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本編
24.同僚side
しおりを挟む「だからでしょうね、大変らしいですよ。学院そのものが経営不振に陥っているようですから」
「え?なに?廃校になるの?」
「その寸前らしいですね。僕も後輩から聞いた話ですが、学院の連中、誰が寄付金を出しているか知らなかったみたいなんですよね。知って真っ青な顔をしてました。笑えます」
「マジ?」
「奨学金制度も廃止になって焦ったんでしょうね。学生達がタナベル家に文句を言いに行ったらしいです」
「最悪」
「まぁ、タナベル家は相手にしなかったようです。『恩知らずに出す金はない』と言って追い返したそうですから、今後も奨学金制度が復活することはないでしょうね」
うん。復活する必要はないわ。
タナベル商会の会長は自分の奥さんが学院の卒業生だから寄付することにしたって前に言ってたわ。二人の子供も学院に通うからって理由で奨学金制度を始めたくらいだもの。金で心は買えない。でも『恩人に仇なさない』という最低限の気持ちは持つべきよね。それができない人間なんかのために何で金出さないといけないんだって話だし。
「それじゃあ寄付金はゼロになったのね」
「はい。だから学院も必死なんでしょう。生徒達の親からも非難の声が殺到しているそうですから」
「あーーー、なるほど。それであれだけの人数が来ていたのね」
「はい。それでなくてもノア先輩の件があってからというもの学院全体が荒れていますからね。先生方も手を焼いているそうです」
「うわ~、それはご愁傷様。でも自業自得だから同情はできないわ~~」
≪僕だけのぉぉノアぁぁーーッ!!!≫
≪ノアの笑顔をこの目に焼き付けたいんだぁぁぁぁ!頼むぅぅ!≫
アホライアン。誰がお前のもの、だ。別れたんだからもう違うでしょ!
「ところであの男いつまで叫ぶつもりなのかしら?いい加減ウザイんだけど」
「もうちょっとの我慢だと思いますよ。もっとも、あの人は今日一日ここで叫び続けるつもりのようですがね」
「……はい?」
ちょっと意味が分からない。
叫び続けてどうするの?
「もう少しの我慢って?」
「今日の昼過ぎに国王陛下が視察にいらっしゃるんです。だからそれまでには護衛兵がライアンさんを撤去させるでしょう」
「……マジで?」
「大マジです。急遽決まったようですよ。対応するのは所長たちですから僕達は関係ありませんけどね。そのため今日は午前中まで。午後からは休みになったんです」
「あらそうなの?知らなかったわ」
「ジュリア先輩、今日遅刻してましたからね」
「あははは」
「誤魔化してもダメです。今度遅刻したら給料天引きするって言ってましたよ」
うわっ!最悪!!
今度から気を付けよう。
≪ノォォオオオオッアァァァァァァ!!!≫
ライアンが絶叫する。
それにしても一向に収まる気配がない叫びだわ。というか、段々悪化してきているように感じるのは気のせいじゃないわよね?もしかしてライアンの奴、禁断症状でも出てるんじゃないかしら?あれだけノアにベッタリだったもの。ノアがいないからアホを止める人間がいない。
ライアン自身は反省してるみたいだけど、彼奴の家の連中は問題だらけだもの。そんなとこにノアはやれないわ。絶対に無理。ノアは別に男が好きって訳じゃない。ライアンのしつこすぎる求愛に屈した処は否めないもの。
今度、誘って飲み会に連れていこうかな?
そこで女の子を紹介するのもアリよね?
何もライアンと元サヤに戻る必要なんて全然ないんだから。
≪あいたいよぉぉぉぉぉぉぉ!!≫
蛇のようにしつこい男なんて論外よね。
なまじ優秀で顔がよかったから今までスルーしてきたけど、幾ら美形でもストーカーは勘弁。
ノアに普通の恋をさせてあげよう!!
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