偽物の侯爵子息は平民落ちのうえに国外追放を言い渡されたので自由に生きる。え?帰ってきてくれ?それは無理というもの

つくも茄子

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~第二章~

31.聖者の噂

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【奇跡の回復薬!】

【突如現れる旅人は聖者の生まれ変わりか!?】

【北の大国に降臨した救世主!!】

【新薬の発明者の行方を追え!】

 etc……。

 はぁ、どうしてこんな大騒ぎになっているんだか。
 僕は溜息を吐きながら朝刊のトップニュースを読んでいく。

「これは暫く薬の提供はお預けだな」

 まさかここまで騒ぎになるとは思わなかった。
 発信源は北の王様だろう。

【北の国王は友である聖者の帰還を心待ちにしている】という見出し。

 デカデカと顔写真付きで一面に載っている。
 
 ………………本当にあの人は。

 結構、フレンドリーな人だからな。きっと「何かあれば自分の名前を出せ」くらいに思って新聞記事に載せた気がする。
 まあ何にせよ、僕のギルド名は伏せてあるからね。薬さえ渡さなければバレる心配はない。元々、知名度を上げる気はなかったし。ここら辺が潮時かな。新聞を片付けて身支度をする。


 ――今日も賑やかな一日になりそうだ。

 僕はそんな予感と共に宿の部屋を出た。





 


「おい、聞いたか?」

「なんだよ」

「この聖者の話だ」

「新聞のトップになってんだ。勿論、知ってるぜ」

「なら話は早い。此処だけの話、この噂の聖者が今この国に来てるって情報だ」

「え?本当か?」

「ああ、政治が聖者を見つけ出した者には多額の報奨金を与えると発表したからな」

「でもよぉ。聖者は男だって話しか分からないじゃねぇか。特徴とか分かるのか?」

「それがサッパリだ。旅行者ってだけは分かってるんだが……」

「そんな不確かな情報で探せってか?冗談じゃねぇぜ!」

「俺も最初はそう思うけどよ、報奨金が魅力的過ぎてさぁ」

「やれやれ。それじゃあ、やみくもに探すよりかは国境付近の町で聞き込みをした方がいいんじゃねえか?」

「確かにな。そうするか」

「おう、頑張ってくれよ」

 
 ――なんて会話をしながら僕を探している冒険者達の横を通り過ぎる。

 僕を探す事を止めてくれないの?
 この国の人達も何考えてんだか……まったく。
 呆れるように溜息を漏らして、足早に歩く。

 この分じゃあ、国境付近は抑えられていると考えた方が良い。
 正規の手段だと見つかる可能性が高いからね。少し面倒だけど裏道を通って別の国へ行くとするか。

 僕は人目につかない場所を選びながら移動する事に決めた。



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