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番外編~ダフネス男爵家の崩壊~
56.ダフネス男爵side
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次女のルシアは後妻と高利貸しが甘やかしたせいで、ワガママで傲慢な娘に育った。
自分の思い通りにならないと癇癪を起こす、そんな子になってしまった。以前なら注意していた私だが、エリカが居なくなり、跡取りを息子に変更してからは子供達にさほど興味を持っていなかった。
だから次女がどんな粗相をしようと気にもとめなかった。
一応、男爵家の子供達だ。
望めば王立学園に入学できる。
二人の子供達は当たり前のように王立学園に入学して卒業した。成績は壊滅的だったが、補講で卒業はできた。息子は跡取り教育を嫌々ながらこなしている。ルシアは卒業後、王宮の侍女になった。女官と違って侍女には試験制度はない。身元と保証人が確かなら採用される。
あのワガママ娘が侍女の仕事などできるのかと驚いた。
人に頭を下げることを嫌がる子だ。まともに仕事ができるとは思えなかった。
やらかして帰って来た時は、「ああ、やはりな」と思った。
だが、やらかした内容は違った。
王族に無礼を働いたと聞き、卒倒しそうになった。
王宮の侍従から説明を受けた。
なんでもルシアは第一王女殿下の侍女として働いていたそうだが、王女殿下が新任の護衛騎士に暴言と暴力を振るわれても庇うこともせず立ち尽くしていたらしい。更に調べると、本来、ルシアは王女殿下の侍女にはなれなかったにも拘わらずどういう訳か侍女に選ばれていた。王宮人事に不正があった可能性が出てきたと言うのだ。
しかもルシアと一部の侍女達は王女殿下の持ち物を勝手に持ち出して売買していた。
証拠もある以上、言い逃れはできない。
「第一王女殿下は令嬢に王族への接触禁止命令を発動なさいました。また、ダフネス男爵家の領地没収ならびに王都への十年間の出入りを禁止する」
「承知いたしました」
これは恩情だ。
王族に対してこれほどまでの無礼を働いて命があることが奇跡に近い。本来なら処刑されても文句は言えない。
ルシアが王宮でやらかしたことが事細かに記載された書類を受け取った。
同情の余地はない。
後妻は「ご再考を!」と叫んでいるが、これ以上の温情はない。
二日後、私は爵位を息子に譲り、家令と二人で隠居することにした。
「旦那様を一人にできません」
最後まで苦労をかけそうだ。
ダフネス男爵家の者はこの国でまともに生きていくことはできないだろう。
私は家令と共に明日国を立つ。
行き先は決まっていない。
風の吹くまま気の向くままに生きていくつもりだ。
半年後、遠い異国の地で王国の犯罪組織が一斉に摘発された事を新聞で知る事になった。
大々的な組織犯罪摘発だったため、新聞に大きく取り上げられていた。
記事を読み進めていくと、捕まった犯罪者の中に後妻がしきりにエリカに縁談を勧めていた商人がいた。
取り調べで商家の不正が暴かれ、芋づる式に他の悪事も発覚したらしい。
最近、七番目の妻が亡くなって葬儀を執り行ったばかりで、妻達の不審死の件についても追及していた。
「旦那様、これを見てください」
家令が示したのは後妻の名前だ。
驚いたことに後妻と高利貸しも関係者として揃って逮捕されていた。
息子の名前はなかった。
捕まらなかったということは逃げたのだな。
「如何致しますか?」
「放っておけばいい。私達にはもう関係ないからな」
「はい」
「それはそうと、この茶葉は売れるか?」
「旦那様、本当に商いをなさるのですか」
「ああ」
「不安です」
「そのためのお前だろう?」
「ヤレヤレ」
隠居生活は気楽だが暇だ。
気晴らしに茶屋でもやるかな。
自分の思い通りにならないと癇癪を起こす、そんな子になってしまった。以前なら注意していた私だが、エリカが居なくなり、跡取りを息子に変更してからは子供達にさほど興味を持っていなかった。
だから次女がどんな粗相をしようと気にもとめなかった。
一応、男爵家の子供達だ。
望めば王立学園に入学できる。
二人の子供達は当たり前のように王立学園に入学して卒業した。成績は壊滅的だったが、補講で卒業はできた。息子は跡取り教育を嫌々ながらこなしている。ルシアは卒業後、王宮の侍女になった。女官と違って侍女には試験制度はない。身元と保証人が確かなら採用される。
あのワガママ娘が侍女の仕事などできるのかと驚いた。
人に頭を下げることを嫌がる子だ。まともに仕事ができるとは思えなかった。
やらかして帰って来た時は、「ああ、やはりな」と思った。
だが、やらかした内容は違った。
王族に無礼を働いたと聞き、卒倒しそうになった。
王宮の侍従から説明を受けた。
なんでもルシアは第一王女殿下の侍女として働いていたそうだが、王女殿下が新任の護衛騎士に暴言と暴力を振るわれても庇うこともせず立ち尽くしていたらしい。更に調べると、本来、ルシアは王女殿下の侍女にはなれなかったにも拘わらずどういう訳か侍女に選ばれていた。王宮人事に不正があった可能性が出てきたと言うのだ。
しかもルシアと一部の侍女達は王女殿下の持ち物を勝手に持ち出して売買していた。
証拠もある以上、言い逃れはできない。
「第一王女殿下は令嬢に王族への接触禁止命令を発動なさいました。また、ダフネス男爵家の領地没収ならびに王都への十年間の出入りを禁止する」
「承知いたしました」
これは恩情だ。
王族に対してこれほどまでの無礼を働いて命があることが奇跡に近い。本来なら処刑されても文句は言えない。
ルシアが王宮でやらかしたことが事細かに記載された書類を受け取った。
同情の余地はない。
後妻は「ご再考を!」と叫んでいるが、これ以上の温情はない。
二日後、私は爵位を息子に譲り、家令と二人で隠居することにした。
「旦那様を一人にできません」
最後まで苦労をかけそうだ。
ダフネス男爵家の者はこの国でまともに生きていくことはできないだろう。
私は家令と共に明日国を立つ。
行き先は決まっていない。
風の吹くまま気の向くままに生きていくつもりだ。
半年後、遠い異国の地で王国の犯罪組織が一斉に摘発された事を新聞で知る事になった。
大々的な組織犯罪摘発だったため、新聞に大きく取り上げられていた。
記事を読み進めていくと、捕まった犯罪者の中に後妻がしきりにエリカに縁談を勧めていた商人がいた。
取り調べで商家の不正が暴かれ、芋づる式に他の悪事も発覚したらしい。
最近、七番目の妻が亡くなって葬儀を執り行ったばかりで、妻達の不審死の件についても追及していた。
「旦那様、これを見てください」
家令が示したのは後妻の名前だ。
驚いたことに後妻と高利貸しも関係者として揃って逮捕されていた。
息子の名前はなかった。
捕まらなかったということは逃げたのだな。
「如何致しますか?」
「放っておけばいい。私達にはもう関係ないからな」
「はい」
「それはそうと、この茶葉は売れるか?」
「旦那様、本当に商いをなさるのですか」
「ああ」
「不安です」
「そのためのお前だろう?」
「ヤレヤレ」
隠居生活は気楽だが暇だ。
気晴らしに茶屋でもやるかな。
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