34 / 55
34.問題児
しおりを挟む
フィデ曰く、エンビー嬢の素行はよろしくないようです。
問題行動を起こしては停学処分を食らっているとか。
「それは……また……」
「はい。エンビー嬢は手癖の悪いことで有名になっております。気に入った物は他者の物であっても平気で奪うとか」
「まぁ」
それは……また、何と言いますか。
「生徒から奪った物をそのまま自分の物にしているようです」
「なんて図々しい……」
彼女には常識が通じないのでしょうか?
親はどうしているのでしょう。
「ラース副団長はその都度叱っておられるようですが、あまり効果はないようです」
「そうでしょうね……」
エンビー嬢が叱られている姿は、なんとなく想像できます。
ラース副団長は正義感の強い曲がったことが嫌いな人だと聞きますし、自分の娘が窃盗をして怒らないはずがありません。
ただ、彼女の場合は叱られても何故自分が叱られるのか分からないのでしょう。
父親が怒る理由も、学校側が怒る理由も分からない。そんな気がします。
分からないから何度も繰り返す。そんなところでしょう。
「学校中から嫌われているようですが、全く反省していない様子が他の生徒から更に反感を買っているようです」
「でしょうね」
負の連鎖。
悪循環ですね。
「ラース副団長は娘を更生させようと、毎日のよう厳しく指導しているようですが、聞く耳を持たないといいますか。男親だからでしょうか。娘との距離を測りかねているようです」
「親子とはいえ、数年間別々に暮らしていましたからね。いきなり父親から叱られても、エンビー嬢にとっては理解しがたいのでしょう。彼女は伯爵家にいた数年間で贅沢に慣れてしまっているわ。自然と目も肥えている。今の生活は不満しかないのでしょうね」
そうなってしまった責任は伯爵家にもある。
けれど、それを許したのは彼女の両親。
彼女の雇用契約書にもそのように書かれていた。
最終的に責任を取るのは製造者でしかできない。
無理矢理にでも矯正できればいいのだけれど。
難しいでしょうね。
窃盗だけで終わればいい。けれど、それ以上の問題も起こりかけている。
「最悪の事態にならなければいいのですが」
嫌な想像をしてしまう。
彼女の通う学校は多種多様の階級の方が通っています。
お金さえ払えば誰でも通えるということは、訳アリの子が多いということ。
大貴族の隠し子。
お家騒動の引き金になりかねない子供。
表沙汰にできない問題を持った子供。
当然、裏社会に身を置く子供も通っているでしょう。
裏社会のトップに立つ後継者とか。
「何事もなければいいのだけれど……」
問題行動を起こしては停学処分を食らっているとか。
「それは……また……」
「はい。エンビー嬢は手癖の悪いことで有名になっております。気に入った物は他者の物であっても平気で奪うとか」
「まぁ」
それは……また、何と言いますか。
「生徒から奪った物をそのまま自分の物にしているようです」
「なんて図々しい……」
彼女には常識が通じないのでしょうか?
親はどうしているのでしょう。
「ラース副団長はその都度叱っておられるようですが、あまり効果はないようです」
「そうでしょうね……」
エンビー嬢が叱られている姿は、なんとなく想像できます。
ラース副団長は正義感の強い曲がったことが嫌いな人だと聞きますし、自分の娘が窃盗をして怒らないはずがありません。
ただ、彼女の場合は叱られても何故自分が叱られるのか分からないのでしょう。
父親が怒る理由も、学校側が怒る理由も分からない。そんな気がします。
分からないから何度も繰り返す。そんなところでしょう。
「学校中から嫌われているようですが、全く反省していない様子が他の生徒から更に反感を買っているようです」
「でしょうね」
負の連鎖。
悪循環ですね。
「ラース副団長は娘を更生させようと、毎日のよう厳しく指導しているようですが、聞く耳を持たないといいますか。男親だからでしょうか。娘との距離を測りかねているようです」
「親子とはいえ、数年間別々に暮らしていましたからね。いきなり父親から叱られても、エンビー嬢にとっては理解しがたいのでしょう。彼女は伯爵家にいた数年間で贅沢に慣れてしまっているわ。自然と目も肥えている。今の生活は不満しかないのでしょうね」
そうなってしまった責任は伯爵家にもある。
けれど、それを許したのは彼女の両親。
彼女の雇用契約書にもそのように書かれていた。
最終的に責任を取るのは製造者でしかできない。
無理矢理にでも矯正できればいいのだけれど。
難しいでしょうね。
窃盗だけで終わればいい。けれど、それ以上の問題も起こりかけている。
「最悪の事態にならなければいいのですが」
嫌な想像をしてしまう。
彼女の通う学校は多種多様の階級の方が通っています。
お金さえ払えば誰でも通えるということは、訳アリの子が多いということ。
大貴族の隠し子。
お家騒動の引き金になりかねない子供。
表沙汰にできない問題を持った子供。
当然、裏社会に身を置く子供も通っているでしょう。
裏社会のトップに立つ後継者とか。
「何事もなければいいのだけれど……」
1,640
お気に入りに追加
3,323
あなたにおすすめの小説
婚約破棄?それならこの国を返して頂きます
Ruhuna
ファンタジー
大陸の西側に位置するアルティマ王国
500年の時を経てその国は元の国へと返り咲くために時が動き出すーーー
根暗公爵の娘と、笑われていたマーガレット・ウィンザーは婚約者であるナラード・アルティマから婚約破棄されたことで反撃を開始した
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
どうぞお好きに
音無砂月
ファンタジー
公爵家に生まれたスカーレット・ミレイユ。
王命で第二王子であるセルフと婚約することになったけれど彼が商家の娘であるシャーベットを囲っているのはとても有名な話だった。そのせいか、なかなか婚約話が進まず、あまり野心のない公爵家にまで縁談話が来てしまった。
【完結】数十分後に婚約破棄&冤罪を食らうっぽいので、野次馬と手を組んでみた
月白ヤトヒコ
ファンタジー
「レシウス伯爵令嬢ディアンヌ! 今ここで、貴様との婚約を破棄するっ!?」
高らかに宣言する声が、辺りに響き渡った。
この婚約破棄は数十分前に知ったこと。
きっと、『衆人環視の前で婚約破棄する俺、かっこいい!』とでも思っているんでしょうね。キモっ!
「婚約破棄、了承致しました。つきましては、理由をお伺いしても?」
だからわたくしは、すぐそこで知り合った野次馬と手を組むことにした。
「ふっ、知れたこと! 貴様は、わたしの愛するこの可憐な」
「よっ、まさかの自分からの不貞の告白!」
「憎いねこの色男!」
ドヤ顔して、なんぞ花畑なことを言い掛けた言葉が、飛んで来た核心的な野次に遮られる。
「婚約者を蔑ろにして育てた不誠実な真実の愛!」
「女泣かせたぁこのことだね!」
「そして、婚約者がいる男に擦り寄るか弱い女!」
「か弱いだぁ? 図太ぇ神経した厚顔女の間違いじゃぁねぇのかい!」
さあ、存分に野次ってもらうから覚悟して頂きますわ。
設定はふわっと。
『腐ったお姉様。伏してお願い奉りやがるから、是非とも助けろくださいっ!?』と、ちょっと繋りあり。『腐ったお姉様~』を読んでなくても大丈夫です。
何でも奪っていく妹が森まで押しかけてきた ~今更私の言ったことを理解しても、もう遅い~
秋鷺 照
ファンタジー
「お姉さま、それちょうだい!」
妹のアリアにそう言われ奪われ続け、果ては婚約者まで奪われたロメリアは、首でも吊ろうかと思いながら森の奥深くへ歩いて行く。そうしてたどり着いてしまった森の深層には屋敷があった。
ロメリアは屋敷の主に見初められ、捕らえられてしまう。
どうやって逃げ出そう……悩んでいるところに、妹が押しかけてきた。
【完結】そして、誰もいなくなった
杜野秋人
ファンタジー
「そなたは私の妻として、侯爵夫人として相応しくない!よって婚約を破棄する!」
愛する令嬢を傍らに声高にそう叫ぶ婚約者イグナシオに伯爵家令嬢セリアは誤解だと訴えるが、イグナシオは聞く耳を持たない。それどころか明らかに犯してもいない罪を挙げられ糾弾され、彼女は思わず彼に手を伸ばして取り縋ろうとした。
「触るな!」
だがその手をイグナシオは大きく振り払った。振り払われよろめいたセリアは、受け身も取れないまま仰向けに倒れ、頭を打って昏倒した。
「突き飛ばしたぞ」
「彼が手を上げた」
「誰か衛兵を呼べ!」
騒然となるパーティー会場。すぐさま会場警護の騎士たちに取り囲まれ、彼は「違うんだ、話を聞いてくれ!」と叫びながら愛人の令嬢とともに連行されていった。
そして倒れたセリアもすぐさま人が集められ運び出されていった。
そして誰もいなくなった。
彼女と彼と愛人と、果たして誰が悪かったのか。
これはとある悲しい、婚約破棄の物語である。
◆小説家になろう様でも公開しています。話数の関係上あちらの方が進みが早いです。
3/27、なろう版完結。あちらは全8話です。
3/30、小説家になろうヒューマンドラマランキング日間1位になりました!
4/1、完結しました。全14話。
「お姉様の赤ちゃん、私にちょうだい?」
サイコちゃん
恋愛
実家に妊娠を知らせた途端、妹からお腹の子をくれと言われた。姉であるイヴェットは自分の持ち物や恋人をいつも妹に奪われてきた。しかし赤ん坊をくれというのはあまりに酷過ぎる。そのことを夫に相談すると、彼は「良かったね! 家族ぐるみで育ててもらえるんだね!」と言い放った。妹と両親が異常であることを伝えても、夫は理解を示してくれない。やがて夫婦は離婚してイヴェットはひとり苦境へ立ち向かうことになったが、“医術と魔術の天才”である治療人アランが彼女に味方して――
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる