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~第三章~
48.争奪戦
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「え?アンハルト王国が?」
僕は宰相に呼び出された。
嘗ての祖国から極秘交渉をしたいという手紙が届いた。
「あちらの要望としては、サビオ殿との面会を希望しています」
「僕とですか?」
「えぇ。非公式な会談と言っていますが、恐らく帰国要請が目的でしょうね」
「……断っても良いですか?」
「可能ですが、相手は粘ると思いますよ」
宰相が言うには、アンハルト王国は僕を追い出した後、それはそれは大変な目に遭ったそうだ。
まず最初に僕が王太子の代わりにしていた外交交渉が全て白紙になった。
つまり、他国との交渉は全て一からやり直しだ。
国内も大変だ。
外交失敗のせいで経済が破綻寸前にまで追い詰められた。
国庫も空っぽに近い状態だとか。
国民生活も苦しく、国のトップである王侯貴族も苦しい状況だ。
そんな中で、国王陛下は必死になって僕を探していたそうだ。
「僕一人が国に戻ったところで何になるんですかね……」
もしかして、僕が戻れば経済が復活するとでも思っているのかな?
そんな訳がない。
「まぁ、向こうの要求を突っぱねる事は出来ますよ」
「お願いします」
「ですが、そうなると今度は別の問題が発生するかもしれませんね」
「別の問題……ですか?」
「はい。向こうの国王陛下がサビオ殿に対してどのような行動を取るかです」
「どういう事でしょうか?」
「一番有力なのは誘拐ですね。そして、無理矢理連れ帰ろうとするでしょう」
「嫌だな~」
それは絶対に避けたい。
誘拐された挙句に軟禁とかされたくない。
「ですから、断ると言うのならば護衛を付けさせていただきますよ」
「そうしていただけますか?」
「勿論。それともう一つ、サビオ殿は冒険者ギルドに登録していましたね」
「はい。身分証代わりに登録しました」
「でしたら、ギルドを通じてアンハルト王国に警告しておきましょう」
「良いんですか?」
「構いません。そもそも、アンハルト王国がサビオ殿を不当に貶めたのです。これくらいの報復は許されるはずですよ」
宰相の話によると、今現在、僕の身柄を巡って戦争が起きかねないらしい。
それほどまでに、僕の力を恐れているようだ。研究をしていただけなんだけれど……。
「それじゃあ、お言葉に甘えて」
「では、そのように手配いたしますね」
こうして、嘗ての祖国に対する牽制を込めて宰相は動いてくれた。
数日後、宰相経由で返事が届いたのだが、予想通り断られた事が書いてあったそうだ。
宰相曰く、「これで諦めてくれるといいのだけれども……まぁ、無理だろう」と言っていた。
それから数日が経過し、僕は相変わらず自宅の研究室で過ごしていた。
そんなある日の事だった。
王宮から連絡があった。
僕は宰相に呼び出された。
嘗ての祖国から極秘交渉をしたいという手紙が届いた。
「あちらの要望としては、サビオ殿との面会を希望しています」
「僕とですか?」
「えぇ。非公式な会談と言っていますが、恐らく帰国要請が目的でしょうね」
「……断っても良いですか?」
「可能ですが、相手は粘ると思いますよ」
宰相が言うには、アンハルト王国は僕を追い出した後、それはそれは大変な目に遭ったそうだ。
まず最初に僕が王太子の代わりにしていた外交交渉が全て白紙になった。
つまり、他国との交渉は全て一からやり直しだ。
国内も大変だ。
外交失敗のせいで経済が破綻寸前にまで追い詰められた。
国庫も空っぽに近い状態だとか。
国民生活も苦しく、国のトップである王侯貴族も苦しい状況だ。
そんな中で、国王陛下は必死になって僕を探していたそうだ。
「僕一人が国に戻ったところで何になるんですかね……」
もしかして、僕が戻れば経済が復活するとでも思っているのかな?
そんな訳がない。
「まぁ、向こうの要求を突っぱねる事は出来ますよ」
「お願いします」
「ですが、そうなると今度は別の問題が発生するかもしれませんね」
「別の問題……ですか?」
「はい。向こうの国王陛下がサビオ殿に対してどのような行動を取るかです」
「どういう事でしょうか?」
「一番有力なのは誘拐ですね。そして、無理矢理連れ帰ろうとするでしょう」
「嫌だな~」
それは絶対に避けたい。
誘拐された挙句に軟禁とかされたくない。
「ですから、断ると言うのならば護衛を付けさせていただきますよ」
「そうしていただけますか?」
「勿論。それともう一つ、サビオ殿は冒険者ギルドに登録していましたね」
「はい。身分証代わりに登録しました」
「でしたら、ギルドを通じてアンハルト王国に警告しておきましょう」
「良いんですか?」
「構いません。そもそも、アンハルト王国がサビオ殿を不当に貶めたのです。これくらいの報復は許されるはずですよ」
宰相の話によると、今現在、僕の身柄を巡って戦争が起きかねないらしい。
それほどまでに、僕の力を恐れているようだ。研究をしていただけなんだけれど……。
「それじゃあ、お言葉に甘えて」
「では、そのように手配いたしますね」
こうして、嘗ての祖国に対する牽制を込めて宰相は動いてくれた。
数日後、宰相経由で返事が届いたのだが、予想通り断られた事が書いてあったそうだ。
宰相曰く、「これで諦めてくれるといいのだけれども……まぁ、無理だろう」と言っていた。
それから数日が経過し、僕は相変わらず自宅の研究室で過ごしていた。
そんなある日の事だった。
王宮から連絡があった。
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