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7.後宮5
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後宮入りして初めての茶会。
しかも因縁のある相手からとなると少しばかり、いや、かなり気が重くなる。
「大丈夫ですか?シャーロット様」
「あまり大丈夫じゃないわね。あのローズ・カペルからの招待だもの」
「過激な方ですからね……」
リコリスは心配そうに眉根を寄せた。
先日は一応表面上取り繕っていたものの、弟との婚約破棄をいまだに根にもっているのがわかる。
自分の弟が全面的に悪かったとはいえ、やはり思うところがあるのだろう。
「はぁ……憂鬱だわ」
ため息をつきつつ、とりあえずは侍女長に相談をすることにしたのだった。
ただし、これには侍女長もそうとう頭を悩ませることになった。
「困ったことになりました。よりにもよって“紅薔薇の髪飾り”を付けての参加となると……」
「なにかあるの?」
いったい何事かと尋ねると、侍女長は言いづらそうに口を開く。
「実は……この『紅薔薇茶会』というのは、ローズ妃のお住まいである『赤の離宮』の嘗ての呼び名なのです」
「そういえば、昔は上級妃は三人だったわね。その時の名残りかしら?」
「はい。以前は『黄の離宮』がございました。三つの離宮はそれぞれの『色』に合わせた薔薇をシンボルとしていました」
侍女長の言葉になるほどと納得する。
だからこの離宮は至る所に白薔薇が飾られているのか、と今更ながら納得した。
そしてこれはおそらく、いや間違いなく、自分に対する宣戦布告だろう。白薔薇の離宮の主人が紅薔薇の飾りを付けることはつまりそういうことだ。喧嘩売られているのだ。……面倒臭いことこの上ない! どうしてこうなったのかと頭を抱えたくなった。
参加してもしなくても面倒な事になりそうだと、思わず遠い目をしてしまう。
かといって馬鹿正直に紅薔薇の髪飾りをつけて参加すれば、それこそローズの思う壺。これから先ずっと彼女の風下に立たなければならなくなるのは目に見えている。それだけは絶対に嫌だ。
そんな思いもあって、お茶会の欠席を申し出ることにした。
「お断りしますわ」
「しかし……」
「招待されたとはいえ、欠席してはいけないというわけではありませんし、まして彼女は上級妃。正妃ではありませんもの」
渋る侍女長にきっぱりと断る。
わざわざこちらが折れなければならない理由はない。
これで彼女が正妃なら話は別だが、残念ながらそうではない。地位的には同じ上級妃。ここは譲るべきではないと思う。譲ったら最後ともいうけれど……。
「シャーロット様はそれでよろしいのですか?」
「ええ、構いませんわ」
それ以外に良い案が思いつかない。
行く、という選択肢は皆無。
「それならば」と、侍女長は頷いたのだった。
しかも因縁のある相手からとなると少しばかり、いや、かなり気が重くなる。
「大丈夫ですか?シャーロット様」
「あまり大丈夫じゃないわね。あのローズ・カペルからの招待だもの」
「過激な方ですからね……」
リコリスは心配そうに眉根を寄せた。
先日は一応表面上取り繕っていたものの、弟との婚約破棄をいまだに根にもっているのがわかる。
自分の弟が全面的に悪かったとはいえ、やはり思うところがあるのだろう。
「はぁ……憂鬱だわ」
ため息をつきつつ、とりあえずは侍女長に相談をすることにしたのだった。
ただし、これには侍女長もそうとう頭を悩ませることになった。
「困ったことになりました。よりにもよって“紅薔薇の髪飾り”を付けての参加となると……」
「なにかあるの?」
いったい何事かと尋ねると、侍女長は言いづらそうに口を開く。
「実は……この『紅薔薇茶会』というのは、ローズ妃のお住まいである『赤の離宮』の嘗ての呼び名なのです」
「そういえば、昔は上級妃は三人だったわね。その時の名残りかしら?」
「はい。以前は『黄の離宮』がございました。三つの離宮はそれぞれの『色』に合わせた薔薇をシンボルとしていました」
侍女長の言葉になるほどと納得する。
だからこの離宮は至る所に白薔薇が飾られているのか、と今更ながら納得した。
そしてこれはおそらく、いや間違いなく、自分に対する宣戦布告だろう。白薔薇の離宮の主人が紅薔薇の飾りを付けることはつまりそういうことだ。喧嘩売られているのだ。……面倒臭いことこの上ない! どうしてこうなったのかと頭を抱えたくなった。
参加してもしなくても面倒な事になりそうだと、思わず遠い目をしてしまう。
かといって馬鹿正直に紅薔薇の髪飾りをつけて参加すれば、それこそローズの思う壺。これから先ずっと彼女の風下に立たなければならなくなるのは目に見えている。それだけは絶対に嫌だ。
そんな思いもあって、お茶会の欠席を申し出ることにした。
「お断りしますわ」
「しかし……」
「招待されたとはいえ、欠席してはいけないというわけではありませんし、まして彼女は上級妃。正妃ではありませんもの」
渋る侍女長にきっぱりと断る。
わざわざこちらが折れなければならない理由はない。
これで彼女が正妃なら話は別だが、残念ながらそうではない。地位的には同じ上級妃。ここは譲るべきではないと思う。譲ったら最後ともいうけれど……。
「シャーロット様はそれでよろしいのですか?」
「ええ、構いませんわ」
それ以外に良い案が思いつかない。
行く、という選択肢は皆無。
「それならば」と、侍女長は頷いたのだった。
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