上 下
49 / 66
番外編~フィールド伯爵家の騒動~

48.とある看守side

しおりを挟む
 あ~~~、この色ボケ爺やっと死んだか。
 まさかこんなに長く生きるとは思わなかった。歳も歳だ。直ぐにくたばるとばかり思ってたのに。

 爺さんの愛人と元息子二人はとっくにあの世だ。


「ふぉふぉふぉ。検体としても、もってこいの体じゃのう」

「先生、本当にその遺体持って帰るのか?」

「おう!許可も取ってあるぞ。それに誰も引き取りに来んじゃろう?」

「それはまぁ……」

「そんな遺体を有効活用するのが儂らの仕事じゃ」

「そうか……」

 何に使用するのかは聞かない。
 病みそうだからな。聞きたくない。

 給料の良い仕事だが、やっぱりロクな仕事じゃないぜ。看守ってのは……チクショウが!!

 平民にとって職業選択の自由はあってもないようなもんだ。どんな仕事であれ選り好みなんて早々できるもんじゃない。俺のような孤児なら尚更だ。

「ところで坊主、お前さん、まだこの仕事やるのかい?」

「他に良い仕事なんてないですよ」

「ここも大概じゃろ?お前さんなら軍隊に入れるぞ?」

「軍隊は……結構です」

「そうかそうか~。まあ、この仕事は似たり寄ったりだからのう」

 あそこは別の意味でヤバイ。
 近衛よりマシだろうが。ま、平民の俺じゃあ、近衛には入れないが。

「それじゃあの、検体貰っとくぞ」

「どうぞ」

「そうじゃ、一つ良い小遣い稼ぎがあるんじゃが、手伝わんか?」

「しません」

「欲がないのう。お前さんでも出来る仕事じゃぞ?遺体の分解」

「絶対にしません」

「そうか……それじゃあ、骨を砕く仕事はどうじゃ?」

「絶対に嫌です」

「ふぉふぉふぉ。残念じゃな。じゃが、仕事にあぶれたら何時でも儂のところへおいで。歓迎するよ」

 イカレタ爺さんだが、意外に面倒見がいい先生だ。
 もっとも仕事内容によるが。

なら大歓迎ですよ。先生」

「助手の仕事は普通じゃぞ?」

 そんな不思議そうな顔で見ないで欲しい。
 先生の場合『助手』といっても何をするのか分からないからだ。危険な仕事ではないだろう事は分かるが。絶対に碌なもんじゃない。精神的にきつそうだ。衛生面でも期待できなさそうだ。

 グロテスクな世界に飛び込むほど俺は人間を止めてないんだ。



 その後、先生がしたと新聞を賑わすようになる。

 実験体重犯罪者が役だったと笑いが止まらないらしい。
 もう90歳を超えてるっていうのに元気な人だ。
 あれは100歳まで生きるな、絶対に。


「儂は死ぬまで現役じゃ!死ぬまで医学の研究を続けるつもりじゃ!!」

 記者のインタビューにそう答えていた。
 そして今日も元気にこの地下牢にやってくる。

「坊主~~~!ケーキ買って来たぞ!受刑者の分もあるからぉ~~~」

 間延びした独特の高音。相変わらず元気そうだ。
 因みに先生、そのケーキどこで買ったものだ?そして受刑者用のケーキにはんだ?そこのところの線引きはやっておかないと不味い気がする。

「坊主は心配性じゃな。ちゃ~~んと国の許可は取っておる」

 ということは、国がこの地下牢を先生に明け渡したと……?
 そういうこと?

 俺、転職しようかな。

 この地下牢が先生の実験場と化す前に。


しおりを挟む
感想 54

あなたにおすすめの小説

【完結】裏切ったあなたを許さない

紫崎 藍華
恋愛
ジョナスはスザンナの婚約者だ。 そのジョナスがスザンナの妹のセレナとの婚約を望んでいると親から告げられた。 それは決定事項であるため婚約は解消され、それだけなく二人の邪魔になるからと領地から追放すると告げられた。 そこにセレナの意向が働いていることは間違いなく、スザンナはセレナに人生を翻弄されるのだった。

【完結】唯一の味方だと思っていた婚約者に裏切られました

紫崎 藍華
恋愛
両親に愛されないサンドラは婚約者ができたことで救われた。 ところが妹のリザが婚約者を譲るよう言ってきたのだ。 困ったサンドラは両親に相談するが、両親はリザの味方だった。 頼れる人は婚約者しかいない。 しかし婚約者は意外な提案をしてきた。

【完結】断罪された悪役令嬢は、全てを捨てる事にした

miniko
恋愛
悪役令嬢に生まれ変わったのだと気付いた時、私は既に王太子の婚約者になった後だった。 婚約回避は手遅れだったが、思いの外、彼と円満な関係を築く。 (ゲーム通りになるとは限らないのかも) ・・・とか思ってたら、学園入学後に状況は激変。 周囲に疎まれる様になり、まんまと卒業パーティーで断罪&婚約破棄のテンプレ展開。 馬鹿馬鹿しい。こんな国、こっちから捨ててやろう。 冤罪を晴らして、意気揚々と単身で出国しようとするのだが、ある人物に捕まって・・・。 強制力と言う名の運命に翻弄される私は、幸せになれるのか!? ※感想欄はネタバレあり/なし の振り分けをしていません。本編より先にお読みになる場合はご注意ください。

【完結】愛することはないと告げられ、最悪の新婚生活が始まりました

紫崎 藍華
恋愛
結婚式で誓われた愛は嘘だった。 初夜を迎える前に夫は別の女性の事が好きだと打ち明けた。

【完結】旦那様、お飾りですか?

紫崎 藍華
恋愛
結婚し新たな生活に期待を抱いていた妻のコリーナに夫のレックスは告げた。 社交の場では立派な妻であるように、と。 そして家庭では大切にするつもりはないことも。 幸せな家庭を夢見ていたコリーナの希望は打ち砕かれた。 そしてお飾りの妻として立派に振る舞う生活が始まった。

【完結】白い結婚はあなたへの導き

白雨 音
恋愛
妹ルイーズに縁談が来たが、それは妹の望みでは無かった。 彼女は姉アリスの婚約者、フィリップと想い合っていると告白する。 何も知らずにいたアリスは酷くショックを受ける。 先方が承諾した事で、アリスの気持ちは置き去りに、婚約者を入れ換えられる事になってしまった。 悲しみに沈むアリスに、夫となる伯爵は告げた、「これは白い結婚だ」と。 運命は回り始めた、アリスが辿り着く先とは… ◇異世界:短編16話《完結しました》

両親から謝ることもできない娘と思われ、妹の邪魔する存在と決めつけられて養子となりましたが、必要のないもの全てを捨てて幸せになれました

珠宮さくら
恋愛
伯爵家に生まれたユルシュル・バシュラールは、妹の言うことばかりを信じる両親と妹のしていることで、最低最悪な婚約者と解消や破棄ができたと言われる日々を送っていた。 一見良いことのように思えることだが、実際は妹がしていることは褒められることではなかった。 更には自己中な幼なじみやその異母妹や王妃や側妃たちによって、ユルシュルは心労の尽きない日々を送っているというのにそれに気づいてくれる人は周りにいなかったことで、ユルシュルはいつ倒れてもおかしくない状態が続いていたのだが……。

あなたに未練などありません

風見ゆうみ
恋愛
「本当は前から知っていたんだ。君がキャロをいじめていた事」 初恋であり、ずっと思いを寄せていた婚約者からありえない事を言われ、侯爵令嬢であるわたし、アニエス・ロロアルの頭の中は真っ白になった。 わたしの婚約者はクォント国の第2王子ヘイスト殿下、幼馴染で親友のキャロラインは他の友人達と結託して嘘をつき、私から婚約者を奪おうと考えたようだった。 数日後の王家主催のパーティーでヘイスト殿下に婚約破棄されると知った父は激怒し、元々、わたしを憎んでいた事もあり、婚約破棄後はわたしとの縁を切り、わたしを家から追い出すと告げ、それを承認する書面にサインまでさせられてしまう。 そして、予告通り出席したパーティーで婚約破棄を告げられ絶望していたわたしに、その場で求婚してきたのは、ヘイスト殿下の兄であり病弱だという事で有名なジェレミー王太子殿下だった…。 ※史実とは関係なく、設定もゆるい、ご都合主義です。 ※中世ヨーロッパ風で貴族制度はありますが、法律、武器、食べ物などは現代風です。話を進めるにあたり、都合の良い世界観となっています。 ※誤字脱字など見直して気を付けているつもりですが、やはりございます。申し訳ございません。

処理中です...