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13.公爵子息3

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後日、本当に婿入り先の家から迎えが来た。
家人がまとめたであろう荷物と共に僕は一人馬車に乗り込んだ。
結婚相手の女性は僕より十歳上の辺境伯爵令嬢。
西の隣国と接する領土を持つ辺境伯爵家は、舅と妻によって支えられていた。

「貴男の役目は私との間に子をなすことよ。それ以外は自由にしてくれて構わないから」

開口一番に妻に言われた言葉が衝撃的だった。
だってそうだろ?
婿入りっていっても僕が辺境伯爵家を継ぐんだから。
なのに何もするな?
どういうこと?

「貴男のことは既に調査済みです。ヘッセン公爵からも詳細を聞いていますからね。領地経営をしたこともない、武芸に秀でてもいない男に我が家を任せられるはずないでしょう?貴男はただ言われた通りにすればいいのよ」
「な……なんで、僕は辺境伯爵になるんだろう?」
「ええ、ならそうでしょうね。我が国に女性が爵位を継承する法律は施行されていないから」
「なら!」
「爵位を婿に譲って、実権を妻が差配するのは当然でしょう? 貴男に辺境伯爵家の血は流れていないんだから」

また血か!!!
そんなに血筋が大事なのか!!!

「カッコウが好みの王都の男達には分からないのかもしれないけど、辺境伯爵家の血を引かず、軟弱で頭が弱い上に、下半身もだらしない男に出来ることは、血筋を絶やさないために本妻に種を蒔くくらいしかないでしょう」

な、なんだって!!!

「貴男は若いし顔だけはいいから、ヘッセン公爵からも『お飾りの夫にどうだろうか?』と打診があったのよ」

父上からの申し込み!?

「こちらも我が家に干渉しないを探していたから丁度いいと思ってね。あなた自身にはなんの価値もないけれど、ヘッセン公爵家との繋がりも出来るし、何よりもアレクサンドラ様と交流出来ることは何物にも代えられないことだわ。上手くすれば帝国との繋がりも出来るかもしれないんですもの。我が家にとっては大きな利益になると判断したから、ヘッセン公爵家のお荷物を貰い受けたのよ」

愕然とした。
田舎貴族の年増の令嬢からの希望だとばかり思っていたのに、僕自身に魅力がない、といわれた。

妻の宣言通り、僕は『お飾りの夫』になった。
領地経営に関わることもなかった。妻との間に子供をなすことが役目だった。三男二女の子宝に恵まれ、それだけで妻も舅も大いに喜んだ。
僕に似てはいけないからと、教育に口出しはさせてくれなかった。
その頃になると、僕も自分のやらかしを漸く理解出来るようになっていたので、妻の言葉に反発を覚えることもなかった。
王都にいた時には気付かなかったけど、僕やフリッツ殿下の行動は他国にも伝わっていて、国の品格を落とす恥さらしの王侯貴族として、他国の貴族たちの反面教師とされている。




母上は、僕が辺境伯爵家に婿入りする前に伯爵家の実家に返却されていた。
その伯爵家は数日後に没落した。
大規模な盗賊集団に伯爵領を攻撃されたからだ。一時とはいえ、盗賊風情に領地の一部を占領された上に、盗賊団を捕らえることも出来なかったのだ。
伯爵家の名誉は地に落ちた。
盗賊団によって奪われた財宝も戻らない。
それによって領地を縮小されてしまった。
しかも残された領地は貧しい土地であるため、伯爵家は殆ど平民同然の生活になっているらしい。
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