27 / 54
27.副団長一家の評判1
しおりを挟む
フィデが調べたところによると、副団長の家庭は色んな人達の妬みを買っていたらしい。
家庭といっても、妻と娘の二人が妬みの対象だったらしく、伯爵家の庇護を喪ったエンビー嬢は、そういう人達の恰好の的だったということだ。
『幼い子供を利用して伯爵家に取り入っていたのが許せなかった』という声も、勿論ある。
『自分の夫の親戚だからって夫人が娘を売り込んだって話しよ』
『伯爵家の実子が大病で生死の境を彷徨っているとき、よくやるわ』
『大方、後釜を狙ってたんじゃない?伯爵家の実子が病死したら自分の娘を伯爵家の養女にして貰えるって算段よ。あの人、抜け目ないもの。絶対に狙ってたって!』
『頭の良い人だもんね。それくらい考えてたっておかしくないわ。副団長が平だった頃から知ってるけど、あの人、本当に付き合い悪いのよね。私は貴方達とは違うのよ、って態度が露骨なのよ。副団長は良い人なのにね』
『なんでまた、あの人と結婚したのかしら?確かに美人だけど、家事全般が壊滅的だって話しでしょう?』
などなど。
副団長夫人は元からあまり評判は良くなかったらしい。
『おまけに、娘を伯爵家にやって、自分は王子の乳母でしょ?抜擢されたって話しだけど怪しいわよ』
『あの人のことだから自分から売り込みに行ったんじゃない?頭の良い私は乳母に最適ですって』
『あはは。あり得そう!』
『あの人、子供を死産で亡くして鬱になってたって話しだけど、本当かな?その割には直ぐに立ち直ったぽいけど?』
『そういうフリをしたんじゃない?そっちの方が都合がいいって判断したのよ』
『え?どういうこと?』
『伯爵夫人に共感してもらえるでしょ』
『あ、そうか。そうよね。自分の子共の死まで利用する……あの人ならやりかねないわ』
『うん』
などなど。
副団長夫人がいかに計算高いかを力説するご婦人方が後を絶たない。
『考えてみたら副団長の娘さんも気の毒よね。母親に出世のダシにされて。娘さんが伯爵夫妻の寵愛を得たら、王子の乳母になった自分も伯爵家の後ろ盾を得られたって寸法よ。今頃、当てが外れて残念がってるんじゃない?』
『かもね。だから娘さんが問題起こしても家に帰ってこないのよ。利用価値が無くなったとか思ってそう』
『娘さんが荒れるのも無理ないわよね。小さい頃から母親のエゴに付き合わされてきたんだもの』
『でも、娘さんだって良い思いもしたんじゃない?伯爵家で贅沢に暮らしてきたって話じゃない。騎士団に伯爵夫人と来てたとき見たでしょ?高そうなドレスを着てたわよ。ここに戻ってきた荷物だって高そうなものが山ほどあったし』
『だからじゃない?あの娘さん、絶対にまともな感覚が身に付いてないわよ。今だって自分のことを伯爵令嬢だと勘違いしてるんでしょ?』
『娘さんからしたら伯爵家に養子にいったような感覚だったんじゃない?あの頃はまだ小さかったし』
『あー、なるほど。あるかもね』
などなど。
エンビー嬢に関する噂は、尽きることがないらしい。
それでも、エンビー嬢が問題を起こす度に、副団長を擁護する意見は多かった。
これが人徳の差というものだろう。
その分、副団長夫人の評判は落ちる一方だったので、嫌われぐあいはエンビー嬢の比ではない。
家庭といっても、妻と娘の二人が妬みの対象だったらしく、伯爵家の庇護を喪ったエンビー嬢は、そういう人達の恰好の的だったということだ。
『幼い子供を利用して伯爵家に取り入っていたのが許せなかった』という声も、勿論ある。
『自分の夫の親戚だからって夫人が娘を売り込んだって話しよ』
『伯爵家の実子が大病で生死の境を彷徨っているとき、よくやるわ』
『大方、後釜を狙ってたんじゃない?伯爵家の実子が病死したら自分の娘を伯爵家の養女にして貰えるって算段よ。あの人、抜け目ないもの。絶対に狙ってたって!』
『頭の良い人だもんね。それくらい考えてたっておかしくないわ。副団長が平だった頃から知ってるけど、あの人、本当に付き合い悪いのよね。私は貴方達とは違うのよ、って態度が露骨なのよ。副団長は良い人なのにね』
『なんでまた、あの人と結婚したのかしら?確かに美人だけど、家事全般が壊滅的だって話しでしょう?』
などなど。
副団長夫人は元からあまり評判は良くなかったらしい。
『おまけに、娘を伯爵家にやって、自分は王子の乳母でしょ?抜擢されたって話しだけど怪しいわよ』
『あの人のことだから自分から売り込みに行ったんじゃない?頭の良い私は乳母に最適ですって』
『あはは。あり得そう!』
『あの人、子供を死産で亡くして鬱になってたって話しだけど、本当かな?その割には直ぐに立ち直ったぽいけど?』
『そういうフリをしたんじゃない?そっちの方が都合がいいって判断したのよ』
『え?どういうこと?』
『伯爵夫人に共感してもらえるでしょ』
『あ、そうか。そうよね。自分の子共の死まで利用する……あの人ならやりかねないわ』
『うん』
などなど。
副団長夫人がいかに計算高いかを力説するご婦人方が後を絶たない。
『考えてみたら副団長の娘さんも気の毒よね。母親に出世のダシにされて。娘さんが伯爵夫妻の寵愛を得たら、王子の乳母になった自分も伯爵家の後ろ盾を得られたって寸法よ。今頃、当てが外れて残念がってるんじゃない?』
『かもね。だから娘さんが問題起こしても家に帰ってこないのよ。利用価値が無くなったとか思ってそう』
『娘さんが荒れるのも無理ないわよね。小さい頃から母親のエゴに付き合わされてきたんだもの』
『でも、娘さんだって良い思いもしたんじゃない?伯爵家で贅沢に暮らしてきたって話じゃない。騎士団に伯爵夫人と来てたとき見たでしょ?高そうなドレスを着てたわよ。ここに戻ってきた荷物だって高そうなものが山ほどあったし』
『だからじゃない?あの娘さん、絶対にまともな感覚が身に付いてないわよ。今だって自分のことを伯爵令嬢だと勘違いしてるんでしょ?』
『娘さんからしたら伯爵家に養子にいったような感覚だったんじゃない?あの頃はまだ小さかったし』
『あー、なるほど。あるかもね』
などなど。
エンビー嬢に関する噂は、尽きることがないらしい。
それでも、エンビー嬢が問題を起こす度に、副団長を擁護する意見は多かった。
これが人徳の差というものだろう。
その分、副団長夫人の評判は落ちる一方だったので、嫌われぐあいはエンビー嬢の比ではない。
1,773
お気に入りに追加
3,332
あなたにおすすめの小説
【完結】嫌われている...母様の命を奪った私を
紫宛
ファンタジー
※素人作品です。ご都合主義。R15は保険です※
3話構成、ネリス視点、父・兄視点、未亡人視点。
2話、おまけを追加します(ᴗ͈ˬᴗ͈⸝⸝)
いつも無言で、私に一切の興味が無いお父様。
いつも無言で、私に一切の興味が無いお兄様。
いつも暴言と暴力で、私を嫌っているお義母様
いつも暴言と暴力で、私の物を奪っていく義妹。
私は、血の繋がった父と兄に嫌われている……そう思っていたのに、違ったの?
私はいけにえ
七辻ゆゆ
ファンタジー
「ねえ姉さん、どうせ生贄になって死ぬのに、どうしてご飯なんて食べるの? そんな良いものを食べたってどうせ無駄じゃない。ねえ、どうして食べてるの?」
ねっとりと息苦しくなるような声で妹が言う。
私はそうして、一緒に泣いてくれた妹がもう存在しないことを知ったのだ。
****リハビリに書いたのですがダークすぎる感じになってしまって、暗いのが好きな方いらっしゃったらどうぞ。
大好きな母と縁を切りました。
むう子
ファンタジー
7歳までは家族円満愛情たっぷりの幸せな家庭で育ったナーシャ。
領地争いで父が戦死。
それを聞いたお母様は寝込み支えてくれたカルノス・シャンドラに親子共々心を開き再婚。
けれど妹が生まれて義父からの虐待を受けることに。
毎日母を想い部屋に閉じこもるナーシャに2年後の政略結婚が決定した。
けれどこの婚約はとても酷いものだった。
そんな時、ナーシャの生まれる前に亡くなった父方のおばあさまと契約していた精霊と出会う。
そこで今までずっと近くに居てくれたメイドの裏切りを知り……
死んだ妹そっくりの平民の所為で婚約破棄と勘当を言い渡されたけど片腹痛いわ!
サイコちゃん
恋愛
突然、死んだ妹マリアにそっくりな少女が男爵家を訪れた。男爵夫妻も、姉アメリアの婚約者ロイドも、その少女に惑わされる。しかしアメリアだけが、詐欺師だと見抜いていた。やがて詐欺師はアメリアを陥れ、婚約破棄と勘当へ導く。これでアメリアは後ろ盾もなく平民へ落ちるはずだった。しかし彼女は圧倒的な切り札を持っていたのだ――
悪役令嬢は蚊帳の外です。
豆狸
ファンタジー
「グローリア。ここにいるシャンデは隣国ツヴァイリングの王女だ。隣国国王の愛妾殿の娘として生まれたが、王妃によって攫われ我がシュティーア王国の貧民街に捨てられた。侯爵令嬢でなくなった貴様には、これまでのシャンデに対する暴言への不敬罪が……」
「いえ、違います」
「おまえを愛することはない!」と言ってやったのに、なぜ無視するんだ!
七辻ゆゆ
ファンタジー
俺を見ない、俺の言葉を聞かない、そして触れられない。すり抜ける……なぜだ?
俺はいったい、どうなっているんだ。
真実の愛を取り戻したいだけなのに。
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
【完結】そして、誰もいなくなった
杜野秋人
ファンタジー
「そなたは私の妻として、侯爵夫人として相応しくない!よって婚約を破棄する!」
愛する令嬢を傍らに声高にそう叫ぶ婚約者イグナシオに伯爵家令嬢セリアは誤解だと訴えるが、イグナシオは聞く耳を持たない。それどころか明らかに犯してもいない罪を挙げられ糾弾され、彼女は思わず彼に手を伸ばして取り縋ろうとした。
「触るな!」
だがその手をイグナシオは大きく振り払った。振り払われよろめいたセリアは、受け身も取れないまま仰向けに倒れ、頭を打って昏倒した。
「突き飛ばしたぞ」
「彼が手を上げた」
「誰か衛兵を呼べ!」
騒然となるパーティー会場。すぐさま会場警護の騎士たちに取り囲まれ、彼は「違うんだ、話を聞いてくれ!」と叫びながら愛人の令嬢とともに連行されていった。
そして倒れたセリアもすぐさま人が集められ運び出されていった。
そして誰もいなくなった。
彼女と彼と愛人と、果たして誰が悪かったのか。
これはとある悲しい、婚約破棄の物語である。
◆小説家になろう様でも公開しています。話数の関係上あちらの方が進みが早いです。
3/27、なろう版完結。あちらは全8話です。
3/30、小説家になろうヒューマンドラマランキング日間1位になりました!
4/1、完結しました。全14話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる