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番外編~フィールド伯爵家の騒動~

44.主席裁判官side

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 それは偶然だった。
 風の噂で孫娘が子供を産んだと知った。

 孫とは認めていない。
 娘が駆け落ちして生まれた孫だ。
 ダフネス男爵家がどれだけ困窮しようと助けなかったし、絶縁した娘が死んだ時も仕事をしていた。葬式にも出席していない。絶縁とはそういうものだ。

 不貞で出来た孫など認められるわけがない。

 その前に娘は仮にも上位の伯爵令嬢だ。貧乏暮らしなど出来る訳がない。どうせ泣いて戻って来る。そう高を括っていた。娘が死に、ダフネス男爵が金目当てで再婚したと知った時は失笑した。

 娘は男を見る目がない。

 儂の選んだ男と結婚していれば裕福な暮らしを今でも享受して、早死にもしなかったのだ。本当にバカな娘だ。

 気にもしていなかった孫娘の現状を知ったのは、よりのもよって母親と同じような事をしでかした時だった。
 あろうことか、ウォーカー侯爵子息と恋仲になり、そのせいで子息は破滅したと聞いた時は、あの母にしてこの娘ありだと呆れかえった。
 元侯爵子息と駆け落ちしたが最終的に捨てられたと聞いた時は鼻で笑った。所詮は身分の低い男の娘である。育ちの悪い女は母親の血をしっかり受け継いでいるのだと思うと、娘と縁を切って正解だとすら感じた。
 儂の判断は間違っていなかったのだと。
 妻に泣かれたが後悔はない。

 全てはフィールド伯爵家を守るためだ。

 跡取りの問題を親族は気にしているようだが心配ない。
 妻には内密で愛人を囲っている。女腹の妻と違って男を二人も産んでくれたイイ女だ。儂の実子だとバレると面倒だからな。適当に遠縁の子供としておくか。二人の息子は儂の後ろ姿を見て育ったせいか実に優秀だ。同じ法曹界に入り、多くの部下を従えている。娘と違って儂の自慢だ。


 ……なのに何故だ?

 何故、儂と息子達が捕まらなければならない!?

 一斉監査だと!?
 聞いていないぞ!!
 はぁ!?陛下の命令だと!!!

 たった一日で全てを失った。

 主席裁判官の地位も、伯爵の爵位も……。

 儂だけじゃない。
 息子二人と愛人も罪を問われた。



「三人に何の罪がある!!儂が裁判官として賄賂を貰っていた事は認める。だが息子達は違うだろう!!!」

 地下牢に入れられ、あらん限り叫んだ。
 看守が「煩い!」と怒鳴るが、こっちはそれどころではない!息子の将来がかかっているんだ!!!

 数日後、儂の兄達が牢屋にやって来た。

 やはり持つべきものは血の繋がった家族だ。儂を助けに来てくれた。


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