偽物の侯爵子息は平民落ちのうえに国外追放を言い渡されたので自由に生きる。え?帰ってきてくれ?それは無理というもの

つくも茄子

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~第三章~

67.帰路

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 ドッと疲れた。
 本当に疲れた。

 何もしていないのに疲れた。

 帰りの馬車。

 僕の心配していた事は何一つ起こらなかった。
 本当にびっくりするくらい何もなかったよ。

 飲食におかしなものは混入されてなかったし、襲撃すらなかった。寧ろ、好待遇であっさりと帰国の途についている現状だった。

 怖いくらいに何もない。……ちょっと怖いくらい。




「それはそうでしょう。あそこで何かをしでかすほどアホではありませんよ。まぁ、アホが多いのは確かですが、ドアホがいなかった、というところですね」

 宰相の容赦ない言葉に僕は苦笑いをした。

 ブランデン王国といい、アンハルト王国といい、宰相っていうのはどうして毒舌家が多いんだろうか?と僕は遠い目になったのだった。
 王太子の側近だったから全く知らないわけじゃない。ただ、あまり接点もなかったアンハルト王国の宰相。

 アンハルト王国滞在期間、彼は極秘に謝罪に訪れた。
 謝罪の内容は、まぁ色々だ。王太子から始まり、王家の暴走、神殿側の件、他の文官達の所業、その他……など。本当に謝罪のバーゲンセールみたいになってしまった。彼は悪くないし、僕も特に恨みつらみもないため適当に流しておいた。だってね、彼に謝られても仕方ないし、そもそも王太子達に仕事をさせるより僕一人でやった方が早いし効率が良かったのも本当だ。二度手間になる事を考えると自分で全部やってしまった方が早い。だからアンハルト王国の宰相にその事を伝えたのだけど、なんだか微妙な顔をしていたから、きっとお疲れだったんだろう。
 自国の王女のホラーさながらの結婚式の後だ。
 後処理係として奔走していた事だろう。

 彼の部下らしき人に「宰相を労ってあげてください。何かと大変でしょうから」と伝えておいた。何故かその人からも微妙な顔をされた。何か変な事を言ったかな?それともアレかな、他国人になった僕からの伝言なんて余計なお世話だったのかも。色んな意味で厄介な立場になってるからね。

 僕は、遠くから応援しておく。
 最後に「他人に任せるより自分がやってしまった方が早くて楽です」と伝えておくことも忘れなかった。うちの国の陛下から「嫌味か?」と聞かれたけど、これの何処が嫌味なのか僕には分らなかった。「親切で言っただけですよ」と言うと微妙な顔をされたのはどうしてなんだろうか?本当によく分からなかったんだけど、とにかく無事に帰国したのだった。


 そして、アンハルト王国の件が一段落(?)できたのなら後は心配ないと判断された。


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