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番外編
43.とある弁護士side
しおりを挟む「とにかく御子息と一緒にここから出てもらいます!!」
私の言葉にも彼女は興味のなさそうな顔のまま「好きにすればいいわ」と言い放ち、玄関のドアを開けっぱなしのまま中へと戻り、椅子にドカッと座ると酒を飲み始めた。
我々の存在を忘れたかのような態度に怒りを覚える。これが、あれ程美しかった女性か? 別人にしか見えない。これが彼女の本性だというのか!?
こんな女のせいでライアン様は将来を暗く閉ざされたというのか。ライアン様の苦労を思うとお腹の奥がムカムカしてくる。駄目だ。冷静になれ。今は目の前の事に集中しろ。
彼女の変貌ぶりに怒りを感じている場合ではない。本来の目的は彼女よりも御子息なのだと思い直した。
私はエラ嬢を無視して室内に入る。
護衛は念のために玄関で見張りに徹してもらった。
元から老朽化していたのだろう。薄汚れた部屋は住んでいる女によって更に酷い有り様だった。
服とゴミの区別もなく散乱している。
部屋の隅には埃が積もっている。
虫が湧いていそうだ。
金がない割には酒の瓶が多く目につく。酒代だけは惜しくないらしい。
一通り見回しても子供が見当たらない。いる気配すらない。
そろそろ二歳だ。
だというのに、この部屋には子供の遊戯が一切ない。いや、子供がいると思しきものが全く無い。
「エラ嬢、御子息は何処ですか?」
「子供?その辺にいないの?」
「いません」
「なら奥の部屋でしょ?見ればわかるじゃない」
まるで興味が無いというように答えてくる彼女に苛立つもののグッと堪える。
ここで怒っていては何一つ解決しないどころか時間だけ無駄に費やしてしまう。彼女が指さした方角には細い通路が確かにあった。そして奥には確かに扉があるようだ。
「ありがとうございます。失礼しますよ」
私はおざなりに感謝を述べて奥の部屋の扉を開けた。
そこには…………。
――――地獄が広がっていた。
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