9 / 24
9.後宮7
しおりを挟む
お茶会を欠席した腹いせか、それとも別の意図があるのかは分からないけれど、どうやら私は後宮の妃たちから無視されているらしい。
まあ、侍女長から教えてもらうまで全く気付かなかったけど。気が付けというほうが無茶というものだわ。後宮入りした新参者の妃にそれを理解しろと言うのも難しい。
だって、私、上級妃よ?
離宮で暮らしているのよ?
他の妃たちから無視されているといわれても、だからなに?って感じだった。
中級妃や下級妃とは違う。
彼女達はある意味で共同生活だから無視されたら辛いのかもしれない。
個別の宮殿持ちの妃は言われるまで気付かないと思う。そういうものだもの。
後宮入りして二週間。
当たり前のようにグーシャ陛下が離宮を訪れた。夜伽にだ。
……
…………沈黙がいたい。
陛下はさっきから黙ったまま。
寝室に入ったあとは、寝酒のワインを飲み続けている。
この人なにしに来たのかしら?
「陛下、私、先に休ませていただきます」
「え!?」
「おやすみなさいませ」
「ま、待て待て、シャーロット」
さっさと寝てしまおうとベッドに向かう私をグーシャ国王陛下が慌てて止めた。
「なんですか?」
「いや……その……」
「……なにか?」
「そなたは、私に抱かれたくないのか?」
なにを言っているんだか。
夜伽にきて酒だけ飲んでいる男のいうセリフではない。
嫌々きてやったといわんばかりの態度で、好き好んで来ているわけではないことをアピールされてどうしろというのか。それともあれかな?嫌な女を相手にしても縋られたいタイプ?めんどうな……。
「特に抱かれたいとは思いません」
「!!」
私の返答がショックだったのか、国王陛下は手に持っていたグラスを落とした。
ワインが絨毯に染みを作る。
……明日、洗濯係の侍女たちが悲鳴を上げそうね。
「陛下と閨を共にして懐妊などした日にはローズ妃が黙ってはいないでしょう。私もローズ妃の不興を買ってまで陛下の寵愛を欲しいとは思いません」
「……なにを言っている?ローズはそんな狭量な女ではない」
「そうでしょうか。ローズ妃は序列に厳しい方です。順序を間違えてはならぬと私に教えてくださったのはローズ妃ですよ?」
「…‥そうか」
いまいち納得できないといった表情を浮かべていますが、事実なんだから仕方ない。
まあ、ポッと出の妃よりも、長い付き合いで王女を産んでいるローズの方に信をおいている陛下の気持ちも分かる。
彼女は陛下が思っているような女性ではない。
陛下は後宮の噂を知らないのかしら?
陛下の子供を産むのはローズ妃のみ。
彼女以外の妃は何故か子をなさない。
正確には死産や流産が相次いでいる。それが全て偶然なわけがない。
その後も陛下は夜伽に訪れるものの、私に指一本触れることはなかった。
まあ、侍女長から教えてもらうまで全く気付かなかったけど。気が付けというほうが無茶というものだわ。後宮入りした新参者の妃にそれを理解しろと言うのも難しい。
だって、私、上級妃よ?
離宮で暮らしているのよ?
他の妃たちから無視されているといわれても、だからなに?って感じだった。
中級妃や下級妃とは違う。
彼女達はある意味で共同生活だから無視されたら辛いのかもしれない。
個別の宮殿持ちの妃は言われるまで気付かないと思う。そういうものだもの。
後宮入りして二週間。
当たり前のようにグーシャ陛下が離宮を訪れた。夜伽にだ。
……
…………沈黙がいたい。
陛下はさっきから黙ったまま。
寝室に入ったあとは、寝酒のワインを飲み続けている。
この人なにしに来たのかしら?
「陛下、私、先に休ませていただきます」
「え!?」
「おやすみなさいませ」
「ま、待て待て、シャーロット」
さっさと寝てしまおうとベッドに向かう私をグーシャ国王陛下が慌てて止めた。
「なんですか?」
「いや……その……」
「……なにか?」
「そなたは、私に抱かれたくないのか?」
なにを言っているんだか。
夜伽にきて酒だけ飲んでいる男のいうセリフではない。
嫌々きてやったといわんばかりの態度で、好き好んで来ているわけではないことをアピールされてどうしろというのか。それともあれかな?嫌な女を相手にしても縋られたいタイプ?めんどうな……。
「特に抱かれたいとは思いません」
「!!」
私の返答がショックだったのか、国王陛下は手に持っていたグラスを落とした。
ワインが絨毯に染みを作る。
……明日、洗濯係の侍女たちが悲鳴を上げそうね。
「陛下と閨を共にして懐妊などした日にはローズ妃が黙ってはいないでしょう。私もローズ妃の不興を買ってまで陛下の寵愛を欲しいとは思いません」
「……なにを言っている?ローズはそんな狭量な女ではない」
「そうでしょうか。ローズ妃は序列に厳しい方です。順序を間違えてはならぬと私に教えてくださったのはローズ妃ですよ?」
「…‥そうか」
いまいち納得できないといった表情を浮かべていますが、事実なんだから仕方ない。
まあ、ポッと出の妃よりも、長い付き合いで王女を産んでいるローズの方に信をおいている陛下の気持ちも分かる。
彼女は陛下が思っているような女性ではない。
陛下は後宮の噂を知らないのかしら?
陛下の子供を産むのはローズ妃のみ。
彼女以外の妃は何故か子をなさない。
正確には死産や流産が相次いでいる。それが全て偶然なわけがない。
その後も陛下は夜伽に訪れるものの、私に指一本触れることはなかった。
904
お気に入りに追加
2,178
あなたにおすすめの小説

【完結】この運命を受け入れましょうか
なか
恋愛
「君のようは妃は必要ない。ここで廃妃を宣言する」
自らの夫であるルーク陛下の言葉。
それに対して、ヴィオラ・カトレアは余裕に満ちた微笑みで答える。
「承知しました。受け入れましょう」
ヴィオラにはもう、ルークへの愛など残ってすらいない。
彼女が王妃として支えてきた献身の中で、平民生まれのリアという女性に入れ込んだルーク。
みっともなく、情けない彼に対して恋情など抱く事すら不快だ。
だが聖女の素養を持つリアを、ルークは寵愛する。
そして貴族達も、莫大な益を生み出す聖女を妃に仕立てるため……ヴィオラへと無実の罪を被せた。
あっけなく信じるルークに呆れつつも、ヴィオラに不安はなかった。
これからの顛末も、打開策も全て知っているからだ。
前世の記憶を持ち、ここが物語の世界だと知るヴィオラは……悲運な運命を受け入れて彼らに意趣返す。
ふりかかる不幸を全て覆して、幸せな人生を歩むため。
◇◇◇◇◇
設定は甘め。
不安のない、さっくり読める物語を目指してます。
良ければ読んでくだされば、嬉しいです。

婚約破棄されなかった者たち
ましゅぺちーの
恋愛
とある学園にて、高位貴族の令息五人を虜にした一人の男爵令嬢がいた。
令息たちは全員が男爵令嬢に本気だったが、結局彼女が選んだのはその中で最も地位の高い第一王子だった。
第一王子は許嫁であった公爵令嬢との婚約を破棄し、男爵令嬢と結婚。
公爵令嬢は嫌がらせの罪を追及され修道院送りとなった。
一方、選ばれなかった四人は当然それぞれの婚約者と結婚することとなった。
その中の一人、侯爵令嬢のシェリルは早々に夫であるアーノルドから「愛することは無い」と宣言されてしまい……。
ヒロインがハッピーエンドを迎えたその後の話。

思い出してしまったのです
月樹《つき》
恋愛
同じ姉妹なのに、私だけ愛されない。
妹のルルだけが特別なのはどうして?
婚約者のレオナルド王子も、どうして妹ばかり可愛がるの?
でもある時、鏡を見て思い出してしまったのです。
愛されないのは当然です。
だって私は…。

彼女にも愛する人がいた
まるまる⭐️
恋愛
既に冷たくなった王妃を見つけたのは、彼女に食事を運んで来た侍女だった。
「宮廷医の見立てでは、王妃様の死因は餓死。然も彼が言うには、王妃様は亡くなってから既に2、3日は経過しているだろうとの事でした」
そう宰相から報告を受けた俺は、自分の耳を疑った。
餓死だと? この王宮で?
彼女は俺の従兄妹で隣国ジルハイムの王女だ。
俺の背中を嫌な汗が流れた。
では、亡くなってから今日まで、彼女がいない事に誰も気付きもしなかったと言うのか…?
そんな馬鹿な…。信じられなかった。
だがそんな俺を他所に宰相は更に告げる。
「亡くなった王妃様は陛下の子を懐妊されておりました」と…。
彼女がこの国へ嫁いで来て2年。漸く子が出来た事をこんな形で知るなんて…。
俺はその報告に愕然とした。

今さら救いの手とかいらないのですが……
カレイ
恋愛
侯爵令嬢オデットは学園の嫌われ者である。
それもこれも、子爵令嬢シェリーシアに罪をなすりつけられ、公衆の面前で婚約破棄を突きつけられたせい。
オデットは信じてくれる友人のお陰で、揶揄されながらもそれなりに楽しい生活を送っていたが……
「そろそろ許してあげても良いですっ」
「あ、結構です」
伸ばされた手をオデットは払い除ける。
許さなくて良いので金輪際関わってこないで下さいと付け加えて。
※全19話の短編です。

【完結】キズモノになった私と婚約破棄ですか?別に構いませんがあなたが大丈夫ですか?
なか
恋愛
「キズモノのお前とは婚約破棄する」
顔にできた顔の傷も治らぬうちに第二王子のアルベルト様にそう宣告される
大きな傷跡は残るだろう
キズモノのとなった私はもう要らないようだ
そして彼が持ち出した条件は婚約破棄しても身体を寄越せと下卑た笑いで告げるのだ
そんな彼を殴りつけたのはとある人物だった
このキズの謎を知ったとき
アルベルト王子は永遠に後悔する事となる
永遠の後悔と
永遠の愛が生まれた日の物語
君を愛す気はない?どうぞご自由に!あなたがいない場所へ行きます。
みみぢあん
恋愛
貧乏なタムワース男爵家令嬢のマリエルは、初恋の騎士セイン・ガルフェルト侯爵の部下、ギリス・モリダールと結婚し初夜を迎えようとするが… 夫ギリスの暴言に耐えられず、マリエルは神殿へ逃げこんだ。
マリエルは身分違いで告白をできなくても、セインを愛する自分が、他の男性と結婚するのは間違いだと、自立への道をあゆもうとする。
そんなマリエルをセインは心配し… マリエルは愛するセインの優しさに苦悩する。
※ざまぁ系メインのお話ではありません、ご注意を😓

婚約解消は君の方から
みなせ
恋愛
私、リオンは“真実の愛”を見つけてしまった。
しかし、私には産まれた時からの婚約者・ミアがいる。
私が愛するカレンに嫌がらせをするミアに、
嫌がらせをやめるよう呼び出したのに……
どうしてこうなったんだろう?
2020.2.17より、カレンの話を始めました。
小説家になろうさんにも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる