5 / 24
5.後宮3
しおりを挟む
白の離宮に入った翌日。
シャーロットは、リコリスが入れてくれた紅茶を飲んでいるところに来客が現れた。
「先触れもなくやってというの?」
「はい」
「誰かしら?」
「赤の離宮の主でございます」
来客の招待は、もう一人の上級妃。ローズ・カペル公爵令嬢。
「お久しぶりね、シャーロット」
「ええ、お久しぶりです。……ローズ様……」
笑顔で挨拶をしてくるローズに対して私もまた笑顔で対応する。内心では早く帰れと思っているけれど、そんなことは口にはできない。なにせここは後宮。まあ、後宮でなくてもいわないけれど。
ローズは先に後宮入りした先輩であり子供を産んだ妃。
同じ上級妃とはいえ、新参者のシャーロットとでは立場が違う。
特に、正妃不在の今はローズが後宮の女主といっても過言ではないだろう。失礼な態度をとってはならない存在だった。
ローズ上級妃。
王家の血を引く名門カペル公爵家の令嬢。
腰まである赤い髪にルビーのような瞳が印象的で、名前のとおり大輪のバラのように華やかな美しさを持つ方。スタイルもよく出るところが出て引っ込むところはしっかり引っ込んでいる見事な体型をしている。
そして華美を好む傾向にあった。彼女はとても派手好きだ。
今も、黄色のドレスに身を包み、胸元や裾にたくさんの宝石を身に着けている。その輝きは派手というよりもギラギラとした下品さがあるのに、彼女の持つ生来の華やかさがそれらを補って余りある魅力になっているのだから不思議だ。
「急にごめんなさいね。どうしても貴女とお話ししたかったのよ」
「……私とですか?」
ニコニコと笑ってはいるものの、どこか胡散臭さを感じる笑顔だ。
そもそも、今までほとんど接点などなかった相手である。それなのにどうして突然会いに来たのか。しかもこんな早朝から……。
なにか裏があるのではないかと勘繰ってしまうのも仕方ないだろう。
そんな心情をおくびにも出さず、表面上はにこやかに対応するしかない。
突然の来客をもてなす用意をしなければ。
もっとも、侍女長に伝えておけばお茶菓子などはすぐに準備されるので手間はあまりかからない。
控えていたリコリスに侍女長に伝えてくるように指示をだす。侍女長のことだからローズの突然の訪問を既に知っているはず。
それにしても、本当に何の用事かしら?
まさか世間話をしにきたわけでもあるまい。
ローズの目的は一体何なのか。
それが分からない限り、警戒を解くわけにはいかない。
シャーロットは、リコリスが入れてくれた紅茶を飲んでいるところに来客が現れた。
「先触れもなくやってというの?」
「はい」
「誰かしら?」
「赤の離宮の主でございます」
来客の招待は、もう一人の上級妃。ローズ・カペル公爵令嬢。
「お久しぶりね、シャーロット」
「ええ、お久しぶりです。……ローズ様……」
笑顔で挨拶をしてくるローズに対して私もまた笑顔で対応する。内心では早く帰れと思っているけれど、そんなことは口にはできない。なにせここは後宮。まあ、後宮でなくてもいわないけれど。
ローズは先に後宮入りした先輩であり子供を産んだ妃。
同じ上級妃とはいえ、新参者のシャーロットとでは立場が違う。
特に、正妃不在の今はローズが後宮の女主といっても過言ではないだろう。失礼な態度をとってはならない存在だった。
ローズ上級妃。
王家の血を引く名門カペル公爵家の令嬢。
腰まである赤い髪にルビーのような瞳が印象的で、名前のとおり大輪のバラのように華やかな美しさを持つ方。スタイルもよく出るところが出て引っ込むところはしっかり引っ込んでいる見事な体型をしている。
そして華美を好む傾向にあった。彼女はとても派手好きだ。
今も、黄色のドレスに身を包み、胸元や裾にたくさんの宝石を身に着けている。その輝きは派手というよりもギラギラとした下品さがあるのに、彼女の持つ生来の華やかさがそれらを補って余りある魅力になっているのだから不思議だ。
「急にごめんなさいね。どうしても貴女とお話ししたかったのよ」
「……私とですか?」
ニコニコと笑ってはいるものの、どこか胡散臭さを感じる笑顔だ。
そもそも、今までほとんど接点などなかった相手である。それなのにどうして突然会いに来たのか。しかもこんな早朝から……。
なにか裏があるのではないかと勘繰ってしまうのも仕方ないだろう。
そんな心情をおくびにも出さず、表面上はにこやかに対応するしかない。
突然の来客をもてなす用意をしなければ。
もっとも、侍女長に伝えておけばお茶菓子などはすぐに準備されるので手間はあまりかからない。
控えていたリコリスに侍女長に伝えてくるように指示をだす。侍女長のことだからローズの突然の訪問を既に知っているはず。
それにしても、本当に何の用事かしら?
まさか世間話をしにきたわけでもあるまい。
ローズの目的は一体何なのか。
それが分からない限り、警戒を解くわけにはいかない。
679
お気に入りに追加
2,266
あなたにおすすめの小説
【完結】この運命を受け入れましょうか
なか
恋愛
「君のようは妃は必要ない。ここで廃妃を宣言する」
自らの夫であるルーク陛下の言葉。
それに対して、ヴィオラ・カトレアは余裕に満ちた微笑みで答える。
「承知しました。受け入れましょう」
ヴィオラにはもう、ルークへの愛など残ってすらいない。
彼女が王妃として支えてきた献身の中で、平民生まれのリアという女性に入れ込んだルーク。
みっともなく、情けない彼に対して恋情など抱く事すら不快だ。
だが聖女の素養を持つリアを、ルークは寵愛する。
そして貴族達も、莫大な益を生み出す聖女を妃に仕立てるため……ヴィオラへと無実の罪を被せた。
あっけなく信じるルークに呆れつつも、ヴィオラに不安はなかった。
これからの顛末も、打開策も全て知っているからだ。
前世の記憶を持ち、ここが物語の世界だと知るヴィオラは……悲運な運命を受け入れて彼らに意趣返す。
ふりかかる不幸を全て覆して、幸せな人生を歩むため。
◇◇◇◇◇
設定は甘め。
不安のない、さっくり読める物語を目指してます。
良ければ読んでくだされば、嬉しいです。
アリシアの恋は終わったのです【完結】
ことりちゃん
恋愛
昼休みの廊下で、アリシアはずっとずっと大好きだったマークから、いきなり頬を引っ叩かれた。
その瞬間、アリシアの恋は終わりを迎えた。
そこから長年の虚しい片想いに別れを告げ、新しい道へと歩き出すアリシア。
反対に、後になってアリシアの想いに触れ、遅すぎる行動に出るマーク。
案外吹っ切れて楽しく過ごす女子と、どうしようもなく後悔する残念な男子のお話です。
ーーーーー
12話で完結します。
よろしくお願いします(´∀`)
【完結】側妃は愛されるのをやめました
なか
恋愛
「君ではなく、彼女を正妃とする」
私は、貴方のためにこの国へと貢献してきた自負がある。
なのに……彼は。
「だが僕は、ラテシアを見捨てはしない。これから君には側妃になってもらうよ」
私のため。
そんな建前で……側妃へと下げる宣言をするのだ。
このような侮辱、恥を受けてなお……正妃を求めて抗議するか?
否。
そのような恥を晒す気は無い。
「承知いたしました。セリム陛下……私は側妃を受け入れます」
側妃を受けいれた私は、呼吸を挟まずに言葉を続ける。
今しがた決めた、たった一つの決意を込めて。
「ですが陛下。私はもう貴方を支える気はありません」
これから私は、『捨てられた妃』という汚名でなく、彼を『捨てた妃』となるために。
華々しく、私の人生を謳歌しよう。
全ては、廃妃となるために。
◇◇◇
設定はゆるめです。
読んでくださると嬉しいです!
王子は婚約破棄を泣いて詫びる
tartan321
恋愛
最愛の妹を失った王子は婚約者のキャシーに復讐を企てた。非力な王子ではあったが、仲間の協力を取り付けて、キャシーを王宮から追い出すことに成功する。
目的を達成し安堵した王子の前に突然死んだ妹の霊が現れた。
「お兄さま。キャシー様を3日以内に連れ戻して!」
存亡をかけた戦いの前に王子はただただ無力だった。
王子は妹の言葉を信じ、遥か遠くの村にいるキャシーを訪ねることにした……。
愛されなかった公爵令嬢のやり直し
ましゅぺちーの
恋愛
オルレリアン王国の公爵令嬢セシリアは、誰からも愛されていなかった。
母は幼い頃に亡くなり、父である公爵には無視され、王宮の使用人達には憐れみの眼差しを向けられる。
婚約者であった王太子と結婚するが夫となった王太子には冷遇されていた。
そんなある日、セシリアは王太子が寵愛する愛妾を害したと疑われてしまう。
どうせ処刑されるならと、セシリアは王宮のバルコニーから身を投げる。
死ぬ寸前のセシリアは思う。
「一度でいいから誰かに愛されたかった。」と。
目が覚めた時、セシリアは12歳の頃に時間が巻き戻っていた。
セシリアは決意する。
「自分の幸せは自分でつかみ取る!」
幸せになるために奔走するセシリア。
だがそれと同時に父である公爵の、婚約者である王太子の、王太子の愛妾であった男爵令嬢の、驚くべき真実が次々と明らかになっていく。
小説家になろう様にも投稿しています。
タイトル変更しました!大幅改稿のため、一部非公開にしております。
七年間の婚約は今日で終わりを迎えます
hana
恋愛
公爵令嬢エミリアが十歳の時、第三王子であるロイとの婚約が決まった。しかし婚約者としての生活に、エミリアは不満を覚える毎日を過ごしていた。そんな折、エミリアは夜会にて王子から婚約破棄を宣言される。
【完結】白い結婚はあなたへの導き
白雨 音
恋愛
妹ルイーズに縁談が来たが、それは妹の望みでは無かった。
彼女は姉アリスの婚約者、フィリップと想い合っていると告白する。
何も知らずにいたアリスは酷くショックを受ける。
先方が承諾した事で、アリスの気持ちは置き去りに、婚約者を入れ換えられる事になってしまった。
悲しみに沈むアリスに、夫となる伯爵は告げた、「これは白い結婚だ」と。
運命は回り始めた、アリスが辿り着く先とは… ◇異世界:短編16話《完結しました》
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる