上 下
38 / 94
~第二章~

37.誘拐計画3

しおりを挟む
 年老いてから生まれた一人息子を村長は溺愛しているらしく、ドラ息子の言葉を鵜呑みにしてた。そこは疑問を持てよ!どう考えても道理に反しているし、言っている事はメチャクチャだ。

「孫の顔を見られるなら」との思いで、ドラ息子とその仲間達が結託して美女を誘拐する事に全面的に協力している。

 一言、言わせて貰って良いかな?
 ばぁぁぁぁかじゃないの!!?

 アホなの?
 馬鹿なの??
 死にたいの???

 どう考えても、その美女は貴族の出だ!
 貴族じゃなくても、相当な資産家だ!
 そんな相手が、行方をくらましたら大捜査されるに決まっている。首謀者全員縛り首の案件だ!
 
 ばぁぁぁぁぁぁぁかっ!!!

 勝手に惚れた挙句にストーカー行為の数々。
 相手にされないから誘拐する?
 力づくでモノにすれば女は言う事をきく?
 どこの蛮族だよ!?
 ドラ息子は一度死ねばいい!

 


 
 犯罪計画を聴いていたら、いつのまにかデザートを食べ終えていた。
 デザートの味を覚えてない。嫌な会話を聞いたからだ。まったく!
 
 空になった皿を一度見てから、店主に声を掛ける。

「おじさん。僕、この村で行われる祭りを見に来たんだけど、参加費用とかいるの?」
 
「……祭りに参加するのか?」
 
「え? 男は参加していいんだよね?村の住人でなくても参加できるって町で聞いたんだけど?」
 
「あ、ああ。それは問題ないが……」

 店主のおじさんは酷く驚いたのか、暫く僕をジロジロ見てた。それと同時に店内がざわついたけど。気にしない。

「……余所者でも参加可能だ。祭りは明日の夕方から森の広場で開催される」

「開催場所は神殿だと聞いたけど?」

「開会式は広場でする事になっている」

「そうなんだ」

「あぁ……まぁ、遅れずにこいよ」

「ありがとう。じゃあ、宿泊代金も全額先に払っておくよ」

 即金で支払った。多少色を付けて。すると店主の顔が綻んだ。

 どうやらコレは正解だ。

 食事中、ずっと僕を見る店主は目つきがドンドン鋭くなっていた。
 多分、この店主はドラ息子達とグルになっているんだろう。それはココにいる村人も同様だ。グルだと言うと聞こえは悪いけど、恐らく村長から何かしら言い含められている可能性はある。

 店内の雰囲気が、どんどん悪くなっていくのを肌で感じていたしね。

 僕が誘拐計画を聞いていると察したんだろう。
 勿論、根拠はない。
 ただ余所者と同じ空気を吸いたくない、ってだけの話かもしれない。
 それでも警戒していた事は確かだ。

 村の住人じゃないという事は、それだけ自由に行動できる。
 余所者が役人に告げ口に行くのでは?と考えても不思議じゃない。だってどう考えても事件だ。まだ事件は起きてないから未遂(?)だけど。
 もし僕がこのまま村を出て行く素振りを少しでも見せてたら何らかのアクションはあった筈だ。口封じ……は言い過ぎかな?でもあながち間違ってない。小柄な子供一人、しかも旅人ときてる。始末したところで誰も騒がない。

 予想に反して僕が『美女』を助けようと行動しなかった。寧ろ、関心を示さなかった。その上で、多少大目にチップを渡しておいたから一応は警戒を解いたってとこかな。

 つまり誘拐計画は村ぐるみという訳か。

 ゲスの集まりだ。

 誘拐はそのまま決行する予定だろう。話し合ってた男達以外の客も目配せしあっていたし。

 クズ同士とっっっても仲がよろしいことで!!
 
 僕はそんな村人達クズの様子に気付いてないフリをして二階の部屋に向かった。




しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】不協和音を奏で続ける二人の関係

つくも茄子
ファンタジー
留学から戻られた王太子からの突然の婚約破棄宣言をされた公爵令嬢。王太子は婚約者の悪事を告発する始末。賄賂?不正?一体何のことなのか周囲も理解できずに途方にくれる。冤罪だと静かに諭す公爵令嬢と激昂する王太子。相反する二人の仲は実は出会った当初からのものだった。王弟を父に帝国皇女を母に持つ血統書付きの公爵令嬢と成り上がりの側妃を母に持つ王太子。貴族然とした計算高く浪費家の婚約者と嫌悪する王太子は公爵令嬢の価値を理解できなかった。それは八年前も今も同じ。二人は互いに理解できない。何故そうなってしまったのか。婚約が白紙となった時、どのような結末がまっているのかは誰にも分からない。

家族と婚約者に冷遇された令嬢は……でした

桜月雪兎
ファンタジー
アバント伯爵家の次女エリアンティーヌは伯爵の亡き第一夫人マリリンの一人娘。 彼女は第二夫人や義姉から嫌われており、父親からも疎まれており、実母についていた侍女や従者に義弟のフォルクス以外には冷たくされ、冷遇されている。 そんな中で婚約者である第一王子のバラモースに婚約破棄をされ、後釜に義姉が入ることになり、冤罪をかけられそうになる。 そこでエリアンティーヌの素性や両国の盟約の事が表に出たがエリアンティーヌは自身を蔑ろにしてきたフォルクス以外のアバント伯爵家に何の感情もなく、実母の実家に向かうことを決意する。 すると、予想外な事態に発展していった。 *作者都合のご都合主義な所がありますが、暖かく見ていただければと思います。

【完結】結婚前から愛人を囲う男の種などいりません!

つくも茄子
ファンタジー
伯爵令嬢のフアナは、結婚式の一ヶ月前に婚約者の恋人から「私達愛し合っているから婚約を破棄しろ」と怒鳴り込まれた。この赤毛の女性は誰?え?婚約者のジョアンの恋人?初耳です。ジョアンとは従兄妹同士の幼馴染。ジョアンの父親である侯爵はフアナの伯父でもあった。怒り心頭の伯父。されどフアナは夫に愛人がいても一向に構わない。というよりも、結婚一ヶ月前に破棄など常識に考えて無理である。無事に結婚は済ませたものの、夫は新妻を蔑ろにする。何か勘違いしているようですが、伯爵家の世継ぎは私から生まれた子供がなるんですよ?父親?別に書類上の夫である必要はありません。そんな、フアナに最高の「種」がやってきた。 他サイトにも公開中。

悪役令嬢になるのも面倒なので、冒険にでかけます

綾月百花   
ファンタジー
リリーには幼い頃に決められた王子の婚約者がいたが、その婚約者の誕生日パーティーで婚約者はミーネと入場し挨拶して歩きファーストダンスまで踊る始末。国王と王妃に謝られ、贈り物も準備されていると宥められるが、その贈り物のドレスまでミーネが着ていた。リリーは怒ってワインボトルを持ち、美しいドレスをワイン色に染め上げるが、ミーネもリリーのドレスの裾を踏みつけ、ワインボトルからボトボトと頭から濡らされた。相手は子爵令嬢、リリーは伯爵令嬢、位の違いに国王も黙ってはいられない。婚約者はそれでも、リリーの肩を持たず、リリーは国王に婚約破棄をして欲しいと直訴する。それ受け入れられ、リリーは清々した。婚約破棄が完全に決まった後、リリーは深夜に家を飛び出し笛を吹く。会いたかったビエントに会えた。過ごすうちもっと好きになる。必死で練習した飛行魔法とささやかな攻撃魔法を身につけ、リリーは今度は自分からビエントに会いに行こうと家出をして旅を始めた。旅の途中の魔物の森で魔物に襲われ、リリーは自分の未熟さに気付き、国営の騎士団に入り、魔物狩りを始めた。最終目的はダンジョンの攻略。悪役令嬢と魔物退治、ダンジョン攻略等を混ぜてみました。メインはリリーが王妃になるまでのシンデレラストーリーです。

空間魔法って実は凄いんです

真理亜
ファンタジー
伯爵令嬢のカリナは10歳の誕生日に実の父親から勘当される。後継者には浮気相手の継母の娘ダリヤが指名された。そして家に置いて欲しければ使用人として働けと言われ、屋根裏部屋に押し込まれた。普通のご令嬢ならここで絶望に打ちひしがれるところだが、カリナは違った。「その言葉を待ってました!」実の母マリナから託された伯爵家の財産。その金庫の鍵はカリナの身に不幸が訪れた時。まさに今がその瞬間。虐待される前にスタコラサッサと逃げ出します。あとは野となれ山となれ。空間魔法を駆使して冒険者として生きていくので何も問題ありません。婚約者のイアンのことだけが気掛かりだけど、私の事は死んだ者と思って忘れて下さい。しばらくは恋愛してる暇なんかないと思ってたら、成り行きで隣国の王子様を助けちゃったら、なぜか懐かれました。しかも元婚約者のイアンがまだ私の事を探してるって? いやこれどーなっちゃうの!?

妹だけを可愛がるなら私はいらないでしょう。だから消えます……。何でもねだる妹と溺愛する両親に私は見切りをつける。

しげむろ ゆうき
ファンタジー
誕生日に買ってもらったドレスを欲しがる妹 そんな妹を溺愛する両親は、笑顔であげなさいと言ってくる もう限界がきた私はあることを決心するのだった

《勘違い》で婚約破棄された令嬢は失意のうちに自殺しました。

友坂 悠
ファンタジー
「婚約を考え直そう」 貴族院の卒業パーティーの会場で、婚約者フリードよりそう告げられたエルザ。 「それは、婚約を破棄されるとそういうことなのでしょうか?」 耳を疑いそう聞き返すも、 「君も、その方が良いのだろう?」 苦虫を噛み潰すように、そう吐き出すフリードに。 全てに絶望し、失意のうちに自死を選ぶエルザ。 絶景と評判の観光地でありながら、自殺の名所としても知られる断崖絶壁から飛び降りた彼女。 だったのですが。

冤罪を掛けられて大切な家族から見捨てられた

ああああ
恋愛
優は大切にしていた妹の友達に冤罪を掛けられてしまう。 そして冤罪が判明して戻ってきたが

処理中です...