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16.元義兄side
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「今後、この家の敷居を跨ぐ事は許さない」
義父から告げられた言葉に僕は耳を疑った。
家を追い出された? 二度と侯爵家に足を踏み入れるな? そんな馬鹿な! どうして! 僕が何をしたって言うんだ!!
ムリヤリ乗せられた馬車。
混乱していた。
何がどうしてそうなったのかを。
訳が分からないまま向かった先。そこはバルティール伯爵邸だった。
僕は実家に戻されたのだ。
「なんて馬鹿な事をしでかしたんだ!恥さらしめ!!」
帰宅すると実父が仁王立ちで待っていた。
「どうしてミネルヴァ嬢を裏切ったんだ!あれほど想われていたというのに!!何が不満だったんだ?!あれだけ侯爵御一家に大切にされてきたのに!!」
実父は激怒し、僕の胸ぐらを摑んだ。
「ぼ、僕は……裏切ったつもりは……」
「男爵令嬢と一線を既に越えて何を言っている?!お前のしている事は不貞以外の何物でもない!!」
「で、ですが!ミネルヴァは第二王子殿下と婚約を!!」
「だからなんだ?!互いに婚約者候補者としていただろう!!それとも何か?お前は候補者なら他の女と関係を持っても浮気にならないと思っていたのか?!」
「……そんなことは……」
「大体、ミネルヴァ嬢が第二王子殿下と婚姻する訳がないだろう!!」
「え?!」
「何を驚いているんだ?……お前まさか。本気でミネルヴァ嬢が王子妃になると思っていたのか?」
「社交界ではそう噂されていました。友人達だって……」
「噂はそれだけでは無いはずだ。近衛騎士団長の御息女と殿下の噂の方が多かっただろう」
「近衛騎士団長の令嬢は伯爵家出身です!殿下の正妃になどなれません!!」
「ああ、なれない。だからといってミネルヴァ嬢はもっとない!」
「何故ですか?!殿下の婚約者候補筆頭だと専らの噂で!」
「王太子殿下の婚約者を忘れたのか!五大侯爵家の令嬢だ!!これで第二王子殿下まで侯爵令嬢を正妃に迎えれば第二王子殿下を王太子に擁立しようと動く者が出始める筈だ!そうなれば否が応でも王位継承権を巡る争いが起こる! 第二王子殿下の派閥だって出来るだろうしな!ウォーカー侯爵家はそんなものを認めない。それは王家だって同じだ。王位争いを避けたいのが本音! だからこそ、ミネルヴァ嬢と殿下との婚姻は絶対にあり得ない!そもそも他の侯爵家が許さない!」
「……」
そんな……それじゃあ……。
本当に?
ミネルヴァは王子妃にならない?
「もし、第二王子殿下が正妃を娶るとしたらそれはミネルヴァ嬢ではなく辺境伯令嬢の方だろうな。王家からすれば辺境伯家との繋がりは強固にしておきたい筈だ」
「……」
「もっともそれも可能性の話でしかない」
「ち、父上……」
「今は殿下の臣籍降下で話しがまとまりつつあるしな」
「臣籍降下?!」
「ああ、殿下はどうしても想い人の令嬢を正妻にしたいらしい。陛下も第二王子殿下の想いに心打たれたようだ。王太子殿下との継承権争いを避けるためにも第二王子殿下が臣籍降下して想い人と婚姻すれば争いを避けられる。王家にとっても悪い話ではない」
「父上、何故そんなに詳しいのですか?」
僕は不思議で仕方なかった。
こういっては何だが父は文官だが中級クラスだ。そんな父の知るような話ではないのに何故……?
「ウォーカー侯爵から内々に教えられていた」
「義父上から?!」
「ああ、年内に第二王子殿下の婚約を発表する手はずらしい。それに合わせてお前とミネルヴァ嬢の婚約を正式に交わしたいと仰っておられたんだ!」
「そんな……僕は……どうすれば……」
「もう何もするな。既にお前は侯爵家から除籍されている。二度とウォーカー侯爵家を名乗る事もミネルヴァ嬢を名前で呼ぶ事も近付く事も許されない」
「……そんな……」
「もう決まった事だ。家には置いてやる。ただし、男爵令嬢と一緒になる事は許さん」
「何故です!?」
「婿入りなら兎も角、そうではない。バルティール伯爵家に何の利益も有しない婚姻関係など許す訳にはいかん!!」
いつの間にかエリカは男爵家に帰されていた。
どうしてこうなったんだ。
僕は愛するエリカと一緒になりたかっただけだ。
家族から酷い扱いをされている彼女を助けたかった。
そこから救い出してあげたかった。
侯爵家で幸せな家庭を築きたかった。ただそれだけなのに……。
義父から告げられた言葉に僕は耳を疑った。
家を追い出された? 二度と侯爵家に足を踏み入れるな? そんな馬鹿な! どうして! 僕が何をしたって言うんだ!!
ムリヤリ乗せられた馬車。
混乱していた。
何がどうしてそうなったのかを。
訳が分からないまま向かった先。そこはバルティール伯爵邸だった。
僕は実家に戻されたのだ。
「なんて馬鹿な事をしでかしたんだ!恥さらしめ!!」
帰宅すると実父が仁王立ちで待っていた。
「どうしてミネルヴァ嬢を裏切ったんだ!あれほど想われていたというのに!!何が不満だったんだ?!あれだけ侯爵御一家に大切にされてきたのに!!」
実父は激怒し、僕の胸ぐらを摑んだ。
「ぼ、僕は……裏切ったつもりは……」
「男爵令嬢と一線を既に越えて何を言っている?!お前のしている事は不貞以外の何物でもない!!」
「で、ですが!ミネルヴァは第二王子殿下と婚約を!!」
「だからなんだ?!互いに婚約者候補者としていただろう!!それとも何か?お前は候補者なら他の女と関係を持っても浮気にならないと思っていたのか?!」
「……そんなことは……」
「大体、ミネルヴァ嬢が第二王子殿下と婚姻する訳がないだろう!!」
「え?!」
「何を驚いているんだ?……お前まさか。本気でミネルヴァ嬢が王子妃になると思っていたのか?」
「社交界ではそう噂されていました。友人達だって……」
「噂はそれだけでは無いはずだ。近衛騎士団長の御息女と殿下の噂の方が多かっただろう」
「近衛騎士団長の令嬢は伯爵家出身です!殿下の正妃になどなれません!!」
「ああ、なれない。だからといってミネルヴァ嬢はもっとない!」
「何故ですか?!殿下の婚約者候補筆頭だと専らの噂で!」
「王太子殿下の婚約者を忘れたのか!五大侯爵家の令嬢だ!!これで第二王子殿下まで侯爵令嬢を正妃に迎えれば第二王子殿下を王太子に擁立しようと動く者が出始める筈だ!そうなれば否が応でも王位継承権を巡る争いが起こる! 第二王子殿下の派閥だって出来るだろうしな!ウォーカー侯爵家はそんなものを認めない。それは王家だって同じだ。王位争いを避けたいのが本音! だからこそ、ミネルヴァ嬢と殿下との婚姻は絶対にあり得ない!そもそも他の侯爵家が許さない!」
「……」
そんな……それじゃあ……。
本当に?
ミネルヴァは王子妃にならない?
「もし、第二王子殿下が正妃を娶るとしたらそれはミネルヴァ嬢ではなく辺境伯令嬢の方だろうな。王家からすれば辺境伯家との繋がりは強固にしておきたい筈だ」
「……」
「もっともそれも可能性の話でしかない」
「ち、父上……」
「今は殿下の臣籍降下で話しがまとまりつつあるしな」
「臣籍降下?!」
「ああ、殿下はどうしても想い人の令嬢を正妻にしたいらしい。陛下も第二王子殿下の想いに心打たれたようだ。王太子殿下との継承権争いを避けるためにも第二王子殿下が臣籍降下して想い人と婚姻すれば争いを避けられる。王家にとっても悪い話ではない」
「父上、何故そんなに詳しいのですか?」
僕は不思議で仕方なかった。
こういっては何だが父は文官だが中級クラスだ。そんな父の知るような話ではないのに何故……?
「ウォーカー侯爵から内々に教えられていた」
「義父上から?!」
「ああ、年内に第二王子殿下の婚約を発表する手はずらしい。それに合わせてお前とミネルヴァ嬢の婚約を正式に交わしたいと仰っておられたんだ!」
「そんな……僕は……どうすれば……」
「もう何もするな。既にお前は侯爵家から除籍されている。二度とウォーカー侯爵家を名乗る事もミネルヴァ嬢を名前で呼ぶ事も近付く事も許されない」
「……そんな……」
「もう決まった事だ。家には置いてやる。ただし、男爵令嬢と一緒になる事は許さん」
「何故です!?」
「婿入りなら兎も角、そうではない。バルティール伯爵家に何の利益も有しない婚姻関係など許す訳にはいかん!!」
いつの間にかエリカは男爵家に帰されていた。
どうしてこうなったんだ。
僕は愛するエリカと一緒になりたかっただけだ。
家族から酷い扱いをされている彼女を助けたかった。
そこから救い出してあげたかった。
侯爵家で幸せな家庭を築きたかった。ただそれだけなのに……。
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