伯爵夫人のお気に入り

つくも茄子

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11.グリード公爵家2

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「ロディーテさんは相変わらずのようね」

「……はい」

「ふふ、ユーノスも彼女には甘いのだから。あの少女を以前と同様の扱いに注意を促さないなんて、仕方のない子」

 祖父母の危惧は当たった。
 母はあれだけ叱責されながら依然とエンビー嬢を「娘扱い」のまま。

「私も注意を促してはいるのですが、改める様子はございません」

「まぁ。困った人ね」

 本当に困っているのか疑わしくなるくらい祖母の表情は穏やかだった。
 母には何を言っても無駄だと、ある意味諦めているのかもしれない。

 そしてそれは当たっている。

 どれだけ注意しても「ユースティティアは意地悪だわ」「あなたまで公爵家の人達と同じことを言うのね」と、さめざめ泣きだす始末。
 そんな母の姿を見てエンビー嬢は「を虐めないで!」と私を批難する始末。

 勘違いも甚だしい。

 エンビー嬢に庇われ上機嫌な母も母だ。
 彼女の我が儘を「子供のすることだから」「小さい子は元気が一番よ」と訳の分からないことを言っては容認しているのだから。
 無駄に甘やかす母に、これはダメだと諦めた。

 お母様、貴方はエンビー嬢の“母親”ではありません。

 実の娘より他人の子供を可愛がる言動の数々。
 これを他者が見ればどう思うか。
 それを全く理解していない母に匙を投げたくなるのも仕方のないことだろう。

 分不相応な格好、本来の地位に見合わない暮らし。

 お母様は彼女をどうしたいのでしょうね?
 最近はお茶会にエンビー嬢を連れ歩いていると聞きます。

「随分と注目されているわ」

 いい意味での注目ではありません。
 どう考えても悪い意味での注目でしょう。

メイド見習いエンビー嬢を美しく着飾らせる遊びが流行っているのかと、聞かれてしまったわ」

「嫌味ですね」

「そうなの」

「なんと答えたのですか?」

「芸術家のインスピレーションを邪魔したくなくて、と答えておいたわ」

「それは……また……返答に困る嫌味返しですね」

「ええ。でも嘘は言っていないわ。ユーノスのインスピレーションを最も刺激させるのは昔も今もロディーテさんだけ。そのことは周知の事実だもの」

「そうですね」

 父は人物画を描くことは無い。
 唯一の例外は、お母様だけ。
 母をモデルとして描いた絵は数多くあるが、それ以外は皆無。

 お祖母様はそれを逆手に取った。

「だから、答えは間違っていないわ」

 ニッコリと笑う祖母に、私は苦笑するしかなかった。
 基本、我が儘で自己中心的な両親。
 それが許される立場にいたから今まで問題視されてこなかった。

 公爵家は静観の構えだ。

 母が奔放で我が儘な言動を繰り返しても、父がそれを容認していても、公爵家が動くことはない。
 何かの思惑があるのか。それとも……。
 プライド伯爵令嬢としては知りたくはありますが、相手にする勇気はありません。あまりにも分が悪すぎます。

 モヤモヤとした気持ちを抱えたまま半年が過ぎ、私は七歳となりました。



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