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王太子side

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「以上がスタンリー公爵家とヤルコポル伯爵家の婚約解消とその後の顛末でございます」
 
「そうか。ご苦労だった」

 
 王宮の一室。
 王太子のプライベートルームで王家の影からの報告を受けていた。
 
 乳母に泣かれて仕方なくヴィラン・ヤルコポル伯爵子息を保護したが……出来の悪い息子を持つと親は大変だ。乳母の二人の息子は既に私の側近から外されている。

 優秀な二人だった。
 残念でならない。

 だが、これでヤルコポル伯爵家はスタンリー公爵家の……いや、宰相の派閥から弾き出された。
 今なら伯爵一家を王家に取り込む事が出来る。

 長年、我が王家を影で操ってきた男。
 あの老害を排除できるチャンスが巡って来たのだ。

 ギルバート・スタンリー。

 我が国の宰相。

 この国を影で支配する男だ。
 祖父の代から「宰相位」に就いている。
 名君と誉れ高い祖父と父だが、所詮は宰相の傀儡に過ぎない。国王は玉座に座っているだけの存在だ。宰相に与えられた書類にサインする単調な作業。

 父は宰相を信頼している。
 そういう風に育てられた。
 
『宰相に言う事に間違いはない』

 父は何時もそう言って優しく微笑む。
 覇気のない父に何度歯がゆい思いをした事か。
 父のやっている事は余計に宰相を増長させる。

 私は父のように宰相の操り人形になるのは御免だ!

 宰相にいる事を聞くのは「自分で何も考えなくなる」事と同義だと気づいたのは何時だろう。優秀な王太子と賛辞を受けながらも大人達の探る様な目に気付きながらも気付かないフリをし続けた。

 私が王太子の地位にいる間に宰相を引き摺り下ろす必要があった。即位してからでは遅い。分かっていても中々動く事が出来なかった。父同様に側近が宰相派で埋め尽くされていたせいだ。


 乳母には悪いがヴィラン・ヤルコポルには感謝しかない。
 彼がスタンリー公爵令嬢と婚約解消してくれたお陰で伯爵家は宰相の庇護から離れた。伯爵は宰相の“お気に入り”だった。次の宰相とまで目されていた人物だ。当然、宰相派の内部は知り尽くしているはず。

 私が集めた悪事の証拠とヤルコポル伯爵の証言さえあれば宰相を追い出す事が可能だ!
 欲深い宰相は罪を認めないだろう。
 大人しく隠居するなら目を瞑ってやってもいいが、そうでないならば強制的に政界から退いてもらうのみ!
 

 


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