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23.元義兄の駆け落ち1
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「駆け落ち……ですか?ラシードお義兄様が……」
「そう!まだ噂にはなっていないのだけれどね。うちの家は、ラシード様と仮婚約を結んだ子爵家と交易があるから、その家経由で話が漏れているの」
なるほど、と相槌をうつ。
「お相手は……あの男爵令嬢ですか?」
「聞かなくても解るか」
「それ以外のお相手が思い浮かばなくて」
「確かに!」
「それにしても何故今になって駆け落ちなんてなさったのかしら」
「う~~ん。色々あるけど、決め手は男爵令嬢の結婚話じゃない?」
「あら?結婚の話があったのですね」
「と言っても貴族じゃないわよ。商人とのね」
「商人との縁組となると、ダフネス男爵夫人の斡旋でしょうか?」
「恐らくね。男爵夫人としても生さぬ仲の娘は何かと目障りだったんでしょう。しかもその娘が事もあろうに侯爵令嬢の婚約者候補に色目を使ったんだもの。怒り狂って当然ね」
「なるほど。そう考えるとまともな縁組ではありませんわね」
「流石はミネルヴァ。男爵令嬢の結婚相手は地上げ屋まがいの商人よ。しかも60歳を過ぎた老人。そりゃ、いくら何でも……ねぇ。逃げ出したくなるわよ。ただでさえ評判が悪いっていうのに七番目の後妻に斡旋されたんじゃね」
「七番目……随分いわくつきな相手なんですね」
「そうなの!しかも今までの妻は皆、病死。誰が信じるのか、って話よね」
きな臭い話になってきました。
ですが、辺境伯令嬢であるロザリンドの話ですから間違いはないでしょう。
「それで、どうなさるのですか?」
「どうって?」
「それを男爵令嬢の母方の祖父に報告なさるのですか?」
「報告?そんな事はしないわよ」
「しないのですか?」
「ええ、だって話したところで彼等は何もしないでしょうしね。ふーんそれで?って対応されるのがオチよ。ま、彼等の気持ちも分るわ。主席裁判官なんて男爵令嬢の所業で嫌な過去が蘇ったんじゃない?」
「因果は巡る。ですわね」
「そう、それ!まさか自分の孫娘が娘と同じような行動を取るなんて思いもしなかったでしょうに!」
大笑いしているロザリンド。
私が第二王子殿下の婚約者候補になって唯一といっていいメリットは彼女と親友になれたことだけ。兄が三人いるせいか、本人は至ってサッパリした性格で気さくな方です。
「それで、ミネルヴァはどうするの?」
「どうとは?」
「婚約者の事よ!ウォーカー侯爵家はミネルヴァが継ぐんでしょう?」
「ええ」
「釣書は山ほど届いたんじゃない?」
「ええ。皆様現金なことで。自分達が何をしたのかもう忘れているみたいですわ」
「おおー怖い怖い」
「第二王子殿下とその恋人を応援するのに大変丁寧な挨拶をされましたもの。それが自身の姉や妹、娘の行動だとしても、私そのような方を親族に持つことは到底できませんわ」
「確かにねー」
「ロザリンドのところもそうじゃありませんの?」
「私?」
「ええ、辺境伯令嬢がフリーになったんですもの。引く手あまたでしょう?」
「私はまだ婚約者を決めないわよ。両親や兄達も近衛兵達の私に対する態度に怒り狂ってるから中央貴族との縁組はないわね」
「それはお気の毒に……」
「どっちが?」
「勿論、中央貴族が、です」
「ほんと、ミネルヴァも良い性格してるわ。私もだけど!」
「あら、お褒め頂き光栄ですわ」
二人でひとしきり笑う。
中央貴族の浅はかさに、そして近衛騎士団の愚かさに。
逃した魚は大きい。
その事に何時気付くのか。
それとも気付かないうちに破滅するのか。
まさに神のみぞ知る、ですわね。
「そう!まだ噂にはなっていないのだけれどね。うちの家は、ラシード様と仮婚約を結んだ子爵家と交易があるから、その家経由で話が漏れているの」
なるほど、と相槌をうつ。
「お相手は……あの男爵令嬢ですか?」
「聞かなくても解るか」
「それ以外のお相手が思い浮かばなくて」
「確かに!」
「それにしても何故今になって駆け落ちなんてなさったのかしら」
「う~~ん。色々あるけど、決め手は男爵令嬢の結婚話じゃない?」
「あら?結婚の話があったのですね」
「と言っても貴族じゃないわよ。商人とのね」
「商人との縁組となると、ダフネス男爵夫人の斡旋でしょうか?」
「恐らくね。男爵夫人としても生さぬ仲の娘は何かと目障りだったんでしょう。しかもその娘が事もあろうに侯爵令嬢の婚約者候補に色目を使ったんだもの。怒り狂って当然ね」
「なるほど。そう考えるとまともな縁組ではありませんわね」
「流石はミネルヴァ。男爵令嬢の結婚相手は地上げ屋まがいの商人よ。しかも60歳を過ぎた老人。そりゃ、いくら何でも……ねぇ。逃げ出したくなるわよ。ただでさえ評判が悪いっていうのに七番目の後妻に斡旋されたんじゃね」
「七番目……随分いわくつきな相手なんですね」
「そうなの!しかも今までの妻は皆、病死。誰が信じるのか、って話よね」
きな臭い話になってきました。
ですが、辺境伯令嬢であるロザリンドの話ですから間違いはないでしょう。
「それで、どうなさるのですか?」
「どうって?」
「それを男爵令嬢の母方の祖父に報告なさるのですか?」
「報告?そんな事はしないわよ」
「しないのですか?」
「ええ、だって話したところで彼等は何もしないでしょうしね。ふーんそれで?って対応されるのがオチよ。ま、彼等の気持ちも分るわ。主席裁判官なんて男爵令嬢の所業で嫌な過去が蘇ったんじゃない?」
「因果は巡る。ですわね」
「そう、それ!まさか自分の孫娘が娘と同じような行動を取るなんて思いもしなかったでしょうに!」
大笑いしているロザリンド。
私が第二王子殿下の婚約者候補になって唯一といっていいメリットは彼女と親友になれたことだけ。兄が三人いるせいか、本人は至ってサッパリした性格で気さくな方です。
「それで、ミネルヴァはどうするの?」
「どうとは?」
「婚約者の事よ!ウォーカー侯爵家はミネルヴァが継ぐんでしょう?」
「ええ」
「釣書は山ほど届いたんじゃない?」
「ええ。皆様現金なことで。自分達が何をしたのかもう忘れているみたいですわ」
「おおー怖い怖い」
「第二王子殿下とその恋人を応援するのに大変丁寧な挨拶をされましたもの。それが自身の姉や妹、娘の行動だとしても、私そのような方を親族に持つことは到底できませんわ」
「確かにねー」
「ロザリンドのところもそうじゃありませんの?」
「私?」
「ええ、辺境伯令嬢がフリーになったんですもの。引く手あまたでしょう?」
「私はまだ婚約者を決めないわよ。両親や兄達も近衛兵達の私に対する態度に怒り狂ってるから中央貴族との縁組はないわね」
「それはお気の毒に……」
「どっちが?」
「勿論、中央貴族が、です」
「ほんと、ミネルヴァも良い性格してるわ。私もだけど!」
「あら、お褒め頂き光栄ですわ」
二人でひとしきり笑う。
中央貴族の浅はかさに、そして近衛騎士団の愚かさに。
逃した魚は大きい。
その事に何時気付くのか。
それとも気付かないうちに破滅するのか。
まさに神のみぞ知る、ですわね。
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