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番外編~ダフネス男爵家の崩壊~
58.ダフネス男爵家長男side
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王女様に不敬を働いて妹は追放処分を受けた。
男爵領も何もかも取り上げられた。ま、当然だわな。命があるだけ儲けもんだ。
それを理解していないのが母さんとじいちゃん。妹だ。
いや……普通に考えて分かるだろ?
王族だぞ?
この国のトップに君臨する人達だぞ?
文句なんて言えないだろ。
父さんは俺に爵位を譲って隠居してた。どうやら国を出るらしい。連れて行ったのは家令ひとり。まさか俺に爵位を譲って、離婚するとは母さんも思わなかったらしく唖然としてた。
子供二人は成人済み。
爵位も譲った。
父さんからすると、母さんと夫婦していく理由はない。メリットもないしな。母さんはそのことを理解していなかった。俺は馬鹿だけどそれくらい分かる。
さて、これからどうするか。
じいちゃんは金貸しとは別に違う仕事をしているらしい。
まっとうな商売じゃない。
俺に宛がわれた婚約者の令嬢、彼女は普通の令嬢じゃない。俺の勘だけど……。
ここを出て行こうかな。
爵位は後から国に返上してもお咎めはないだろう。
冒険者になるのもいいかも。
他国で平民として暮らすのもありだな。
「という訳で、俺、家を出て行くよ」
「そうですか……残念です」
「そう?」
「はい」
なんだろ?
自分の婚約者なのにまともに話すのが家を出るときって……。
「ところで、いい仕事があるのですが、ご紹介しましょうか?」
「いや、それはいい」
「よろしいのですか?」
「ああ、貴女の紹介は怖そうだ」
「至って普通の仕事ですよ?」
「そういう事を言うのに限ってまともじゃないって相場が決まってるんだよ」
「ふふ……そうですね。でも、お金は稼げますよ?」
「いや、いい」
「やりがいもあります」
「俺、そういうの求めてないんで」
というか……この令嬢、さっきから笑ってばかりで本心が読めない。気味が悪いな。綺麗なだけに余計にそう感じるのかも?
「俺は自由に生きるから……」
「残念ですね。貴方には才能がありそうですのに」
「才能?そんなこと言われての初めてだよ」
「そうですか?」
「ああ」
「観察眼がとても鋭い。見かけの割に意外と人の動きを見て判断しています。自分の事を客観的にみられるところもポイントが高いです。大抵の人は自分を客観的にみることはできませんから」
「そりゃどうも」
褒め言葉として受け取っておく。
「気が向いたらいつでも来て下さい。歓迎します」
「行かないさ」
「そうですか?」
クスクス笑う彼女。
こうして、俺は生まれ育った男爵領をでた。
その後、母さんとじいちゃんが捕まった。
妹?とっくの昔に嫁に行ったさ。
今頃、別のところに嫁に行ったことを知ったけどな。
男爵領も何もかも取り上げられた。ま、当然だわな。命があるだけ儲けもんだ。
それを理解していないのが母さんとじいちゃん。妹だ。
いや……普通に考えて分かるだろ?
王族だぞ?
この国のトップに君臨する人達だぞ?
文句なんて言えないだろ。
父さんは俺に爵位を譲って隠居してた。どうやら国を出るらしい。連れて行ったのは家令ひとり。まさか俺に爵位を譲って、離婚するとは母さんも思わなかったらしく唖然としてた。
子供二人は成人済み。
爵位も譲った。
父さんからすると、母さんと夫婦していく理由はない。メリットもないしな。母さんはそのことを理解していなかった。俺は馬鹿だけどそれくらい分かる。
さて、これからどうするか。
じいちゃんは金貸しとは別に違う仕事をしているらしい。
まっとうな商売じゃない。
俺に宛がわれた婚約者の令嬢、彼女は普通の令嬢じゃない。俺の勘だけど……。
ここを出て行こうかな。
爵位は後から国に返上してもお咎めはないだろう。
冒険者になるのもいいかも。
他国で平民として暮らすのもありだな。
「という訳で、俺、家を出て行くよ」
「そうですか……残念です」
「そう?」
「はい」
なんだろ?
自分の婚約者なのにまともに話すのが家を出るときって……。
「ところで、いい仕事があるのですが、ご紹介しましょうか?」
「いや、それはいい」
「よろしいのですか?」
「ああ、貴女の紹介は怖そうだ」
「至って普通の仕事ですよ?」
「そういう事を言うのに限ってまともじゃないって相場が決まってるんだよ」
「ふふ……そうですね。でも、お金は稼げますよ?」
「いや、いい」
「やりがいもあります」
「俺、そういうの求めてないんで」
というか……この令嬢、さっきから笑ってばかりで本心が読めない。気味が悪いな。綺麗なだけに余計にそう感じるのかも?
「俺は自由に生きるから……」
「残念ですね。貴方には才能がありそうですのに」
「才能?そんなこと言われての初めてだよ」
「そうですか?」
「ああ」
「観察眼がとても鋭い。見かけの割に意外と人の動きを見て判断しています。自分の事を客観的にみられるところもポイントが高いです。大抵の人は自分を客観的にみることはできませんから」
「そりゃどうも」
褒め言葉として受け取っておく。
「気が向いたらいつでも来て下さい。歓迎します」
「行かないさ」
「そうですか?」
クスクス笑う彼女。
こうして、俺は生まれ育った男爵領をでた。
その後、母さんとじいちゃんが捕まった。
妹?とっくの昔に嫁に行ったさ。
今頃、別のところに嫁に行ったことを知ったけどな。
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