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番外編
37.姉side
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今日は、弟の結婚式。
「まさか王様と結婚するとはね」
弟の隣に立つ長身の美丈夫。輝く金の髪に新緑の瞳。子供の頃は少女のように可愛らしい容貌だったのにいつの間にか「男」になっていた。
僅か十四歳で王位に就いた国王。
『ノアを伴侶として迎い入れたい』
至極当たり前に発した爆弾発言を落とした国王に、私は驚かなかった。
それは私だけじゃない。
両親も特に驚かなかった。
それは小さな王子様がノアに並々ならず想いを寄せていた事に気が付いていたからに他ならない。鈍感王の異名を欲しいままにしている弟は全く気付かなかったけど、周りは当然気付いてた。まぁ、小さな王子様が分かり易かったというのもある。密かに応援していた事をあの弟は死ぬまで知らないだろう。
微妙な生い立ち故に愛情を素直に表す事が下手だった。
不器用と言うにはあまりにも痛ましかった。
欲しいものを欲しいと言って手に入れた事が無かったのだろう。
大切なものは宝箱に入れて隠さなければ奪われると思ったのかもしれない。
――男の王妃が認められるのは今だけだ。
――諸外国には同性婚に厳しい国は多い。
――ノアが離縁されたら僕が迎えに行く。
――代々の国王陛下は妃を臣下に下賜する時がある。
――それまでの間、王家に僕のノアを預けておく。
ノアが王妃になると知ったその日にライアンは家にきて勝手に宣言していった。
あの時、父さんがいなくて本当に良かった。
もし、家に居てライアンのセリフを聞いていたら血の雨が降っただろうから。
ライアンはノアがいずれ離婚又は下賜されると考えている。
まぁ、あの二人の関係を正確に知らない人間からすればそう判断されてもおかしくない。
いつの日か取り戻せると思っているライアンを哀れに思うべきか悩むところだわ。
ライアンは知らない。
ルーカスがどれだけノアを愛しているのか。
激情家に見えてあれで恐ろしいほどの策略家。
目的のためなら手段を選ばない狡猾さを持っているのにそれを相手に見せないルーカスにライアンが勝てるとは思えない。
ライアン同様にノアは熱烈な求愛を受けた。
――ずっと好きだったって言われたんだ。愛してるって、家族になって欲しいって。
――両親からまともな愛情を貰えなかったから、自分の息子にどう接していいのか分からないみたいなんだ。
――オリバーの母親になって欲しいって言われたよ。僕は男なのにね。
――ルーカスっておかしい。オリバーにまで嫉妬するんだ。可愛いよね。
策士だ。
ルーカスは的確に狙いを定めてノアを口説いている。
ライアンと違って自分の愛情だけを押し付けている訳じゃない。息子をダシにつかって口説いている。
元々、兄弟愛的なものをルーカスに感じていたノアには時間をかけて恋愛をしなければならない事を理解した上での作戦だろう。
実に巧妙だ。
ノアの不安要素を取り除いてもいるから、あの子も安心してルーカスの傍に居られる。
自分の立場と地位への責任。
他者に対する警戒心と危機管理能力。
失う事への恐怖と怯え。
そのすべてがライアンには持ち合わせていないもので、彼が今一理解していないものでもある。
そしてノア自身も持っていないものだ。
ただ、ノアはライアンとの生活で漠然とした不安は常に付きまとっていた筈。何も言わなかったけれど「このままでいいのだろうか?」「自分は男でライアンの家族にはなれない」「名門貴族の彼に子供を残せない」と言ったものは心の奥底にあっただろうに。
ルーカスはその全てを最初からクリアにしてからノアを得た。
国王としての地位の盤石、貴族同士のバランス、世継ぎの問題。
その執念深さだけは評価に値するほどに。
私の弟はとんでもない男を伴侶にしたものだ。
でもまぁ、嫁に出すなら愛してくれるところに行くのが間違いなく正解よね。
「まさか王様と結婚するとはね」
弟の隣に立つ長身の美丈夫。輝く金の髪に新緑の瞳。子供の頃は少女のように可愛らしい容貌だったのにいつの間にか「男」になっていた。
僅か十四歳で王位に就いた国王。
『ノアを伴侶として迎い入れたい』
至極当たり前に発した爆弾発言を落とした国王に、私は驚かなかった。
それは私だけじゃない。
両親も特に驚かなかった。
それは小さな王子様がノアに並々ならず想いを寄せていた事に気が付いていたからに他ならない。鈍感王の異名を欲しいままにしている弟は全く気付かなかったけど、周りは当然気付いてた。まぁ、小さな王子様が分かり易かったというのもある。密かに応援していた事をあの弟は死ぬまで知らないだろう。
微妙な生い立ち故に愛情を素直に表す事が下手だった。
不器用と言うにはあまりにも痛ましかった。
欲しいものを欲しいと言って手に入れた事が無かったのだろう。
大切なものは宝箱に入れて隠さなければ奪われると思ったのかもしれない。
――男の王妃が認められるのは今だけだ。
――諸外国には同性婚に厳しい国は多い。
――ノアが離縁されたら僕が迎えに行く。
――代々の国王陛下は妃を臣下に下賜する時がある。
――それまでの間、王家に僕のノアを預けておく。
ノアが王妃になると知ったその日にライアンは家にきて勝手に宣言していった。
あの時、父さんがいなくて本当に良かった。
もし、家に居てライアンのセリフを聞いていたら血の雨が降っただろうから。
ライアンはノアがいずれ離婚又は下賜されると考えている。
まぁ、あの二人の関係を正確に知らない人間からすればそう判断されてもおかしくない。
いつの日か取り戻せると思っているライアンを哀れに思うべきか悩むところだわ。
ライアンは知らない。
ルーカスがどれだけノアを愛しているのか。
激情家に見えてあれで恐ろしいほどの策略家。
目的のためなら手段を選ばない狡猾さを持っているのにそれを相手に見せないルーカスにライアンが勝てるとは思えない。
ライアン同様にノアは熱烈な求愛を受けた。
――ずっと好きだったって言われたんだ。愛してるって、家族になって欲しいって。
――両親からまともな愛情を貰えなかったから、自分の息子にどう接していいのか分からないみたいなんだ。
――オリバーの母親になって欲しいって言われたよ。僕は男なのにね。
――ルーカスっておかしい。オリバーにまで嫉妬するんだ。可愛いよね。
策士だ。
ルーカスは的確に狙いを定めてノアを口説いている。
ライアンと違って自分の愛情だけを押し付けている訳じゃない。息子をダシにつかって口説いている。
元々、兄弟愛的なものをルーカスに感じていたノアには時間をかけて恋愛をしなければならない事を理解した上での作戦だろう。
実に巧妙だ。
ノアの不安要素を取り除いてもいるから、あの子も安心してルーカスの傍に居られる。
自分の立場と地位への責任。
他者に対する警戒心と危機管理能力。
失う事への恐怖と怯え。
そのすべてがライアンには持ち合わせていないもので、彼が今一理解していないものでもある。
そしてノア自身も持っていないものだ。
ただ、ノアはライアンとの生活で漠然とした不安は常に付きまとっていた筈。何も言わなかったけれど「このままでいいのだろうか?」「自分は男でライアンの家族にはなれない」「名門貴族の彼に子供を残せない」と言ったものは心の奥底にあっただろうに。
ルーカスはその全てを最初からクリアにしてからノアを得た。
国王としての地位の盤石、貴族同士のバランス、世継ぎの問題。
その執念深さだけは評価に値するほどに。
私の弟はとんでもない男を伴侶にしたものだ。
でもまぁ、嫁に出すなら愛してくれるところに行くのが間違いなく正解よね。
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