上 下
55 / 66
番外編~ダフネス男爵家の崩壊~

54.ダフネス男爵side

しおりを挟む
「なんで!?なんであの娘エリカが王都に!?」

 後妻は酷く驚いていた。

「何故って……。貴族だからに決まっているだろう?」

 この後妻は何を言っているんだ?

「貴族全員が入学する訳じゃないでしょ!?」

「それはそうだが。エリカは跡取り娘だ。王立学園で学んだ方が将来の役に立つだろう?」

「あ、跡取りですって!?あの娘が!!?」

「そうだ」

 私は何かおかしな事を言っただろうか?
 後妻は愕然としていた。

「で、でもあの娘は女の子で……うちには息子がいるじゃない!?普通は男の子が後を継ぐもんでしょ!?」

「それはそうだが……」

「なら!」

「先々の事を考えればエリカが後を継いだ方が良い。両親揃って貴族出身ならば、後々も問題はない」

「だ、だけど……」

「それに……。エリカはリンスレットに似て美人だ。きっと引く手数多だろう。次男、三男あたりに婿入りしてもらえればいいが。学園在籍中に良い人と出会わなければ伝手を使って見合いしてもいい」

「……!?!?」

 後妻は何故か狼狽えている。何か変な事を言っただろうか?口をパクパクさせて声にならない声を出している。何が言いたいのだろう?筈だ。それなのに何故?と疑問に思った。

 私はこの時、深く考えなかった。

 翌日、高利貸しがやって来た。



 高利貸しは不機嫌な顔を隠しもしなかった。

「男爵、どういうことですか?息子がいるのに女に家を継がせるとは?」

「そのままですが?」

「女では貴族社会で舐められるでしょう」

「母親が高利貸しの平民出身の方が貴族社会で舐められると思いますが?」

「っ~~~~~!?し、失礼だろう!!」

「? 何を怒っているのですか?本当の事ではありませんか」

「本当の事でも言って良い事と悪い事がある!!」

「現実を考えればそうです」

「男爵はアシアの子供達が可愛くないのですか!?」

「我が子ですから。可愛いですよ」

「なら!」

「可愛いからこそ、成人した暁には男爵籍から除籍し、平民にする予定です」

「なっ!?」

「貴方が何を怒っているか判りませんが……。下の子供達はマナーや勉強を嫌っています。あの調子だと王立学園に入ったところで周囲についていけないでしょう。幸い、長女のエリカは貴族のマナーは最低限ですができます。妻が生前に合間を縫って教え込んでいた様ですから」

「先妻が……!?」

「貴族社会で生きていくのであれば、片親が平民というのはハンデになりかねます。うちはしがない男爵家ですから。息子は体を動かす事が好きな様なので将来は軍に入らそうと考えていますが、問題は次女の方ですね。できれば商人に嫁がそうと考えているところですが……」

「ふざけるな!そんな事は認めない!」

「そう言われましても……。平民として生きる方が二人のためですよ?」

「煩い!孫たちは貴族だ!貴族として生きさせる!!」

 高利貸しは顔を真っ赤にして唾を飛ばしながら激昂する。
 何故、そう怒るのか。訳が分からない。

 その後も話は平行線のまま。
 しびれを切らした高利貸しが帰るまで続いた。

 

しおりを挟む
感想 54

あなたにおすすめの小説

【完結】裏切ったあなたを許さない

紫崎 藍華
恋愛
ジョナスはスザンナの婚約者だ。 そのジョナスがスザンナの妹のセレナとの婚約を望んでいると親から告げられた。 それは決定事項であるため婚約は解消され、それだけなく二人の邪魔になるからと領地から追放すると告げられた。 そこにセレナの意向が働いていることは間違いなく、スザンナはセレナに人生を翻弄されるのだった。

【完結】捨ててください

仲 奈華 (nakanaka)
恋愛
ずっと貴方の側にいた。 でも、あの人と再会してから貴方は私ではなく、あの人を見つめるようになった。 分かっている。 貴方は私の事を愛していない。 私は貴方の側にいるだけで良かったのに。 貴方が、あの人の側へ行きたいと悩んでいる事が私に伝わってくる。 もういいの。 ありがとう貴方。 もう私の事は、、、 捨ててください。 続編投稿しました。 初回完結6月25日 第2回目完結7月18日

私達、政略結婚ですから。

恋愛
オルヒデーエは、来月ザイデルバスト王子との結婚を控えていた。しかし2年前に王宮に来て以来、王子とはろくに会わず話もしない。一方で1年前現れたレディ・トゥルペは、王子に指輪を贈られ、二人きりで会ってもいる。王子に自分達の関係性を問いただすも「政略結婚だが」と知らん顔、レディ・トゥルペも、オルヒデーエに向かって「政略結婚ですから」としたり顔。半年前からは、レディ・トゥルペに数々の嫌がらせをしたという噂まで流れていた。 それが罪状として読み上げられる中、オルヒデーエは王子との数少ない思い出を振り返り、その処断を待つ。

彼女にも愛する人がいた

まるまる⭐️
恋愛
既に冷たくなった王妃を見つけたのは、彼女に食事を運んで来た侍女だった。 「宮廷医の見立てでは、王妃様の死因は餓死。然も彼が言うには、王妃様は亡くなってから既に2、3日は経過しているだろうとの事でした」 そう宰相から報告を受けた俺は、自分の耳を疑った。 餓死だと? この王宮で?  彼女は俺の従兄妹で隣国ジルハイムの王女だ。 俺の背中を嫌な汗が流れた。 では、亡くなってから今日まで、彼女がいない事に誰も気付きもしなかったと言うのか…? そんな馬鹿な…。信じられなかった。 だがそんな俺を他所に宰相は更に告げる。 「亡くなった王妃様は陛下の子を懐妊されておりました」と…。 彼女がこの国へ嫁いで来て2年。漸く子が出来た事をこんな形で知るなんて…。 俺はその報告に愕然とした。

【完結】愛することはないと告げられ、最悪の新婚生活が始まりました

紫崎 藍華
恋愛
結婚式で誓われた愛は嘘だった。 初夜を迎える前に夫は別の女性の事が好きだと打ち明けた。

【完結】あなたから、言われるくらいなら。

たまこ
恋愛
 侯爵令嬢アマンダの婚約者ジェレミーは、三か月前編入してきた平民出身のクララとばかり逢瀬を重ねている。アマンダはいつ婚約破棄を言い渡されるのか、恐々していたが、ジェレミーから言われた言葉とは……。 2023.4.25 HOTランキング36位/24hランキング30位 ありがとうございました!

【完結】白い結婚はあなたへの導き

白雨 音
恋愛
妹ルイーズに縁談が来たが、それは妹の望みでは無かった。 彼女は姉アリスの婚約者、フィリップと想い合っていると告白する。 何も知らずにいたアリスは酷くショックを受ける。 先方が承諾した事で、アリスの気持ちは置き去りに、婚約者を入れ換えられる事になってしまった。 悲しみに沈むアリスに、夫となる伯爵は告げた、「これは白い結婚だ」と。 運命は回り始めた、アリスが辿り着く先とは… ◇異世界:短編16話《完結しました》

婚約破棄を、あなたのために

月山 歩
恋愛
私はあなたが好きだけど、あなたは彼女が好きなのね。だから、婚約破棄してあげる。そうして、別れたはずが、彼は騎士となり、領主になると、褒章は私を妻にと望んだ。どうして私?彼女のことはもういいの?それともこれは、あなたの人生を台無しにした私への復讐なの?

処理中です...