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~第三章~

50.家族関係2

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「きな臭い事この上ないからな。侯爵の判断は正しい」

 パッツィーニ侯爵家が目的なのか、それともアンハルト王国が目的なのか。または別の目的があるのか。それがハッキリしないうちは国に戻っても安全は保障できない。それなら、いっそこの国に居た方が良いという判断に至ったようだ。

 父からの手紙には兄が留学した理由についても書かれていた。
 どうも、兄上の婚約者の父親が神殿関係者らしく、兄に近付いて何か探りを入れているようなのだ。兄は全く気付いていない様子だが突如現れた弟に嫌悪感が抑えられなくなっていたらしい。そういった事情もあり、今回の留学となった。

「長男を避難させたのは英断だな」

「そうだね」

 まぁ、そういう事だ。
 国内が危険だと判断した父上は兄だけは逃がす事にしたんだろう。
 嫡男さえ無事なら何とかなると思っての事だろう。例え、何とかならない状況に陥ったとしてもパッツィーニ侯爵家の血筋は残せる。
 確かに。良い判断だ。


「中々良い父親だ。兄の方もちゃんと違和感に気付いていたようだしな。家族仲は良かったのか?」

 え?
 家族仲?
 どうだろう?

 今まで考えた事のない言葉だったので即答できなかった。

 それでも、僕が『魔力無し』と判明した時も家族は蔑んだりしなかった。
 僕の安全を確保するために養子に出そうとしてくれたぐらいだ。命を守ろうしたって事は親子としての情はあった。
 兄は両親の意図に気付かずに反対していたけどね。
 それも考えようによっては兄弟の愛情があったからだろう。

 両親にしたって、互いを尊重していたようだし……。

 他の貴族のように愛人を持って家庭内別居になっている訳でもなかった。
 バリバリの政略結婚だけど、両親は上手くいっていたケースかも?

 異母兄弟も異父兄弟もいない。知人は庶子の兄弟が多くて大変そうだった。
 複雑な家族構成でもない。寧ろシンプルな方だ。
 愛憎渦巻くドロドロの家族関係とは程遠かった。愛人に刺されたりする事もない。

 ……あれ?もしかして貴族社会でこれは異端では?

 当たり前と思っていた家族の在り方。
 全部がそうという訳じゃない。
 だけど、高位貴族では珍しい部類だと今気が付いた。

 それでいうなら『仲の良い家族』だったのかも。
 貴族としては、という枕詞は付くけどね。





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