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【プロローグ】
始まり
しおりを挟むエデンの園。
そこには美しい花々が咲き誇り、清らかな泉が湧き、沢山の果実が植えられた地上の楽園であった。
楽園には様々な多種族達が仲良く暮らしていた。
世界を創った神は特に自身に似せて創った『二人の人間』をこよなく愛したそうだ。『二人の人間』は、神から「どの果実を食べても構わない。だが愛しい子供達よ、この“知恵の樹”の実だけは食べてはならぬ」と厳しく戒められていた。
『二人の人間』は神を慕っていたので、言いつけ通りに“知恵の樹”の実だけは食べなかった。
だが、ある時、『二人の人間』の内の一人が蛇に唆されて“知恵の樹”の実を食べてしまった。
最初は一口だけ、という思いも、その実の美味しさに抗う事が出来なくなってしまっていた。気付いた時には実は食べ終わっていた。
「こんなにも美味しい実は初めて食べたわ。そうだ!もう一人にも食べさせてあげよう」
それが禁断の果実である事をすっかり忘れてしまった『人間』は、もう一人の『人間』にも食べさせた。“知恵の樹”の実を食べた『二人の人間』は、神と同じ“知恵”を手に入れ、自分達が『男』と『女』である事を知った。
食べてはいけない“知恵の樹”の実を食べた『二人の人間』は、神を激怒させ、楽園から追放されてしまった。
“知恵の樹”の実を食べた事によって『二人の人間』は、自分達が何者なのかを知ると同時に、善悪を知る者となっていた。
楽園を追われた『男女』はその後、終わりの分からない長い旅に出た。
いつ終わるか分からない旅であったが、旅の途中で、『子供』が出来た。二人の血を引く『子供』だ。
『男女』は『子供』を得た事で“父性”と“母性”の感情を知り、『家族』という括りを新たに造った。
『大勢の家族』は、村を造り、街を造り、国を造った。
嘗て、神に最も愛された『二人の人間』は、地上界の神になっていた。
地上界の神になった『二人の人間』の旅の終わりは『生命の終焉』であった。
生みの親である神を怒らせた『二人の人間』。
彼、彼女は、神から罰を受けていた。
それは、『限られた命』と『支配』である。
神は『二人の人間』を愛していた。
特に、自分と同じ姿をした『男』をより深く愛しんでいたのだ。
神は知っていた。『男』に“知恵の樹”の実を食べさせたのが『女』である事を。
『女』のせいで『男』が堕落させられた事を酷く嘆いた神は、堕落させられ続ける哀れな『男』の寿命を『女』よりも短くし、それと同時に、『男が女を支配する存在』にしてやった。
これは、最初に自分を裏切った『女』に対する罰であり、自分と同じ『男』が二度と支配されないためのものでもあった。
そして、寿命を『女』より短くする事で生きる苦痛から解放してあげようという、神なりの心遣いでもあった。
神は忘れている。
善悪を知ったのは『女』だけでない『男』も同じだという事を。
そう、『悪』も知ったのだ。
『男』が『女』を支配した。
時間を、行動を、自由を、一生を――。
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