしたが、一応、お父様や陛下には知らせてあります。とは申せ、私に出来た事は『愛妾候補』を陛下達に御報告する事ぐらいでしたわ。
ただ諸外国との交流の際、おばあ様の親族の方が外交に参加されていましたから、うっかり、口が滑ってしまいましたけど。別に宜しいでしょう?
一応、学園での出来事は遠回しにお父様や陛下に御報告しておりましたのに、何の対策もなさらなかったのですから。
お父様たちは、彼らを侮り過ぎですわ。
それとも馬鹿な真似はしないと信じているのでしょうか?
男爵家の庶子を寵愛しているのは「物珍しさ故の行動」とでも考えているのでしょうか?
若気の至り、というには些か常軌を逸しているように感じますのに……。
お父様もコリンに大それたことは出来ないと思い込んでいるようですし。“馬鹿な子ほど可愛い”と世間ではいいますが、お父様の場合は、“馬鹿な子だから可愛がっている”という感じです。
恋の炎に煽られた愚者達がどのように行動するかなど誰にも理解出来ないといいますのに……困ったことです。
夜会であのようなことをされるとは思いませんでした。
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