43 / 66
43.結婚式2
しおりを挟む
「あの時はすまなかったね、ミネルヴァ嬢」
悪びれもせずに言う元第二王子に内心呆れました。
『図々しいコンテスト』があれば、堂々の第一位でしょう。『無神経コンテスト』でも一位は確実。ですが、この人懐っこさのせいで妙に憎めないんですよね。
「いえいえ、どういたしまして。あの御令嬢では王子妃は無理だったでしょうし。もし王子妃になった時は我が国の恥を国内外にさらけ出す事態になってましたから。私達、婚約者候補の精神的苦痛くらいなんともありませんわ。ええ、本当に」
「相変わらず手厳しいな」
「事実を受け止めるのは大事ですわよ。特に為政者側は」
「私は政界に出る気はないよ。義父上の後を継いで近衛騎士団長になるからね」
「残念ですわ。政治家向きの御性格ですのに」
「私が?まさか!買いかぶり過ぎだよ」
「そうでしょうか?御自分は一切動かずに、他者を上手く誘導する手段に感服してますのよ。ああ!違いましたわ。一度だけ御自身で動かれた事がありました!アレは実に見事でした。私、感服いたしました」
「……なんのことかな?」
元第二王子は目を細め、また微笑みを浮かべました。
柔らかな笑み。
目だけが笑っていない笑み。
「例の御令嬢のその後は御存知で?」
「さて、どの家の令嬢かな?」
「殿下に御執心だった令嬢です」
「婚約者候補にも選ばれなかった令嬢からの秋波は多くてね」
「一々覚えていないと?」
私と元第二王子はお互い笑顔のまま、じっと見つめます。
侮れない御方。
誘拐された恋人を助ける為とはいえ、彼女の友人を囮に使ってまで実行したのを知った時は背筋が凍るかと思いました。
実行犯を皆殺しにしただけでなく、指示した令嬢の顔を変形が治らないほど殴ったことも。令嬢の体からありとあらゆる液体が流れている状態で放置。心を病んだ令嬢はその後、他国の評判の悪い修道院に送られたとか。
誘拐事件を知る人は少数。
元第二王子は恋人を守るため、事件そのものを隠蔽したのです。
あぶりだす者は今後出てこないようキッチリと。
「風通しが良くなって色々と動きやすくなったことでしょう」
「……はて?私は単純明快な男でね。ミネルヴァ嬢が何を言っているのか理解できないよ」
「まぁ、そういう事にしておきましょう。今のところは」
「怖いな~~」
とぼけたフリも板についたこと。本当に恐ろしい人だわ。
間違いなく、裏で糸を引いていたに違いないのに証拠は一切残してないのだもの。
暫くは要注意ですね。
王太子殿下の結婚式後、五大侯爵家はある提案書を王家に提出しています。
今後、もしも元第二王子が王族復帰を果たす事があれば、その妻である伯爵令嬢を正妃に据えないこと。
王族復帰の際に伯爵令嬢と離縁するか、もしくは妾妃に迎え入れること。
なお、妾妃に迎え入れたならばその立場に従い妃教育を受けさせること。
妃教育が修了出来なかった場合、公務には一切出させないこと。
それらの条件を突きつけました。
ない、とは思いますが。
それでも油断は禁物。
王太子殿下に御子が誕生しなかった場合、元第二王子の存在が再び注目される。そうなれば王族復帰になる恐れも十分考えられるのですから。用心に越したことはありません。
そしてそれは近い未来で現実に起こるのですが、それはまた別の話。
悪びれもせずに言う元第二王子に内心呆れました。
『図々しいコンテスト』があれば、堂々の第一位でしょう。『無神経コンテスト』でも一位は確実。ですが、この人懐っこさのせいで妙に憎めないんですよね。
「いえいえ、どういたしまして。あの御令嬢では王子妃は無理だったでしょうし。もし王子妃になった時は我が国の恥を国内外にさらけ出す事態になってましたから。私達、婚約者候補の精神的苦痛くらいなんともありませんわ。ええ、本当に」
「相変わらず手厳しいな」
「事実を受け止めるのは大事ですわよ。特に為政者側は」
「私は政界に出る気はないよ。義父上の後を継いで近衛騎士団長になるからね」
「残念ですわ。政治家向きの御性格ですのに」
「私が?まさか!買いかぶり過ぎだよ」
「そうでしょうか?御自分は一切動かずに、他者を上手く誘導する手段に感服してますのよ。ああ!違いましたわ。一度だけ御自身で動かれた事がありました!アレは実に見事でした。私、感服いたしました」
「……なんのことかな?」
元第二王子は目を細め、また微笑みを浮かべました。
柔らかな笑み。
目だけが笑っていない笑み。
「例の御令嬢のその後は御存知で?」
「さて、どの家の令嬢かな?」
「殿下に御執心だった令嬢です」
「婚約者候補にも選ばれなかった令嬢からの秋波は多くてね」
「一々覚えていないと?」
私と元第二王子はお互い笑顔のまま、じっと見つめます。
侮れない御方。
誘拐された恋人を助ける為とはいえ、彼女の友人を囮に使ってまで実行したのを知った時は背筋が凍るかと思いました。
実行犯を皆殺しにしただけでなく、指示した令嬢の顔を変形が治らないほど殴ったことも。令嬢の体からありとあらゆる液体が流れている状態で放置。心を病んだ令嬢はその後、他国の評判の悪い修道院に送られたとか。
誘拐事件を知る人は少数。
元第二王子は恋人を守るため、事件そのものを隠蔽したのです。
あぶりだす者は今後出てこないようキッチリと。
「風通しが良くなって色々と動きやすくなったことでしょう」
「……はて?私は単純明快な男でね。ミネルヴァ嬢が何を言っているのか理解できないよ」
「まぁ、そういう事にしておきましょう。今のところは」
「怖いな~~」
とぼけたフリも板についたこと。本当に恐ろしい人だわ。
間違いなく、裏で糸を引いていたに違いないのに証拠は一切残してないのだもの。
暫くは要注意ですね。
王太子殿下の結婚式後、五大侯爵家はある提案書を王家に提出しています。
今後、もしも元第二王子が王族復帰を果たす事があれば、その妻である伯爵令嬢を正妃に据えないこと。
王族復帰の際に伯爵令嬢と離縁するか、もしくは妾妃に迎え入れること。
なお、妾妃に迎え入れたならばその立場に従い妃教育を受けさせること。
妃教育が修了出来なかった場合、公務には一切出させないこと。
それらの条件を突きつけました。
ない、とは思いますが。
それでも油断は禁物。
王太子殿下に御子が誕生しなかった場合、元第二王子の存在が再び注目される。そうなれば王族復帰になる恐れも十分考えられるのですから。用心に越したことはありません。
そしてそれは近い未来で現実に起こるのですが、それはまた別の話。
200
お気に入りに追加
2,413
あなたにおすすめの小説
【完結】裏切ったあなたを許さない
紫崎 藍華
恋愛
ジョナスはスザンナの婚約者だ。
そのジョナスがスザンナの妹のセレナとの婚約を望んでいると親から告げられた。
それは決定事項であるため婚約は解消され、それだけなく二人の邪魔になるからと領地から追放すると告げられた。
そこにセレナの意向が働いていることは間違いなく、スザンナはセレナに人生を翻弄されるのだった。
【完結】唯一の味方だと思っていた婚約者に裏切られました
紫崎 藍華
恋愛
両親に愛されないサンドラは婚約者ができたことで救われた。
ところが妹のリザが婚約者を譲るよう言ってきたのだ。
困ったサンドラは両親に相談するが、両親はリザの味方だった。
頼れる人は婚約者しかいない。
しかし婚約者は意外な提案をしてきた。
立派な王太子妃~妃の幸せは誰が考えるのか~
矢野りと
恋愛
ある日王太子妃は夫である王太子の不貞の現場を目撃してしまう。愛している夫の裏切りに傷つきながらも、やり直したいと周りに助言を求めるが‥‥。
隠れて不貞を続ける夫を見続けていくうちに壊れていく妻。
周りが気づいた時は何もかも手遅れだった…。
※設定はゆるいです。
【完結】断罪された悪役令嬢は、全てを捨てる事にした
miniko
恋愛
悪役令嬢に生まれ変わったのだと気付いた時、私は既に王太子の婚約者になった後だった。
婚約回避は手遅れだったが、思いの外、彼と円満な関係を築く。
(ゲーム通りになるとは限らないのかも)
・・・とか思ってたら、学園入学後に状況は激変。
周囲に疎まれる様になり、まんまと卒業パーティーで断罪&婚約破棄のテンプレ展開。
馬鹿馬鹿しい。こんな国、こっちから捨ててやろう。
冤罪を晴らして、意気揚々と単身で出国しようとするのだが、ある人物に捕まって・・・。
強制力と言う名の運命に翻弄される私は、幸せになれるのか!?
※感想欄はネタバレあり/なし の振り分けをしていません。本編より先にお読みになる場合はご注意ください。
【完結】旦那様、お飾りですか?
紫崎 藍華
恋愛
結婚し新たな生活に期待を抱いていた妻のコリーナに夫のレックスは告げた。
社交の場では立派な妻であるように、と。
そして家庭では大切にするつもりはないことも。
幸せな家庭を夢見ていたコリーナの希望は打ち砕かれた。
そしてお飾りの妻として立派に振る舞う生活が始まった。
【完結】白い結婚はあなたへの導き
白雨 音
恋愛
妹ルイーズに縁談が来たが、それは妹の望みでは無かった。
彼女は姉アリスの婚約者、フィリップと想い合っていると告白する。
何も知らずにいたアリスは酷くショックを受ける。
先方が承諾した事で、アリスの気持ちは置き去りに、婚約者を入れ換えられる事になってしまった。
悲しみに沈むアリスに、夫となる伯爵は告げた、「これは白い結婚だ」と。
運命は回り始めた、アリスが辿り着く先とは… ◇異世界:短編16話《完結しました》
両親から謝ることもできない娘と思われ、妹の邪魔する存在と決めつけられて養子となりましたが、必要のないもの全てを捨てて幸せになれました
珠宮さくら
恋愛
伯爵家に生まれたユルシュル・バシュラールは、妹の言うことばかりを信じる両親と妹のしていることで、最低最悪な婚約者と解消や破棄ができたと言われる日々を送っていた。
一見良いことのように思えることだが、実際は妹がしていることは褒められることではなかった。
更には自己中な幼なじみやその異母妹や王妃や側妃たちによって、ユルシュルは心労の尽きない日々を送っているというのにそれに気づいてくれる人は周りにいなかったことで、ユルシュルはいつ倒れてもおかしくない状態が続いていたのだが……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる