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29.新たな縁談1
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「ミネルヴァって残酷よね」
「急にどうしたの?」
「元婚約者を牢屋送りにしたんでしょう?」
「お耳の早い事で」
「元はと言えば自業自得よ。散々、周囲に迷惑をかけて……よく平然と顔を出せたものだわ。本当に図太い神経してるのね」
「そうね。私もそう思いましたわ。でも少々違ったみたいです」
「?」
「ラシード元お義兄様、記憶喪失らしいですわ」
「……」
「お可哀想に、5年分も忘れてしまったみたいですわ。気付いたら病室のベッドの中で、自分の知らない女性が妻になっている事にパニックになり、妻を名乗る女性を詐欺師扱い。しかも、5年間の記憶がないのはその女性が何かしたのだと言い出して彼女を魔女扱い。妻が5年間に何があったのかを説明しても、彼女は嘘をついていると言い続けたらしいわ。まぁ、二人は籍を入れていない事実婚だったから、余計に信用できなかったのでしょうね。家のお金を盗んで王都の侯爵邸の門の前で騒ぎ立てたものだから、私と侯爵家への接近禁止命令を発令して警察に引き取って貰いました」
「わぁ!思っていた以上に酷いわ。それにしても……記憶喪失って本当なの?」
「どうやら本当みたいだわ。信じられないけれど……」
「厄介な事になったわね」
「それがそうでもないわ」
「え?伯爵家が引き取りに来るの?」
「いいえ。どんな理由があっても私に接触しようとしたんですもの。記憶がないとはいえ駆け落ちまで仕出かしているわ。伯爵家は元義兄を許さないでしょうね」
「じゃあ、誰も身元引受人が現れず牢屋の中で過ごす訳?」
「まさか。重犯罪者ではないし、そのまま何もしなくても出て来られるわ。ただし、その時は平民の身分でしょうけどね」
「放逐されたらまたミネルヴァを狙うんじゃない?話を聞いてくれ!とか?」
「だから連絡しましたの」
「誰に?」
「勿論、元義兄の帰りを待つ正式な婚約者にです」
「ナイス!鬼畜!」
「いやだわ。善意ですとも」
「怖い!やっぱりミネルヴァには誰も敵わないわね」
ほほほ、褒め言葉と受け取りましょう。
私、やられたらやり返す事に致しましたの。
これはロザリンドの影響でしょうか?
恐らくそうですわね。
今だって、とても悪い笑みを浮かべていますもの。
「それはそうと、ミネルヴァ。結婚しない?」
「あらあら、話が飛びましたわね。藪から棒にどうなさったの?」
「う~~ん、実はミネルヴァを紹介して欲しいって依頼があるの」
「……不愉快でない貴族なら話だけは伺いますわ」
「そこは大丈夫。中央貴族じゃないから。ていうか、私の兄なんだけどね」
「ロザリンドのお兄様?」
「そう、三番目のね。ミネルヴァに一目惚れしたんだって」
「確かロザリンドの三番目のお兄様は軍に所属なさっていましたわよね?」
「辺境伯家は実践向きの軍との連携は必須だから」
「軍ですか……」
「あ、やっぱり嫌?」
「嫌ではありません。実際に国を守っているのは軍ですから」
「良かった。貴族って軍を嫌う傾向があるから」
「嫌っているのは宮廷貴族です」
「それと頭に花が咲いてる中央の嫌な貴族!」
「まぁ、近衛騎士団と違って華やかさがありませんからね。それに貴族よりも平民が多い上に実力主義なところも彼等からしたら面白く感じないのでしょう。私としては近衛よりもずっと好感が持てまわ」
「ミネルヴァ!」
「万が一お受けしたとしても結婚前提にはなりませんけど、それでもよろしいですか?」
「うんうん。さっきも言ったけど会うだけでいいから。私も同席するし。好みのタイプじゃなかったら速攻で振ってくれていいからね!」
それはそれでどうなんでしょう。
ロザリンドの兄君なら相当の美男子でしょうに。あら?これってロザリンドと義姉妹になるチャンスなのでは?なんだか楽しみになってきましたわ!
「急にどうしたの?」
「元婚約者を牢屋送りにしたんでしょう?」
「お耳の早い事で」
「元はと言えば自業自得よ。散々、周囲に迷惑をかけて……よく平然と顔を出せたものだわ。本当に図太い神経してるのね」
「そうね。私もそう思いましたわ。でも少々違ったみたいです」
「?」
「ラシード元お義兄様、記憶喪失らしいですわ」
「……」
「お可哀想に、5年分も忘れてしまったみたいですわ。気付いたら病室のベッドの中で、自分の知らない女性が妻になっている事にパニックになり、妻を名乗る女性を詐欺師扱い。しかも、5年間の記憶がないのはその女性が何かしたのだと言い出して彼女を魔女扱い。妻が5年間に何があったのかを説明しても、彼女は嘘をついていると言い続けたらしいわ。まぁ、二人は籍を入れていない事実婚だったから、余計に信用できなかったのでしょうね。家のお金を盗んで王都の侯爵邸の門の前で騒ぎ立てたものだから、私と侯爵家への接近禁止命令を発令して警察に引き取って貰いました」
「わぁ!思っていた以上に酷いわ。それにしても……記憶喪失って本当なの?」
「どうやら本当みたいだわ。信じられないけれど……」
「厄介な事になったわね」
「それがそうでもないわ」
「え?伯爵家が引き取りに来るの?」
「いいえ。どんな理由があっても私に接触しようとしたんですもの。記憶がないとはいえ駆け落ちまで仕出かしているわ。伯爵家は元義兄を許さないでしょうね」
「じゃあ、誰も身元引受人が現れず牢屋の中で過ごす訳?」
「まさか。重犯罪者ではないし、そのまま何もしなくても出て来られるわ。ただし、その時は平民の身分でしょうけどね」
「放逐されたらまたミネルヴァを狙うんじゃない?話を聞いてくれ!とか?」
「だから連絡しましたの」
「誰に?」
「勿論、元義兄の帰りを待つ正式な婚約者にです」
「ナイス!鬼畜!」
「いやだわ。善意ですとも」
「怖い!やっぱりミネルヴァには誰も敵わないわね」
ほほほ、褒め言葉と受け取りましょう。
私、やられたらやり返す事に致しましたの。
これはロザリンドの影響でしょうか?
恐らくそうですわね。
今だって、とても悪い笑みを浮かべていますもの。
「それはそうと、ミネルヴァ。結婚しない?」
「あらあら、話が飛びましたわね。藪から棒にどうなさったの?」
「う~~ん、実はミネルヴァを紹介して欲しいって依頼があるの」
「……不愉快でない貴族なら話だけは伺いますわ」
「そこは大丈夫。中央貴族じゃないから。ていうか、私の兄なんだけどね」
「ロザリンドのお兄様?」
「そう、三番目のね。ミネルヴァに一目惚れしたんだって」
「確かロザリンドの三番目のお兄様は軍に所属なさっていましたわよね?」
「辺境伯家は実践向きの軍との連携は必須だから」
「軍ですか……」
「あ、やっぱり嫌?」
「嫌ではありません。実際に国を守っているのは軍ですから」
「良かった。貴族って軍を嫌う傾向があるから」
「嫌っているのは宮廷貴族です」
「それと頭に花が咲いてる中央の嫌な貴族!」
「まぁ、近衛騎士団と違って華やかさがありませんからね。それに貴族よりも平民が多い上に実力主義なところも彼等からしたら面白く感じないのでしょう。私としては近衛よりもずっと好感が持てまわ」
「ミネルヴァ!」
「万が一お受けしたとしても結婚前提にはなりませんけど、それでもよろしいですか?」
「うんうん。さっきも言ったけど会うだけでいいから。私も同席するし。好みのタイプじゃなかったら速攻で振ってくれていいからね!」
それはそれでどうなんでしょう。
ロザリンドの兄君なら相当の美男子でしょうに。あら?これってロザリンドと義姉妹になるチャンスなのでは?なんだか楽しみになってきましたわ!
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