【完結】魔法薬師の恋の行方

つくも茄子

文字の大きさ
上 下
11 / 52
本編

11.男爵令嬢side

しおりを挟む
 
 ホテルでの一時は最高だったわ。
 ライアンに優しく愛され、時に激しく求められて。

 ああ!
 あああああ!!

 これで彼は私の物だわ!

 神様!神様!神様!
 どうか私にライアンの子を授けてください!
 彼となら誰よりも幸せになれる。
 愛し愛される夫婦。
 可愛い子供達。
 あの男には絶対手に入れられないもの。
 私ならライアンに用意してあげられるのよ!
 
 
 ――神様、どうか彼の子供を授けて下さい!



 ライアンとの夢のような一夜。
 その日から数週間後に、私の体に異変が訪れた。
 

 食べ物の匂いで吐き気を感じるようになり、睡魔まで襲ってくるようになった。微熱が続き食欲もなくなった。そして月のものが全く来なくなってしまった。
 私は歓喜した。
 だってライアンとの子供に間違いないもの。
 病院で検査してハッキリと「妊娠」と診断された時は嬉し過ぎてどうにかなってしまいそうだった。
 
 すぐにライアンに伝えないと!
 ああ!そうだわ!喜びを家族で分かち合わないと!
 キング侯爵に伝えると物凄く喜んでくれたわ。
 どうやら、侯爵もあの男の存在を苦々しく思っていたみたい!
 やっぱりそうよね。
 男じゃ、子供はできないもの。仕方ないわ。誰だって孫の顔を見たいものよ。特に貴族なら自分の血筋を大事にする。さぁ、邪魔者をさっさと追い出さなくっちゃ!私達の素晴らしい未来にあの男は不要よ!必要ないわ! それにしてもあの男があんなにもあっさりと承諾するなんてね。もっとゴネるとおもったんだけど。
 でも良かった!本当に良かった!やっと私の苦労が報われる時が来たんだから! 私はライアンと一緒になって、幸せな家庭を築くの!父も「よくやった」と言ってくれたわ!

 お腹が目立ち始める前に結婚式を執り行わなくっちゃ!
 ライアンが変な事を言っているけど気にする必要はないって侯爵も言ってたわ。今はとにかくお腹の子供優先だからって。父と侯爵は気が早すぎるわ。もう男の子用の遊戯を買ってくるの。産まれてくるのはまだ先なのにね。ふふ。侯爵家の侍女頭の人が「御息女だったらどうなさるんですか。女児の物も一緒に準備するべきです」とか言ってプリプリ怒ってたわ。なんでかしら?生まれてくるのは「男児」以外ありえないっていうのに。

 幸福に酔いしれていた私は気付かなかった。

 ノア・タナベルを愛する者達の怒りを――――

 そして、彼を愛する者達は地位と財産をこれでもかと言う程持ち合させていた事に。
 平民の暗い男。
 貴族に、それも侯爵家に楯突くことなんて出来ないと高を括っていた。
 本当に知らなかったの。
 彼がタナベル商会の息子だってことを。
 貴族すら恐れる商人に息子だってことを。
 私が気付いた時には味方が誰もいなくなってから。協力者たちの末路を知ったのは更に後のこと。

 ノア・タナベルは決して手を出してはいけない相手だった。
 
 決して怒らせてはならない存在。

 私達が「彼」の逆鱗に触れてしまった事に気付いた時は既に遅かった。




しおりを挟む
感想 40

あなたにおすすめの小説

【完結・ルート分岐あり】オメガ皇后の死に戻り〜二度と思い通りにはなりません〜

ivy
BL
魔術師の家門に生まれながら能力の発現が遅く家族から虐げられて暮らしていたオメガのアリス。 そんな彼を国王陛下であるルドルフが妻にと望み生活は一変する。 幸せになれると思っていたのに生まれた子供共々ルドルフに殺されたアリスは目が覚めると子供の頃に戻っていた。 もう二度と同じ轍は踏まない。 そう決心したアリスの戦いが始まる。

【完結】浮薄な文官は嘘をつく

七咲陸
BL
『薄幸文官志望は嘘をつく』 続編。 イヴ=スタームは王立騎士団の経理部の文官であった。 父に「スターム家再興のため、カシミール=グランティーノに近づき、篭絡し、金を引き出せ」と命令を受ける。 イヴはスターム家特有の治癒の力を使って、頭痛に悩んでいたカシミールに近づくことに成功してしまう。 カシミールに、「どうして俺の治癒をするのか教えてくれ」と言われ、焦ったイヴは『カシミールを好きだから』と嘘をついてしまった。 そう、これは─── 浮薄で、浅はかな文官が、嘘をついたせいで全てを失った物語。 □『薄幸文官志望は嘘をつく』を読まなくても出来る限り大丈夫なようにしています。 □全17話

【奨励賞】恋愛感情抹消魔法で元夫への恋を消去する

SKYTRICK
BL
☆11/28完結しました。 ☆第11回BL小説大賞奨励賞受賞しました。ありがとうございます! 冷酷大元帥×元娼夫の忘れられた夫 ——「また俺を好きになるって言ったのに、嘘つき」 元娼夫で現魔術師であるエディことサラは五年ぶりに祖国・ファルンに帰国した。しかし暫しの帰郷を味わう間も無く、直後、ファルン王国軍の大元帥であるロイ・オークランスの使者が元帥命令を掲げてサラの元へやってくる。 ロイ・オークランスの名を知らぬ者は世界でもそうそういない。魔族の血を引くロイは人間から畏怖を大いに集めながらも、大将として国防戦争に打ち勝ち、たった二十九歳で大元帥として全軍のトップに立っている。 その元帥命令の内容というのは、五年前に最愛の妻を亡くしたロイを、魔族への本能的な恐怖を感じないサラが慰めろというものだった。 ロイは妻であるリネ・オークランスを亡くし、悲しみに苛まれている。あまりの辛さで『奥様』に関する記憶すら忘却してしまったらしい。半ば強引にロイの元へ連れていかれるサラは、彼に己を『サラ』と名乗る。だが、 ——「失せろ。お前のような娼夫など必要としていない」 噂通り冷酷なロイの口からは罵詈雑言が放たれた。ロイは穢らわしい娼夫を睨みつけ去ってしまう。使者らは最愛の妻を亡くしたロイを憐れむばかりで、まるでサラの様子を気にしていない。 誰も、サラこそが五年前に亡くなった『奥様』であり、最愛のその人であるとは気付いていないようだった。 しかし、最大の問題は元夫に存在を忘れられていることではない。 サラが未だにロイを愛しているという事実だ。 仕方なく、『恋愛感情抹消魔法』を己にかけることにするサラだが——…… ☆描写はありませんが、受けがモブに抱かれている示唆はあります(男娼なので) ☆お読みくださりありがとうございます。良ければ感想などいただけるとパワーになります!

【完結】薄幸文官志望は嘘をつく

七咲陸
BL
サシャ=ジルヴァールは伯爵家の長男として産まれるが、紫の瞳のせいで両親に疎まれ、弟からも蔑まれる日々を送っていた。 忌々しい紫眼と言う両親に幼い頃からサシャに魔道具の眼鏡を強要する。認識阻害がかかったメガネをかけている間は、サシャの顔や瞳、髪色までまるで別人だった。 学園に入学しても、サシャはあらぬ噂をされてどこにも居場所がない毎日。そんな中でもサシャのことを好きだと言ってくれたクラークと言う茶色の瞳を持つ騎士学生に惹かれ、お付き合いをする事に。 しかし、クラークにキスをせがまれ恥ずかしくて逃げ出したサシャは、アーヴィン=イブリックという翠眼を持つ騎士学生にぶつかってしまい、メガネが外れてしまったーーー… 認識阻害魔道具メガネのせいで2人の騎士の間で別人を演じることになった文官学生の恋の話。 全17話 2/28 番外編を更新しました

出戻り聖女はもう泣かない

たかせまこと
BL
西の森のとば口に住むジュタは、元聖女。 男だけど元聖女。 一人で静かに暮らしているジュタに、王宮からの使いが告げた。 「王が正室を迎えるので、言祝ぎをお願いしたい」 出戻りアンソロジー参加作品に加筆修正したものです。 ムーンライト・エブリスタにも掲載しています。 表紙絵:CK2さま

【完結】オーロラ魔法士と第3王子

N2O
BL
全16話 ※2022.2.18 完結しました。ありがとうございました。 ※2023.11.18 文章を整えました。 辺境伯爵家次男のリーシュ・ギデオン(16)が、突然第3王子のラファド・ミファエル(18)の専属魔法士に任命された。 「なんで、僕?」 一人狼第3王子×黒髪美人魔法士 設定はふんわりです。 小説を書くのは初めてなので、何卒ご容赦ください。 嫌な人が出てこない、ふわふわハッピーエンドを書きたくて始めました。 感想聞かせていただけると大変嬉しいです。 表紙絵 ⇨ キラクニ 様 X(@kirakunibl)

悪役側のモブになっても推しを拝みたい。【完結】

瑳来
BL
大学生でホストでオタクの如月杏樹はホストの仕事をした帰り道、自分のお客に刺されてしまう。 そして、気がついたら自分の夢中になっていたBLゲームのモブキャラになっていた! ……ま、推しを拝めるからいっか! てな感じで、ほのぼのと生きていこうと心に決めたのであった。 ウィル様のおまけにて完結致しました。 長い間お付き合い頂きありがとうございました!

六日の菖蒲

あこ
BL
突然一方的に別れを告げられた紫はその後、理由を目の当たりにする。 落ち込んで行く紫を見ていた萌葱は、図らずも自分と向き合う事になった。 ▷ 王道?全寮制学園ものっぽい学園が舞台です。 ▷ 同室の紫と萌葱を中心にその脇でアンチ王道な展開ですが、アンチの影は薄め(のはず) ▷ 身代わりにされてた受けが幸せになるまで、が目標。 ▷ 見た目不良な萌葱は不良ではありません。見た目だけ。そして世話焼き(紫限定)です。 ▷ 紫はのほほん健気な普通顔です。でも雰囲気補正でちょっと可愛く見えます。 ▷ 章や作品タイトルの頭に『★』があるものは、個人サイトでリクエストしていただいたものです。こちらではいただいたリクエスト内容やお礼などの後書きを省略させていただいています。

処理中です...