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20.グーシャ国王陛下side
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カぺル公爵家は十二年前、領地で未曾有の災害が起き、多くの民が飢えや疫病に苦しんだ。
復興の遅れも重なったのだろう。公爵家は困窮した。
その為に公爵家は嫡男ウツケット・カぺルの婚約者にシャーロット・カールストン侯爵令嬢を打診した。
カールストン侯爵家は領地持ちの貴族ではないが、高官を多数輩出している。そのうえ、貴族では珍しく商売を生業としている家系だ。昔から資産家としても有名だった。
おまけにカールストン侯爵の嫡男は優秀だ。
容姿も美しいし、国王である私の側近にあがってもおかしくないほどの逸材。
カールストン侯爵家の援助で持ち直したカぺル公爵家。
このままいけば、ローズは間違いなく私の正妃になっていた。
元々、実家の困窮が問題だったのだ。
ウツケットが駆け落ちなどせねば、公爵家は今も援助を続けられたはずだ。
いいや、ウツケットが浮気などせず誠実だったならシャーロットは側妃にならなかった。そのままウツケットと結婚していた。そうなっていれば全てが丸く収まっていた。
…………言い訳だ。
そうなっていたとしてもローズの罪はいずれ明らかにされていただろう。
ローズに嫌がらせを受けた妃はなにもシャーロットだけではない。
ラヴリーへの嫌がらせの数々もローズの指示だったのだ。
父上から聞かされた内容に衝撃を受けずにはいられなかった。
私は、ローズの言葉を信じて、裏を調べもせずにシャーロットを糾弾したのだ。
父上のあの怒りは当然だ。
信じていた。
ローズのことを信じていたんだ。
元々、ローズはワガママな性格だった。長い付き合いだ。そんなところも妹のように可愛いとすら思っていた。
愚かとしかいいようがない。
実際は、可愛いワガママどころの話じゃなかったのだ。
ローズは、自分の目的の為ならどんな悪辣なことでもする女だった。
気に入らない人間を排除することくらい、ローズにとっては簡単だった。
遠回しな指示をだして誰かが自ら邪魔者を排除するように仕向けていた。
そうやって、自分の手を汚すことなく邪魔者を排除し、自分が欲しいものは他人から奪っていたらしい。
私の前ではそんな素振りは見せなかった。
父上から、「お前の前では常に猫を被っていた。わからなかったのか?」と言われ、愕然とした。
一部ではローズの非道な振る舞いは有名だったらしい。
それでも被害者が声に出さなかったのはローズが「公爵令嬢」であり「上級妃」だったからだ。
彼女は国でも頂点に近い高貴な女性なのだ。
ローズを敵に回せば、国王である私の逆鱗に触れるとわかっていて、誰が声をあげる? しかも相手は正妃候補筆頭だ。
そんなローズに「イジメられた」「貶められた」と訴えたところで信じてもらえないだろう。むしろ訴えた方が「悪」になる状況だ。しかもこれといった証拠がない。ただの言いがかりにしかならない。
誰だってそんな火中の栗は拾いたくない。
ローズの悪辣な行為を知っていた者は、見て見ぬふりをしていた。
公爵家にいた頃はうっぷん晴らしとして侍女を折檻していた時期もあったそうだ。「一時期は侍女の入れ替わりが激しかったそうです」と先ほど侍従に教えられた。
気付かなかった。
ローズを信じていた。
可愛い妹分だと思っていた。
大切な幼馴染だった。
なのに何故……。いや、理由などとうにわかっている。
私が愚かだっただけだ。
シャーロットの名誉を回復させなければならない。
彼女を貶めた妃達は全員後宮から追放させる。
彼女たちの実家にも相応の罰を与える。
罪を償わなければならない……私も含めて。
せめて、子供たちだけは罪の対象にならないようにしなければ……。
父と母の罪を子供が背負う必要はない。
復興の遅れも重なったのだろう。公爵家は困窮した。
その為に公爵家は嫡男ウツケット・カぺルの婚約者にシャーロット・カールストン侯爵令嬢を打診した。
カールストン侯爵家は領地持ちの貴族ではないが、高官を多数輩出している。そのうえ、貴族では珍しく商売を生業としている家系だ。昔から資産家としても有名だった。
おまけにカールストン侯爵の嫡男は優秀だ。
容姿も美しいし、国王である私の側近にあがってもおかしくないほどの逸材。
カールストン侯爵家の援助で持ち直したカぺル公爵家。
このままいけば、ローズは間違いなく私の正妃になっていた。
元々、実家の困窮が問題だったのだ。
ウツケットが駆け落ちなどせねば、公爵家は今も援助を続けられたはずだ。
いいや、ウツケットが浮気などせず誠実だったならシャーロットは側妃にならなかった。そのままウツケットと結婚していた。そうなっていれば全てが丸く収まっていた。
…………言い訳だ。
そうなっていたとしてもローズの罪はいずれ明らかにされていただろう。
ローズに嫌がらせを受けた妃はなにもシャーロットだけではない。
ラヴリーへの嫌がらせの数々もローズの指示だったのだ。
父上から聞かされた内容に衝撃を受けずにはいられなかった。
私は、ローズの言葉を信じて、裏を調べもせずにシャーロットを糾弾したのだ。
父上のあの怒りは当然だ。
信じていた。
ローズのことを信じていたんだ。
元々、ローズはワガママな性格だった。長い付き合いだ。そんなところも妹のように可愛いとすら思っていた。
愚かとしかいいようがない。
実際は、可愛いワガママどころの話じゃなかったのだ。
ローズは、自分の目的の為ならどんな悪辣なことでもする女だった。
気に入らない人間を排除することくらい、ローズにとっては簡単だった。
遠回しな指示をだして誰かが自ら邪魔者を排除するように仕向けていた。
そうやって、自分の手を汚すことなく邪魔者を排除し、自分が欲しいものは他人から奪っていたらしい。
私の前ではそんな素振りは見せなかった。
父上から、「お前の前では常に猫を被っていた。わからなかったのか?」と言われ、愕然とした。
一部ではローズの非道な振る舞いは有名だったらしい。
それでも被害者が声に出さなかったのはローズが「公爵令嬢」であり「上級妃」だったからだ。
彼女は国でも頂点に近い高貴な女性なのだ。
ローズを敵に回せば、国王である私の逆鱗に触れるとわかっていて、誰が声をあげる? しかも相手は正妃候補筆頭だ。
そんなローズに「イジメられた」「貶められた」と訴えたところで信じてもらえないだろう。むしろ訴えた方が「悪」になる状況だ。しかもこれといった証拠がない。ただの言いがかりにしかならない。
誰だってそんな火中の栗は拾いたくない。
ローズの悪辣な行為を知っていた者は、見て見ぬふりをしていた。
公爵家にいた頃はうっぷん晴らしとして侍女を折檻していた時期もあったそうだ。「一時期は侍女の入れ替わりが激しかったそうです」と先ほど侍従に教えられた。
気付かなかった。
ローズを信じていた。
可愛い妹分だと思っていた。
大切な幼馴染だった。
なのに何故……。いや、理由などとうにわかっている。
私が愚かだっただけだ。
シャーロットの名誉を回復させなければならない。
彼女を貶めた妃達は全員後宮から追放させる。
彼女たちの実家にも相応の罰を与える。
罪を償わなければならない……私も含めて。
せめて、子供たちだけは罪の対象にならないようにしなければ……。
父と母の罪を子供が背負う必要はない。
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