15 / 76
15.エンビーside 〜本物の令嬢〜
しおりを挟む
ロディおねえちゃまの子供。
その存在は知っていた。
病気で入院しているって。
でもずっと会ったことがなかった。
それなのに……。
ユースティティアと名乗った少女。
初めて会うロディおねえちゃまの子は、おねえちゃまにちっとも似ていなかった。
黒髪の巻き毛は、何だか不気味に感じた。その瞳も、深い緑色で、まるでガラス玉のようだった。
冷たい陰気さを感じる。
おねえちゃまは、全体的にふわふわした印象だから、まるで逆。似ているのは髪質ぐらい。
ピンクブロンドの髪に、同じピンクの瞳。
まるで絵本に出てくるお姫様みたい。
抱きしめてくれる腕は、とても柔らかくて、いい匂いがする。
春のお花の香り。
『娘が帰ってくるの。きっとエンビーちゃんと仲良くなれるわ』
『エンビーちゃんはお姉さんね』
勘違いしていたの。
おねえちゃまに似た女の子だとばかり。
こんなにも似ていないなんて想像もしていなかった。
『ユースティティアは父親に似ているのよ』
そういえば、プライド伯爵様と同じ髪の色。目も同じ。顔立ちだって……。
ユーノス・プライド伯爵。
おねえちゃまの旦那様。
お父さんよりずっと上品な人。
でもちょっと苦手。
どこが?って聞かれると困るんだけど。なんとなく。
そう。
なんとなく苦手な人。
その伯爵様に似ているせいか、私は彼女にどう接していいのかわからなかった。
一緒に勉強するようになっても変わらなかった。
『まあ!ユースティティア様はもう二ヶ国語をマスターなさったのですね。素晴らしい』
『流石はグリード公爵家。お孫様もどうように優秀とは……』
先生達は、彼女ばかり褒める。
私は一度も褒められたことがないのに……。
おべっかばかりの先生達にうんざりした。
『エンビー嬢、数学の問題は解けましたか?』
『え?まだ……』
『ユースティティア様は終わっていますよ』
だからなんだって言うの?
問題を解くのに時間なんて関係ないじゃない。本当に意地悪なんだから!
『年下のユースティティア様は解けて、エンビー嬢は出来ないのですか?』
仕方ないじゃない。
難しいんだもの。
もっと簡単な内容ならすぐに解けるわよ!
『ユースティティア様は既に修了しているというのに……。エンビー嬢との合同授業では、ユースティティア様の授業に支障がでるな』
『ユースティティア様は優秀ですから。エンビー嬢に合わせるのは気の毒というものです』
『五歳も年下の子供に負かされるとは……』
『エンビー嬢は真面目に授業を受けませんからね。こうなるのは予想がついていましたよ』
『比べるのもおこがましいな』
ひどい!ひどい!ひどい!!
私は頑張ったわ!
なのに、誰も認めてくれない。
なんで認めないのよ!こんなのおかしい!
皆、あの子のことばっかり贔屓して!
私はこんなに頑張っているのに!
あの子もあの子よ!
私が仲良くしてあげようとしたのに!
お母さんからの手紙には書いてあったもの。
仲良くしてあげるようにって。
お父さんだって言ってた。
ずっと病気だった子だって。
可哀想な子だって分ったから。
あの子と仲良くできないのは私のせいじゃない。
あの子が私と距離を取っているせいよ!
私だけじゃない。
おねえちゃまとだって距離を取ってる。
線を引いている。
家族なのにどうして?
『貴女は私の家族ではありませんよ』
どうしてそんなこと言うの?
どうしてそんな目で私を見るの?
分からない。あの子は、いつも氷のような目で私を見る。
胸が苦しくなるの。
だって、おねえちゃまが言ったのよ。
私達は家族でしょ……?
その存在は知っていた。
病気で入院しているって。
でもずっと会ったことがなかった。
それなのに……。
ユースティティアと名乗った少女。
初めて会うロディおねえちゃまの子は、おねえちゃまにちっとも似ていなかった。
黒髪の巻き毛は、何だか不気味に感じた。その瞳も、深い緑色で、まるでガラス玉のようだった。
冷たい陰気さを感じる。
おねえちゃまは、全体的にふわふわした印象だから、まるで逆。似ているのは髪質ぐらい。
ピンクブロンドの髪に、同じピンクの瞳。
まるで絵本に出てくるお姫様みたい。
抱きしめてくれる腕は、とても柔らかくて、いい匂いがする。
春のお花の香り。
『娘が帰ってくるの。きっとエンビーちゃんと仲良くなれるわ』
『エンビーちゃんはお姉さんね』
勘違いしていたの。
おねえちゃまに似た女の子だとばかり。
こんなにも似ていないなんて想像もしていなかった。
『ユースティティアは父親に似ているのよ』
そういえば、プライド伯爵様と同じ髪の色。目も同じ。顔立ちだって……。
ユーノス・プライド伯爵。
おねえちゃまの旦那様。
お父さんよりずっと上品な人。
でもちょっと苦手。
どこが?って聞かれると困るんだけど。なんとなく。
そう。
なんとなく苦手な人。
その伯爵様に似ているせいか、私は彼女にどう接していいのかわからなかった。
一緒に勉強するようになっても変わらなかった。
『まあ!ユースティティア様はもう二ヶ国語をマスターなさったのですね。素晴らしい』
『流石はグリード公爵家。お孫様もどうように優秀とは……』
先生達は、彼女ばかり褒める。
私は一度も褒められたことがないのに……。
おべっかばかりの先生達にうんざりした。
『エンビー嬢、数学の問題は解けましたか?』
『え?まだ……』
『ユースティティア様は終わっていますよ』
だからなんだって言うの?
問題を解くのに時間なんて関係ないじゃない。本当に意地悪なんだから!
『年下のユースティティア様は解けて、エンビー嬢は出来ないのですか?』
仕方ないじゃない。
難しいんだもの。
もっと簡単な内容ならすぐに解けるわよ!
『ユースティティア様は既に修了しているというのに……。エンビー嬢との合同授業では、ユースティティア様の授業に支障がでるな』
『ユースティティア様は優秀ですから。エンビー嬢に合わせるのは気の毒というものです』
『五歳も年下の子供に負かされるとは……』
『エンビー嬢は真面目に授業を受けませんからね。こうなるのは予想がついていましたよ』
『比べるのもおこがましいな』
ひどい!ひどい!ひどい!!
私は頑張ったわ!
なのに、誰も認めてくれない。
なんで認めないのよ!こんなのおかしい!
皆、あの子のことばっかり贔屓して!
私はこんなに頑張っているのに!
あの子もあの子よ!
私が仲良くしてあげようとしたのに!
お母さんからの手紙には書いてあったもの。
仲良くしてあげるようにって。
お父さんだって言ってた。
ずっと病気だった子だって。
可哀想な子だって分ったから。
あの子と仲良くできないのは私のせいじゃない。
あの子が私と距離を取っているせいよ!
私だけじゃない。
おねえちゃまとだって距離を取ってる。
線を引いている。
家族なのにどうして?
『貴女は私の家族ではありませんよ』
どうしてそんなこと言うの?
どうしてそんな目で私を見るの?
分からない。あの子は、いつも氷のような目で私を見る。
胸が苦しくなるの。
だって、おねえちゃまが言ったのよ。
私達は家族でしょ……?
1,790
お気に入りに追加
3,356
あなたにおすすめの小説
ローザとフラン ~奪われた側と奪った側~
水無月あん
恋愛
私は伯爵家の娘ローザ。同じ年の侯爵家のダリル様と婚約している。が、ある日、私とはまるで性格が違う従姉妹のフランを預かることになった。距離が近づく二人に心が痛む……。
婚約者を奪われた側と奪った側の二人の少女のお話です。
5話で完結の短いお話です。
いつもながら、ゆるい設定のご都合主義です。
お暇な時にでも、お気軽に読んでいただければ幸いです。よろしくお願いします。
妹と婚約者が結婚したけど、縁を切ったから知りません
編端みどり
恋愛
妹は何でもわたくしの物を欲しがりますわ。両親、使用人、ドレス、アクセサリー、部屋、食事まで。
最後に取ったのは婚約者でした。
ありがとう妹。初めて貴方に取られてうれしいと思ったわ。
君を愛す気はない?どうぞご自由に!あなたがいない場所へ行きます。
みみぢあん
恋愛
貧乏なタムワース男爵家令嬢のマリエルは、初恋の騎士セイン・ガルフェルト侯爵の部下、ギリス・モリダールと結婚し初夜を迎えようとするが… 夫ギリスの暴言に耐えられず、マリエルは神殿へ逃げこんだ。
マリエルは身分違いで告白をできなくても、セインを愛する自分が、他の男性と結婚するのは間違いだと、自立への道をあゆもうとする。
そんなマリエルをセインは心配し… マリエルは愛するセインの優しさに苦悩する。
※ざまぁ系メインのお話ではありません、ご注意を😓
一体だれが悪いのか?それはわたしと言いました
LIN
恋愛
ある日、国民を苦しめて来たという悪女が処刑された。身分を笠に着て、好き勝手にしてきた第一王子の婚約者だった。理不尽に虐げられることもなくなり、ようやく平和が戻ったのだと、人々は喜んだ。
その後、第一王子は自分を支えてくれる優しい聖女と呼ばれる女性と結ばれ、国王になった。二人の優秀な側近に支えられて、三人の子供達にも恵まれ、幸せしか無いはずだった。
しかし、息子である第一王子が嘗ての悪女のように不正に金を使って豪遊していると報告を受けた国王は、王族からの追放を決めた。命を取らない事が温情だった。
追放されて何もかもを失った元第一王子は、王都から離れた。そして、その時の出会いが、彼の人生を大きく変えていくことになる…
※いきなり処刑から始まりますのでご注意ください。
【完結】その約束は果たされる事はなく
かずきりり
恋愛
貴方を愛していました。
森の中で倒れていた青年を献身的に看病をした。
私は貴方を愛してしまいました。
貴方は迎えに来ると言っていたのに…叶わないだろうと思いながらも期待してしまって…
貴方を諦めることは出来そうもありません。
…さようなら…
-------
※ハッピーエンドではありません
※3話完結となります
※こちらの作品はカクヨムにも掲載しています
【完結】婚約を解消して進路変更を希望いたします
宇水涼麻
ファンタジー
三ヶ月後に卒業を迎える学園の食堂では卒業後の進路についての話題がそここで繰り広げられている。
しかし、一つのテーブルそんなものは関係ないとばかりに四人の生徒が戯れていた。
そこへ美しく気品ある三人の女子生徒が近付いた。
彼女たちの卒業後の進路はどうなるのだろうか?
中世ヨーロッパ風のお話です。
HOTにランクインしました。ありがとうございます!
ファンタジーの週間人気部門で1位になりました。みなさまのおかげです!
ありがとうございます!
強欲な妹が姉の全てを奪おうと思ったら全てを失った話
桃瀬さら
恋愛
幼い頃、母が言った。
「よく見ていなさい。将来、全て貴方の物になるのよ」
母の言葉は本当だった。姉の周りから人はいなくなり、みんな私に優しくしてくれる。
何不自由ない生活、宝石、ドレスを手に入れた。惨めな姉に残ったのは婚約者だけ。
私は姉の全てを奪いたかった。
それなのに、どうして私はこんな目にあっているの?
姉の全てを奪うつもりが全てを失った妹の話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる