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51.第三王子side ~優秀な二人の兄1~
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「あの件がとうとう、信憑性を増してきたな」
「まぁ、こればかりは仕方がない」
「分かってはいるんだが……」
「そうガッカリするな。第二王子殿下なら大丈夫だろう」
貴族達の話し声が聞こえる。
「しかし、何故、第二王子殿下なんだ」
「仕方ないだろう。他に誰がいる。王太子の第一王子を行かす訳にはいくまい」
「だが……」
「第四王子殿下は賢いが、未だ幼い身だ。到底、辺境に行かせるわけにはいかないだろう」
「だが、第二王子殿下は……」
「お前が第二王子殿下を惜しむのはわかる。だがな、辺境との繋がりは強固にする必要があるんだ。武に秀でる第二王子殿下ならば、あちらでも十分やっていけるだろう」
「それはそうだが……」
「こんな、ご時世なんだ。国内の連携を強固にする必要がある」
「それは分かっている。しかし……第三王子殿下ではいけないのか?」
「チャスティー殿下……か」
「そうだ」
「無理だろう。チャスティー殿下はグリード公爵家と縁組を結んでいる。そもそも彼の王子殿下では辺境の当主達から認められるかどうか分からない。あちらは常に国境を警戒してる。何かあればすぐ戦になる。特に今は緊迫した状況が続いている」
「すぐに事が起こるとは思わんが……」
「ああ、だが、王家がなめられる訳にはいかない」
貴族達の声がどんどん小さくなる。囁くように話すのは、誰かに聞かれるのを恐れているからだろう。
兄達と比べられるのは何もこれが初めてではない。二人が優秀なのは本当のことだ。兄達に比べたら僕など……。
どんなに頑張っても兄達には手が届かない。
どんなに頑張っても兄上達のようにはなれない。
睡眠時間を削って勉強をしても、成績はそこまで振るわなかった。
手が豆だらけになるほど剣を振っても、大して身に付かなかった。
『兄上達はあれほど優秀なのに』
『どうされたのですか。この程度の課題など、兄上達が殿下の年頃には既に修了しておりましたよ?』
『殿下、まだ練習されるのですか? あまり根を詰めすぎてもお身体に障りますよ?ご無理はなさらないように』
『チャスティー殿下は兄上達とは違うのですから』
上の王子達が優秀だからと、周囲は僕に期待していた。
同じように優秀であるはずだ、と。
だが、どれだけ頑張っても僕は兄達のようにはなれなかった。
次第に周囲は、僕への期待をなくしていった。
いや、違うな。
努力しても大して結果を出せない僕に気遣い、「殿下、努力する姿勢が何よりも大事です」「殿下は十分努力しておられます」と、優しく声をかけてくれた。
彼らは僕が兄達のようになれないことを、「努力が足りないからだ」と責めたりはしなかった。
それが一層、僕を惨めにさせた。
きっと彼らは知らない。
自分達がどれだけ残酷なことを言っているのか。
皆が気遣えば気遣うほど、慰めの言葉を口にすればするほど、僕が惨めな気持ちになっていくことを。
「まぁ、こればかりは仕方がない」
「分かってはいるんだが……」
「そうガッカリするな。第二王子殿下なら大丈夫だろう」
貴族達の話し声が聞こえる。
「しかし、何故、第二王子殿下なんだ」
「仕方ないだろう。他に誰がいる。王太子の第一王子を行かす訳にはいくまい」
「だが……」
「第四王子殿下は賢いが、未だ幼い身だ。到底、辺境に行かせるわけにはいかないだろう」
「だが、第二王子殿下は……」
「お前が第二王子殿下を惜しむのはわかる。だがな、辺境との繋がりは強固にする必要があるんだ。武に秀でる第二王子殿下ならば、あちらでも十分やっていけるだろう」
「それはそうだが……」
「こんな、ご時世なんだ。国内の連携を強固にする必要がある」
「それは分かっている。しかし……第三王子殿下ではいけないのか?」
「チャスティー殿下……か」
「そうだ」
「無理だろう。チャスティー殿下はグリード公爵家と縁組を結んでいる。そもそも彼の王子殿下では辺境の当主達から認められるかどうか分からない。あちらは常に国境を警戒してる。何かあればすぐ戦になる。特に今は緊迫した状況が続いている」
「すぐに事が起こるとは思わんが……」
「ああ、だが、王家がなめられる訳にはいかない」
貴族達の声がどんどん小さくなる。囁くように話すのは、誰かに聞かれるのを恐れているからだろう。
兄達と比べられるのは何もこれが初めてではない。二人が優秀なのは本当のことだ。兄達に比べたら僕など……。
どんなに頑張っても兄達には手が届かない。
どんなに頑張っても兄上達のようにはなれない。
睡眠時間を削って勉強をしても、成績はそこまで振るわなかった。
手が豆だらけになるほど剣を振っても、大して身に付かなかった。
『兄上達はあれほど優秀なのに』
『どうされたのですか。この程度の課題など、兄上達が殿下の年頃には既に修了しておりましたよ?』
『殿下、まだ練習されるのですか? あまり根を詰めすぎてもお身体に障りますよ?ご無理はなさらないように』
『チャスティー殿下は兄上達とは違うのですから』
上の王子達が優秀だからと、周囲は僕に期待していた。
同じように優秀であるはずだ、と。
だが、どれだけ頑張っても僕は兄達のようにはなれなかった。
次第に周囲は、僕への期待をなくしていった。
いや、違うな。
努力しても大して結果を出せない僕に気遣い、「殿下、努力する姿勢が何よりも大事です」「殿下は十分努力しておられます」と、優しく声をかけてくれた。
彼らは僕が兄達のようになれないことを、「努力が足りないからだ」と責めたりはしなかった。
それが一層、僕を惨めにさせた。
きっと彼らは知らない。
自分達がどれだけ残酷なことを言っているのか。
皆が気遣えば気遣うほど、慰めの言葉を口にすればするほど、僕が惨めな気持ちになっていくことを。
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