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公爵令嬢の困惑
しおりを挟む相手有責の婚約解消。
それがこんなにも面倒なものとは知りませんでした。
「父上! 父上も言ってやってください!」
「……何を言うんだ?」
「こんなのはおかしい、と! 何故、僕がスタンリー公爵邸を追い出されないといけないんです!?」
ココは貴男の家ではありません。
私の家です。
婚約解消なんですから貴方が出て行くのは当然でしょう。
「……ヴィラン、お前は本気で言っているのか?」
「当たり前じゃないですか! こんな事のためにどうして僕が出て行かないといけないんですか!?」
「こんな事だと……? 長年の婚約者を裏切った事が……こんな事…だと?」
「何ですか! 愛人を作る事がそんなに悪い事なんですか!? 貴族の男なら愛人の一人や二人いるのは当然でしょう!」
「お前の父である私も、公爵閣下も愛人は持っていない!」
「それは父上たちが、でしょう!」
「前公爵閣下もだ!」
「だから何です! 親や祖父たちが愛人を作っていないからといって何故僕まで作ってはいけないんですか!!」
「~~~っ! ダメに決まっているだろう!」
「何故です!? 未来の公爵である僕が愛人を持つのは逆に喜ばれる事でしょう!?」
「お前は一体何を言っているんだ!?」
本当です。
何を考えているのでしょう。
「ですから、公爵になる僕の子供は多ければ多いほど良いと言っているんです! 勿論、本妻のヘスティアにも子供を産んでもらいますが、愛人にも数人産んで貰うつもりです。その中で優秀な息子を跡取りにするんですから!」
「……お前、何を言っているんだ。婿養子のお前が『公爵』になる事はないし、そもそもお前の愛人が産んだ子供が公爵になれるはずないだろう……」
「どうしてですか!」
「どうしてって……」
「僕はスタンリー公爵家に養子に入るんですよ?」
「お前……勘違いしていないか? お前は飽く迄も婿だ。爵位を受け継ぐ権利はない」
「なら、次の公爵は誰が為るっていうんです!?」
「ヘスティア嬢が産んだ子供に決まっているだろう!」
「なっ!?」
絶句するヴィランと、その父親の攻防戦は一定の終わりを見せました。どうやら婚約者のヴィランは自分が公爵家の養子に入って公爵位を継ぐと思っていた模様。有り得ない勘違いがあったものだと別の意味で感心します。スタンリー公爵家の血を一滴も引いていない伯爵家の三男坊に公爵になる権利などあるはずないでしょう。
「随分、面白い話を聞かせて貰ったよ。ヤルコポル伯爵にヴィラン君。まさか、我が公爵家の血を引かない者が公爵に為ろうと考えていたとは……いやはや、夢にも思わなかったよ。しかも、何だい? 嫡出の正当なる跡取りであるヘスティアを差し置いて愛人に子を産ませて跡取りにするとか言っていたね。これは、ヤルコポル伯爵家が我がスタンリー公爵家を乗っ取る算段だったと考えていいのかい?」
お父様の優し気な声によってお二人は無事に現実に引き戻されたのです。お顔が真っ白になってますけど大丈夫かしら?
迂闊に人様の屋敷で本音を言い合うものではありませんね。
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