【完結】元妃は多くを望まない

つくも茄子

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16.ダニエル(兄)side

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 私、ダニエル・プレストン子爵の妹、シャーロットは兄という欲目をぬきにしても出来た令嬢だ。
 美しく気品があり、頭もよい。

 ただ、男運がない。
 男運が悪いというべきか。

 ウツケット・カぺル公爵子息。
 あいつのせいだ。

 困窮する公爵家を援助する名目で、我がカールストン侯爵家との縁組が決まった。
 建国王の王弟を祖とする名門公爵家を潰す訳にはいかないと、王家から打診されたのだ。今は亡き王姉が嫁いだ家でもある。王家としても没落していくのを無視するわけにはいかなかったのだろう。

 なのにだ!
 あの男は!よりにもよってシャーロットの侍女に手を出すとは!!
 侍女も侍女だ!
 自分の主人の婚約者と関係を持つとは!言語道断だ!!


 しかも――――


『僕たちは真実の愛で結ばれているんだ!』

『申し訳ございません!お嬢様!でも私とウツケット様は愛し合っているんです!』

『そうだ!二人の愛の結晶も授かったんだ!祝福してくれ!』

 などと宣った。
 ふざけるな!!!
 カールストン侯爵家の顔に泥を塗りやがって。

 不貞した挙句、妊娠。
 悪びれもせず報告してくるアホ二人の神経を疑う。

 ウツケットは理解しているのか?この婚約の意味を。カぺル公爵家の負債を。
 この婚約がなくなれば公爵家は没落するしかない。
 侍女もだ。
 まさか自分が公爵夫人になれると思っているのではないだろうな?
 いかに子爵令嬢とはいえ、没落貴族だ。食うに困るほど困窮したからこそ我が家で働いているのだろう?そのことを忘れたのか?


 恩を仇で返すとはこのことだ!
  人としての道理はないのか!? 
 呆れて物も言えないとはこのことだ。
 私は二人を切り捨てることにした。
 これには両親とシャーロットも賛成した。










『私の監督不行届だ。申し訳ない』

 謝罪に訪れたカぺル公爵は、そう言って頭を下げた。
 数年前、カぺル公爵領を襲った災害。その爪痕は酷く今も復興できていない。

 復興するには莫大な金と年月を要するだろう。

 この婚約は当然、破棄だ。
 それもカぺル公爵家有責で。

 唯一の跡取り息子をカぺル公爵は廃嫡にした。
 家からも追い出された。
 侍女もまた家から縁を切られた。
 主人の婚約者と関係を持ったのだ。当然だな。娘を家に迎え入れたら最後、他の子供達にまで害が及ぶと懸念したそうだ。

 貴族の生活しか知らない男女のカップル。
 まともな暮らしができるはずもない。

 元侍女の方は平民同然の暮らしを実家でおくっていたと聞く。
 だが本当に平民同然の暮らしぶりなのかは疑問だ。
 まあ、ある程度は順応できるだろう。女はな。男は知らんが。どうなるかなど想像できる。



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