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本編
10.男爵令嬢side
しおりを挟む「パパ、あの人は誰なの?」
「ん?誰の事だい?」
「あそこにいる男性よ。アッシュグレーの髪をした人。とっても綺麗だわ」
「ああ、彼はキング侯爵家の御子息だ」
「侯爵家!」
「ライアン・キング様だ。次期侯爵で、将来を期待された魔術師でもある」
「凄い!!」
「ははっ。エラはライアン様の後輩になるんだ。もしかするとエラも魔術師になるかもしれないな」
「え!?」
「魔力を持つ特別な子は魔術学院に通うのが決まりだ。エラも来年からそこに通う事になる」
「私が魔術師……」
「適正があれば、の話だが。その可能性はある」
父の話に俄然ヤル気が出た。
名前は、ライアン・キング。
父の話では、名門貴族の御曹司で未来の魔術師長とまで謳われるらしく、彼は注目の的だっていうわ。それも納得ね。家柄や魔術師としての実力もそうだけど、私が目を引いたのはその彫刻のように美しい姿形。一目で恋に落ちたわ。
私が魔術学院に入学した時は残念なことにライアンは卒業した後だったけど、講演会などで何度も見かけてはその姿に見惚れた。
あんなに綺麗な男性は初めて見た。
声だって凄く良いの。
ウットリしちゃうわ。
初めて見た時からドキドキが止まらない。
もうすっかり彼に夢中になっていたわ。
家でも彼の事ばかり話すものだから父は笑って言うの。
『そんなに好きなら結婚すればいい』
目から鱗だった。確かに結婚するなら彼よね。
でも、流石に侯爵家と男爵家じゃ身分が違う事は何となく分かる。
『はははっ。今は身分なんて関係ない。特にキング侯爵家は魔力持ちの令嬢がお好みだ。エラにも十分チャンスはある』
父の言葉に勇気を貰ったわ。
いつかは彼と結ばれたい。
彼の恋人になりたい。
彼の妻になりたい。
その夢を実現させないと!!
ちょうど、彼が立ち上げたサークルにも入会したわ。
そこで直に顔を会わせるうちに彼が見た目だけでなく中身もパーフェクトな好青年であることに気づいたの。相手が誰であっても態度を変えたりしない。平等で紳士的な優しさを持っていて、困っている人は見捨てない。そんな彼だからこそ惹かれていったのよ。
私は彼に会うためにサークルに参加しているといっても過言ではなかった。
でも、サークルを通して分かった事があったわ。
それは彼に「男」の恋人がいるということだった。
あんなに素敵な彼が男を恋人にするなんて思わなかった。
相手の男の名前はノア・タナベル。
ちらっと見たけど黒髪の地味な男だった。
ライアンの横に立つには相応しくない!
きっとノア・タナベルが体を使ってライアンを誑かしたに決まっているわ!
男のくせに!
そうじゃなきゃ考えられない。
同性愛なんて非生産的で汚らわしいものライアンがする筈ないもの。
だからチャンスを待ったわ。
彼はノア・タナベルに騙されているんだもの。
私の愛の力で助けてあげないと!
そう思って数年、やっとチャンスが舞い込んできた。
「最近、ノアが構ってくれないんだ~~っ。仕事が忙しいみたいでさぁ。僕はこんなにもノアを愛してるって言うのに!」
「それは彼が悪いわ。あなたをこんなに悲しませて」
お酒が入っているせいもあるでしょうね。彼は珍しく愚痴ばかりこぼしていた。いつも完璧な彼の違う一面を見れて、少しだけ嬉しかった。でも同時に苛ついた。なんであんな冴えない男のためにライアンが振り回されているのか分からなかったから。
「さぁ、飲んで飲んで」
「う~~ん……あれ?他の皆は?」
「ああ!皆は先に酔いつぶれちゃって帰ったわ」
「え~~~~!いつのまに?」
「そんなことより、さぁもっと飲んで。嫌な事は飲んで忘れちゃいましょう」
酔っぱらっているライアンの返事は聞かずにグラスにお酒を入れる。勿論、アルコール度数の高いものばかり選んだわ。
あらかじめ準備しておいた媚薬を酒の中に入れライアンに飲ませた。効果は数分もしないうちに現れた。体が火照り息遣いも荒くなったのだ。
「大丈夫、私が介抱してあげるわ」
そっと耳元で囁きベッドへと押し倒す。後は欲望のままに身を任せるだけで良かった。今まで我慢してきた想いを全てぶつけるように激しく抱き合ったわ。私の方が先にイってしまったぐらい気持ち良くて興奮した。
ふふふ。これでもう私だけのライアンよ。もう誰にも渡さない!!!
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