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終わり

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美術品として人々の見世物になってから暫くの後、古い友人達と再会した。
まさか生きて会えるとは思いもしなかった。
嘗ての故郷で皇帝に愛された品々。

何でも、この国で期間限定の展示をされるために来たらしい。
それを聞いて納得した。
この国の人間は美しい物が好きだ。
世界各地の美しい品々を大勢の一般人に見せる事が大好きだ。

理由は兎も角、懐かしい友人と再び会えたことは純粋に嬉しい。

友人達も私が生きていたことに酷く驚いていた。
既に死んだものと思われていたらしい。
無理もない。
まさか異国の地で何百年も生きているとは想像も出来ないだろう。
嘗ての故郷でさえ私達のような存在は生き永らえることが難しい。聞く処によると、何百、何千、となる他の仲間は戦乱の中で亡くなっていた。それもまた致し方ないこと。

私がこの国に来る前に軽く呪ってやった叔父皇帝は数年後に死んだようだ。
友人曰く、私を探すために今まで交流の無かった国々とまで国交を開いたとか。探しまくって国の権力者にも聞いてまわったそうだが手掛かりが全くなくて、当時はかなり落ち込んでいたそうだ。
探していたのか……知らんぞ?そんなこと。
いや、待てよ。
この国の人間は妙な処で天然が入っている。
恐らく、他国には理解しがたい思考回路と天然具合で私の追及を難なく交わしたような気がする。寧ろ、気が付かなかった可能性も大いにある。
うん。きっとそうだ。間違いない!

叔父皇帝は、公式記録に若き皇帝の存在をなかった事にしたというではないか!許すまじ!!!

し・か・も。

自分の出自まで書き換えたというから呆れるしかない。
身分の低い母親の存在を抹消したというのだ。
おまけに、自分が皇后腹の皇子であると記録した。
……バレるのでは?
友人は叔父皇帝は徹底して隠蔽したので証拠は残っていないらしい。
何故、そんなバカげたことに労力を使うのだろうか。
勿論、この世に完璧というものはない。
何処かに必ずほころびが出るはず。
叔父皇帝のアホな隠蔽工作を「怪しい」と思う人間が大勢いる。
残っている資料で真実を追求する者達がいるらしいので是非とも頑張って欲しい処だ。

皇位簒奪を果たした叔父皇帝は官人と折り合いが悪く、信頼を得る事は死ぬまで出来なかったらしい。よし!
叔父皇帝が亡くなった後は、案の定、皇位争いが勃発した。まぁ、そうだろうな。
新たに皇帝になった長男は元々病弱だったそうで即位後間もなく亡くなった。毒殺では?と思ったが、どうやら本当に病死のようだ。珍しい事もあるものだ。
その後、息子が皇帝になったものの、皇位を巡っての争いが終わる事はなく、実の叔父に命を狙われ続けたらしい。また叔父か!!!
謀反人として叔父達は始末して皇統を守ったようだ。

ああああああああ!!!!

若き皇帝も叔父を殺していれば……。

いけない、いけない。
平常心が……。

歴代の皇帝の中には、反乱軍に捕まった皇帝もいたそうだ。
ざまぁ。
ただし生きて戻って来たと聞いた時はガッカリした。
反乱軍よ、何故、殺さない?
ま、こればかりは仕方ないか。
皇帝は生きてこそ値打ちがあるというものだ。



若き皇帝のその後は友人達にも分からなかった。
上手く逃げれたのか、それとも自ら命を絶ったのか。
はっきりとは分からないが、僧侶になった痕跡こんせきがあるらしい。
それを聞いたて安堵した。
友人達は、歴代の皇族同様に自害したか、臣下に殺されたか、野垂れ死んだか、どれかだろうと言う。辛辣だな。だが、私は僧侶として天竺に向かったと思っている。
随分と甘い考えだと思うが、なんにせよ、この国の影響をもろに受けた身だ。致し方あるまい。

簒奪された王朝の最後は、他民族によって呆気なく滅んだ。

ざまぁ。
もう一度いう。ざまぁみろ!
私の恨みを思い知ったか!!!

他民族の王朝は三百年後に滅んだ。
ん?
なら今は?
何処の民族が皇帝をしてるのだろう。

疑問を友人達にぶつけてみると、なんと、王朝がないというではないか!
皇帝が居ない?
そんな事あるのだろうか……。
今は、全く異なった政策をしているようで『皆が平等な社会』を目指していると聞いた。

……狂ったか?
あの大地で『平等』とは……誰がそんなアホな事を言いだしたんだ?
え?平民が言った?
ならば下剋上狙いか。下剋上もまた日常茶飯事だったので大して珍しくも無い。

はっ!!!

まさか、そういう美辞麗句を建前とした支配を目論んでいるのか!?
いやはや、中々やるではないか。
力こそが全て!と言わんばかりの国だったのに。

自分達がルールだ!
我らが正義の使者だ!
我々が世界の中心だ!!!

今でいう中二病が多かったのに……ほろり。
漸く、病が直ったのかと思うと涙が……。

おや?
皆、どうした?
妙な顔をして?

ん?
私が何だと?
随分この国に溶け込んでいると?

それはそうだろう。
何百年もこの国に住んでいるのだからな。

まあ、今の私はこの国の物だ。

ああ、大陸に戻る事はない。戻る気もないがな。
だから、お前達、精々生き延びろよ。

今度会う時は一体どれだけの友人が生き残っているか楽しみだ。



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2022.06.12 ユーザー名の登録がありません

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