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29.伯爵夫人(母)side ~二人の娘~
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酷い。
酷いわ。
良い子だって思っていたのに。
あんなに可愛がっていたエンビーちゃんが本当は悪い子だったなんて。
天真爛漫で、いつも元気いっぱいで、お日様みたいなエンビーちゃんが。
とっても素直な子だったのに。
私の話しをキラキラした目で聞いてくれて、「おねえちゃま」って呼んでくれて、とってもとっても良い子だったエンビーちゃんが。
「酷いわ……酷いわ……」
あんなに幼い子なのに。
私、騙されてしまったの。こんな筈じゃなかった。
ユースティティアが病を克服して嬉しかった。
これから一緒に暮らせると知って本当に嬉しかった。
エンビーちゃんと姉妹のようになってくれると喜んでた。屋敷で一緒に遊んで、本当の姉妹のように過ごしていくのだと思っていたのに……。
「何がいけなかったの……?」
ユースティティアは年齢以上にしっかりしていた。
ユーノスや伯爵家の使用人達との関係は良好。
先代公爵夫妻との仲も良かった。
公爵家の人達と知らない間に交流していた。
しっかり者といっていいのかしら?
子供らしくなかった。
それが私には不満だったの。
退院して屋敷に戻って来た娘は母親の私を目掛けて走り寄ってくるものだとばかり思っていた。
健康になって目を輝かせて頬をバラ色に染めて、私に向かって抱き着いてくると。
そんな娘を優しく抱きしめ返す自分を想像していたのに。
……結果は違ったの。
抱きついてもくれない。
話しかけてもくれない。
淡々と戻ってきたことを報告するだけ。
どうして!?
なんでなの!
そんなの、母親として悲しいわ! 寂しいわ!
戻ってきた娘を力いっぱい抱きしめてあげたかったのに!
めいいっぱいユースティティアを甘やかしてあげたかった。
「なぜ?どうして?」
解らないわ……解らないのよ。
その後も不満は続いたわ。
ユースティティアは勉強好きで、ありとあらゆる分野を学びたがる。
その様子は子供のソレとはどうしても思えない。
どうやっても好きにはなれなかった。
『なんて賢いお嬢様なのでしょう!』
『本当に。素晴らしいです!』
『将来が楽しみですな』
家庭教師達はユースティティアを褒め称える。
それにも私は不満だった。
だってユースティティアはまだ子供よ?
子供は子供らしく遊びに興じればいいの。
無邪気に遊んでいれば良いのに。
子供らしくないのはおかしいわ!
何度、ユースティティアにそう言ったことか。
だけど、その度。
『伯爵家の娘として当然のことをしているだけですわ』
『お母様は、子供の本分は遊ぶこと、と申しますが、高位貴族の子女が勉学を疎かにしていい理由にはなりません』
『公爵家の血縁たる私は、他人よりも秀でていることが求められますのよ』
なんてことを!
言われた瞬間、私の頭は沸騰しそうだったわ!
どうして!?
なんでそんな酷いことを言うの!?
エンビーちゃんだったら、私にそんな酷いことは言わなかったわ!!
実の娘なのにまるで他人のよう。
可愛いはずなのに。
可愛がれない。
エンビーちゃんみたいに甘えてくれたらいいのに。
エンビーちゃんみたいに抱き着いてくれたらいいのに。
私が選んだ可愛いドレスを着て、私がコーディネートした髪型で、私に笑いかけてくれたらいいのに。
一緒に絵本を読んで、一緒にお茶をして。
「どうしてなの?」
ユースティティアは、私が選んだ物にはまったく興味を示さない。
私の趣味じゃないドレスや髪型ばかり。
「どうして?」
おかしいでしょう?
私の娘なのよ?
なんでなの!?
どうしてエンビーちゃんみたいにしてくれないの?
酷いわ。
良い子だって思っていたのに。
あんなに可愛がっていたエンビーちゃんが本当は悪い子だったなんて。
天真爛漫で、いつも元気いっぱいで、お日様みたいなエンビーちゃんが。
とっても素直な子だったのに。
私の話しをキラキラした目で聞いてくれて、「おねえちゃま」って呼んでくれて、とってもとっても良い子だったエンビーちゃんが。
「酷いわ……酷いわ……」
あんなに幼い子なのに。
私、騙されてしまったの。こんな筈じゃなかった。
ユースティティアが病を克服して嬉しかった。
これから一緒に暮らせると知って本当に嬉しかった。
エンビーちゃんと姉妹のようになってくれると喜んでた。屋敷で一緒に遊んで、本当の姉妹のように過ごしていくのだと思っていたのに……。
「何がいけなかったの……?」
ユースティティアは年齢以上にしっかりしていた。
ユーノスや伯爵家の使用人達との関係は良好。
先代公爵夫妻との仲も良かった。
公爵家の人達と知らない間に交流していた。
しっかり者といっていいのかしら?
子供らしくなかった。
それが私には不満だったの。
退院して屋敷に戻って来た娘は母親の私を目掛けて走り寄ってくるものだとばかり思っていた。
健康になって目を輝かせて頬をバラ色に染めて、私に向かって抱き着いてくると。
そんな娘を優しく抱きしめ返す自分を想像していたのに。
……結果は違ったの。
抱きついてもくれない。
話しかけてもくれない。
淡々と戻ってきたことを報告するだけ。
どうして!?
なんでなの!
そんなの、母親として悲しいわ! 寂しいわ!
戻ってきた娘を力いっぱい抱きしめてあげたかったのに!
めいいっぱいユースティティアを甘やかしてあげたかった。
「なぜ?どうして?」
解らないわ……解らないのよ。
その後も不満は続いたわ。
ユースティティアは勉強好きで、ありとあらゆる分野を学びたがる。
その様子は子供のソレとはどうしても思えない。
どうやっても好きにはなれなかった。
『なんて賢いお嬢様なのでしょう!』
『本当に。素晴らしいです!』
『将来が楽しみですな』
家庭教師達はユースティティアを褒め称える。
それにも私は不満だった。
だってユースティティアはまだ子供よ?
子供は子供らしく遊びに興じればいいの。
無邪気に遊んでいれば良いのに。
子供らしくないのはおかしいわ!
何度、ユースティティアにそう言ったことか。
だけど、その度。
『伯爵家の娘として当然のことをしているだけですわ』
『お母様は、子供の本分は遊ぶこと、と申しますが、高位貴族の子女が勉学を疎かにしていい理由にはなりません』
『公爵家の血縁たる私は、他人よりも秀でていることが求められますのよ』
なんてことを!
言われた瞬間、私の頭は沸騰しそうだったわ!
どうして!?
なんでそんな酷いことを言うの!?
エンビーちゃんだったら、私にそんな酷いことは言わなかったわ!!
実の娘なのにまるで他人のよう。
可愛いはずなのに。
可愛がれない。
エンビーちゃんみたいに甘えてくれたらいいのに。
エンビーちゃんみたいに抱き着いてくれたらいいのに。
私が選んだ可愛いドレスを着て、私がコーディネートした髪型で、私に笑いかけてくれたらいいのに。
一緒に絵本を読んで、一緒にお茶をして。
「どうしてなの?」
ユースティティアは、私が選んだ物にはまったく興味を示さない。
私の趣味じゃないドレスや髪型ばかり。
「どうして?」
おかしいでしょう?
私の娘なのよ?
なんでなの!?
どうしてエンビーちゃんみたいにしてくれないの?
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