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4.恋の終焉1
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その人は私の初恋。
けれど、恋焦がれた人から愛し返される事はなかった。
衝動的に書いてしまった手紙。
普段の私からは考えられない皮肉を込めた手紙は、何故だか妙な達成感と満足感を覚えています。
ずっと好きでした。
ずっと彼だけを見つめ続けてきたのです。
今もなお、相手の女性に嫉妬の炎を燻ぶらせている程です。憎しみという感情を、これほどまでに抱いたのは生まれて初めてでした。
彼に想い人がいるとわかった時、私の中の何かが壊れたのです。
裏切られた思いで一杯でした。
目をつぶると、あの時の光景が鮮明に浮かび上がるのです。
忘れたくても忘れられない記憶。
「愛する女性がいるんだ。彼女と結婚したいと思ってる」
お義兄様は申し訳なさそうにしながら私にそう言いました。
嗚呼、それはなんて残酷な言葉なのでしょう。
「勝手な事を言っていると思っている。すまない。ミネルヴァに落ち度は無い。全て僕のワガママだ。ミネルヴァは何も悪くない」
そう仰られましても、私が愛するお義兄様が別の女性に想いを寄せているなんて……到底受け入れる事など出来ません。
「分かってくれとは言えない。だだ、エリカのお腹にはもしかしたら僕の子供がいるかもしれないんだ。その子のためにも……いや、それ以上に僕はエリカを日陰の身にはしたくない。彼女を幸せにしたいんだ」
はい? お義兄様の仰られている言葉が理解できません。
身体の関係まで進んでいるのですか!?
そのことに私は動揺を隠しきれませんでした。
私とはキスはおろか、手を握る事すらして下さらなかったではないですか!
『淑女は軽々しく男性と触れ合ってはならない。例えそれが婚約者であってもだ』
そう言って私を諭したのは他ならでもないお義兄様自身なのに!
勿論、婚前交渉は褒められたものではありません。
お堅い年配の貴族達が眉を顰めるような事でしょう。
ですが!
必ず結婚する婚約者同士であれば、お義兄様が仰るような行為に及ぶのは何も珍しくありません。
あぁぁぁぁぁぁ!!!!!
何故ですか!!
何故、私ではないのでしょうか!!? 何故、何故、何故!?
沸々とどす黒い感情が湧き出してくるのが分かります。
頬を緩めて微笑むお義兄様は、今までに見た事が無いほどに幸せそうなのです。
恥ずかしそうに嬉しそうに話すお義兄様。
カップを持ち上げる手。
その手が私以外の女性を抱きしめている。
その手が私以外の女性を愛でる。
その事実だけが頭の中を駆け巡り、気が狂いそうになります。
私のお義兄様なのに! 私以外の女性なんて見るなと叫びたい! そんな想いが止めどなく溢れ出てくるのを止められませんでした。
「お義兄様は……本当にそれでよろしいのですか?」
絞り出した私の声は、今にも泣き出してしまいそうな程に震えていたのが自分でも分かりました。
「ああ、彼女を愛しているんだ」
「後悔はありませんの?」
「ある訳がない」
迷いの無いお義兄様のお声。
お義兄様は決断されたのでしょう。
もし、ここで私が引き留めたとしてもお義兄様の意思は変わらないのが分かります。
だって、こんなにも幸せそうなお義兄様を見るのは初めてなのですから……。
幼い頃に夢見た花嫁衣裳の私。
横にいるお義兄様。
豪華絢爛な結婚式。
私達を祝う人々。
そうなると信じて疑わなかった未来。
それが今、音を立てて崩れていくのを感じました。
けれど、恋焦がれた人から愛し返される事はなかった。
衝動的に書いてしまった手紙。
普段の私からは考えられない皮肉を込めた手紙は、何故だか妙な達成感と満足感を覚えています。
ずっと好きでした。
ずっと彼だけを見つめ続けてきたのです。
今もなお、相手の女性に嫉妬の炎を燻ぶらせている程です。憎しみという感情を、これほどまでに抱いたのは生まれて初めてでした。
彼に想い人がいるとわかった時、私の中の何かが壊れたのです。
裏切られた思いで一杯でした。
目をつぶると、あの時の光景が鮮明に浮かび上がるのです。
忘れたくても忘れられない記憶。
「愛する女性がいるんだ。彼女と結婚したいと思ってる」
お義兄様は申し訳なさそうにしながら私にそう言いました。
嗚呼、それはなんて残酷な言葉なのでしょう。
「勝手な事を言っていると思っている。すまない。ミネルヴァに落ち度は無い。全て僕のワガママだ。ミネルヴァは何も悪くない」
そう仰られましても、私が愛するお義兄様が別の女性に想いを寄せているなんて……到底受け入れる事など出来ません。
「分かってくれとは言えない。だだ、エリカのお腹にはもしかしたら僕の子供がいるかもしれないんだ。その子のためにも……いや、それ以上に僕はエリカを日陰の身にはしたくない。彼女を幸せにしたいんだ」
はい? お義兄様の仰られている言葉が理解できません。
身体の関係まで進んでいるのですか!?
そのことに私は動揺を隠しきれませんでした。
私とはキスはおろか、手を握る事すらして下さらなかったではないですか!
『淑女は軽々しく男性と触れ合ってはならない。例えそれが婚約者であってもだ』
そう言って私を諭したのは他ならでもないお義兄様自身なのに!
勿論、婚前交渉は褒められたものではありません。
お堅い年配の貴族達が眉を顰めるような事でしょう。
ですが!
必ず結婚する婚約者同士であれば、お義兄様が仰るような行為に及ぶのは何も珍しくありません。
あぁぁぁぁぁぁ!!!!!
何故ですか!!
何故、私ではないのでしょうか!!? 何故、何故、何故!?
沸々とどす黒い感情が湧き出してくるのが分かります。
頬を緩めて微笑むお義兄様は、今までに見た事が無いほどに幸せそうなのです。
恥ずかしそうに嬉しそうに話すお義兄様。
カップを持ち上げる手。
その手が私以外の女性を抱きしめている。
その手が私以外の女性を愛でる。
その事実だけが頭の中を駆け巡り、気が狂いそうになります。
私のお義兄様なのに! 私以外の女性なんて見るなと叫びたい! そんな想いが止めどなく溢れ出てくるのを止められませんでした。
「お義兄様は……本当にそれでよろしいのですか?」
絞り出した私の声は、今にも泣き出してしまいそうな程に震えていたのが自分でも分かりました。
「ああ、彼女を愛しているんだ」
「後悔はありませんの?」
「ある訳がない」
迷いの無いお義兄様のお声。
お義兄様は決断されたのでしょう。
もし、ここで私が引き留めたとしてもお義兄様の意思は変わらないのが分かります。
だって、こんなにも幸せそうなお義兄様を見るのは初めてなのですから……。
幼い頃に夢見た花嫁衣裳の私。
横にいるお義兄様。
豪華絢爛な結婚式。
私達を祝う人々。
そうなると信じて疑わなかった未来。
それが今、音を立てて崩れていくのを感じました。
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