【完結】元妃は多くを望まない

つくも茄子

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18.ダニエル(兄)side

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 早朝、先王陛下が王宮に戻られた。
 真偽のほどを確かめるために。
 父上も一緒だ。

 その結果、現国王とその側近はまとめて謹慎処分を受けた。
 上級妃であるシャーロット・カールストン侯爵令嬢に、知らなかったとはいえ冤罪を着せ己の側近に下賜したのだ。
 シャーロットに冤罪を被せた妃達は軒並み後宮から追い出された。
 首謀者は上級妃だ。それを止めもせずに追随した他の妃達も同罪と判断され、それぞれの実家に戻された。

 国王陛下の寵妃である下級妃に対する嫌がらせ。
 それがシャーロットに着せられた罪状であったが、下級妃よりもシャーロットのほうがより悪質な嫌がらせを受けていたことが判明した。

「今の陛下は無能だな」

 思わず呟いてしまった私は悪くないと思う。
 だってそうだろう?
 シャーロットは被害者だ。なのに加害者にされたうえ、まともに調べもしなかったというではないか。

 首謀者が幼馴染だったから?
 公爵令嬢だったから?
 親しくしていたから?

 だからなんだ!!
 そんなくだらない理由で無実のシャーロットを罪人扱いするんじゃない!!


 国王陛下は、妃達のに気付かなかった。
 この時点で、王としての資質を疑われても仕方ない。
 実際に他の貴族達からそのように見られている。
 国王陛下は、『無能』の烙印を押された。

 それでも退位させないのは、今現在、他国との戦争の兆しもなく、国内の情勢も落ち着いているからだ。
 隣国と緊張状態にあり、いつ開戦となるか分からない状況だったなら、とっくに更迭されているだろうに……。

 あとは、まだ若い。
 再教育すればどうにかなると判断されたためだ。
 まだやり直せると――――


 王家から莫大な慰謝料がシャーロットに支払われた。
 先の国王自ら、シャーロットに謝罪してくださった。
 後宮から追い出された妃達。
 彼女達の実家もまた、シャーロットに多額の賠償金を払わなければならなくなった。
 なかには爵位を取り上げられた家もあるようだ。

 自業自得だ、馬鹿め。

 こうして、シャーロットは侯爵家に戻って来たわけだが、問題はここから先にある。

 シャーロットの婚姻が無効にならなかった。

 王命での婚姻。
 既に神殿に婚姻届けを出している。

 その二点を踏まえて、婚姻無効は三年後。

 つまり、三年待たないと離縁できない。

 ふざけている。



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